表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/82

78.誇れる自分であるために

 



 まさか目の前の占い師が生徒会長だとはつゆ知らず、ただ困らせて帰った迷惑客の2人。


 その片方が自分の知り合い———()()()()だと、京香は気づいていた。




「そろそろ交代の時間ですね。後はよろしくお願いします」


「はい、会長も楽しんで」



 私のシフトはこれで終わり。………ユウめ、幸せそうな顔しやがって。彼女が出来たのは知ってたが、普通あんな自然にイチャつけるもんかぁ?

 昔とあんま変わんねえけど、そういうとこだけ成長してんのはなんかムカつくな。







 皆の前では品行方正な生徒会長を装っているが、その性根は不良そのもの。実際に不良というわけでは無いが、過去は所謂ガキ大将と呼ばれるような存在であった。




 京香と優心の出会いは交通事故よりも前に遡る。


 元々近所に住んでいた2人は、すれ違えば家族同士で挨拶するほどには顔見知りであった。

 その頃は互いの名前も知らなかったが、ある日、公園で虐められていた優心を見かけた京香が、虐めていた子どもたちを撃退したことで距離が縮まった。


 それ以来よく遊ぶようになり、優心も1つ年上の京香によく懐いていたのだが、やがて京香が中学生に進級すると顔を合わせる頻度は自然と減っていった。


 その折に戸張一家の事故が起き、優心は祖父母に引き取られて別れの挨拶を言う暇も無かった。


 京香は荒れた。ガキ大将を超えて、女番長と呼ばれるほどには。







(でも私——アタシは猫を被った。ユウにその事を知られたら、アタシはたぶん立ち直れないから)




 ユウは昔から優しかった。アタシがいじめっ子たちを追い返すのに暴力を振るうことも止めるくらい。

 今のアタシを見たら、ユウはなんて思うんだろう。きっと笑って許すんだろうな。


 でも、アタシはそれを許さない。暴力は解決手段にはならない、新たな禍根を生み出すだけだって分かったから。


 だから生徒会長なんて面倒な役回りにも立候補した。少しでもユウに誇れる自分でいたかった。




 そう、生徒会長にならなかったら、ユウがこの学校にいることを知らないままだった。




(また昔みたいに仲の良い幼馴染みに戻れるって期待している自分がいる)




 合わせる顔なんて、ありはしないのに。











 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










 占いの館を後にした2人。なんだか申し訳ない事をしたと思いつつも、2人きりの時間はしっかり満喫していた。


 1時間ほど文化祭を巡ってグラウンドへ戻ると、何やらトラブルが発生しているようだった。




「おい、いつになったら買えるんだ!!」


「申し訳ありません。皆様並んでいただいてるので………」


「どれだけ待ったと思ってるんだ!大人を馬鹿にするのもいい加減にしろよ!!!」




 典型的なクレーマーだな。最初からこれだけ並んでたんだから自業自得だと思うけど。こっちも想定外の事態で対応しきれてないのは事実だけど、何というか、大人げないと思う。


 だが俺はクレーマーの本質を理解していなかった。何の利益にもならない行動を起こすはずがなかったんだ。




「普段から行事やら何やらの度に近所迷惑だと思ってたが、もう限界だ!この事は教育委員会にも報告させてもらう!」




 そうか、それが目的か。要は高校生が目障りだと、そう言いたい訳だな。逆恨みもいいところだし、近所に住んでるならそれも納得してほしいものだけど。


 大きな声で話しているので、クラスメイトやお客さんも怯えてしまっている。止めるのは難しいことじゃない、と思う。


 こういう手合いが理屈で動いてることなんてありえないんだ。




「お客様、少々話が飛躍しすぎではありませんか?」


「あぁ?なんだお前は」


「プライベートなお話になるかもしれませんが、この辺りに引っ越されたのはいつ頃のことですか?」


「2年前だが。それがどうかしたか?」




 だから、ほんの少しだけ揺さぶってやれば。




「それなら近所に学校があると説明を受けているはずですよね?それを承知で引っ越されたのではないのですか?もしそうでないのなら………もっと大事になるかもしれませんね」


「うっ………ク、クソッッ!!」




 とまあ、こんな感じだ。偶然大和さんに聞いたことがあっただけなんだけど。




「兄ちゃん、カッコよかったぞー!」

「スッキリしたわ、ありがとう!」

「ありがとう戸張くん!」



 お客さんやクラスメイトからは口々に賞賛の声が上がるが、うちの女王様はお怒りのようだ。

 不機嫌を隠そうともせずに俺の腕を掴み、休憩スペースへと引きずっていく。俺に抵抗する手段はなかった。




「私、散々言ったわよね。危ないことはしないでって」


「いやあれはみんなを助けようと…」


「先生を、待てば、良かったはずだけど?貴方がその事に気づいていないなんて言わせないわよ」



 正直言って、真っ先に思いついたのがそれだった。一番安全で確実な方法だから。

 相手が危険物を持ってないとも限らなかったし、確かに危険だったかもしれない。


 でも俺は。




「ごめん。みんなが怖がってるのを見過ごせなかったんだ。昔、俺を助けてくれた人がいたんだけど、lその人に誇れる自分でいたいんだ」


「そんなところでしょうね。つくづくお人好しだけど、それも全部優心だから。貴方を好きになった私の負けよ」




 綾乃には心配かけたくないけど、やっぱり身体が動いちゃうんだよ。そう思いつつも綾乃を不安にさせてしまったので、しばらくの間謝り続けた。


 そういえば京香姉ちゃん、どこにいるんだろう………。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ