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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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76.開幕

 



 結果から言えば、早めに仕入れ先を見つけることができたので、大事にはならずに済んだ。

 とはいえ問題は山積み。実際にやってみないと分からないことも多い。


 その一つが味見、というか毒味だ。会社の方からマニュアルは貰っているが、食べてみない限りはマニュアル通りにやっても不安は拭えない。




「これ、味見とか誰がやんの?」


「春馬ー、やるー?」


「おー、優心も来いよー。お前暇だろ?」


「暇じゃねえわ。レイアウトとか色々考えてるわ。…でも綾乃が焼いたやつなら食べる」


「「「チッッッッ!!!」」」



 見事に息の合った舌打ち。だって綾乃が調理したのなら安心だし、綾乃の一番は誰にも譲る気は無い。それがどんなにちっぽけなものでも。


 綾乃から串を受け取って、いただきます、と一口。


 ………うん、美味い!俺が頂いたのはモモ串。中からジュワっと肉汁が溢れて、噛む度に旨味が染み渡る。正直、冷凍でここまでのクオリティが出るとは思ってもみなかった。技術の進歩に感謝だな。



「うめえ!うめえよ氷川さん!」


「ふふ、ありがとう志田くん。あんまり急いで食べると、喉に詰まらせるわよ?」


「仕方ないだろ、美味しいからな。いやー、優心は毎日氷川さんの手料理を食べてるんだろ?羨ましいねぇ」


「余計なことは言わんでよろしい。ほら、嫉妬の目が痛いんだよ」




 今さら気にすることでもないけどな。もう慣れたもんだし、綾乃が味方でいてくれるならどうでもいいことだ。

 ただ、面倒くさいとは思う。ジロジロ見られるのは好きじゃないし、それが悪意や敵意を含んだものなら尚のこと。


 まあ、春馬は絶対わざとやってるけどな。






 俺たちが問題ないと判断してから、他のクラスメイトも続々と味見に来る。練習するにしても余らせるのは良くないし、だったら食べてしまった方が食材を無駄にせずに済むからな。


 明日からは先生たちも呼んでみようか。匂いに釣られてやってきた日野先生以外は。




「美味しい!これ絶対優勝できるよ!」


「それはどうだろうなぁ。ウチは純粋に味だけの勝負だし、他のクラスに比べたらサービス面でどうしても劣るからな。接客とかもしっかりやらないと」


「ほえー。ハルっち、意外としっかりしてんねぇ〜。見直したわ〜」


「意外とはなんだ意外とは。紳士たるもの、気配りも出来てこそだからな。彼女に好き好き言ってるだけじゃあ愛想尽かされちまうよ」


「もう、ハルってばぁ………………」




(なんだこの空気………)




 甘すぎて吐きそう。グラウンドのど真ん中で何してくれちゃってるのかね。こら綾乃、「私たちもやる?」みたいな顔するんじゃありません。やりませんよ。




「何よあれ、羨ましいじゃない」


「ああ、本当に………………………今なんて?」




 冗談よ、と。綾乃は妖艶に笑って、自らの作業に戻る。本当、心臓に悪いよ………。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———












 序盤の準備は順調に進み、ある程度形が決まってきた。先生たちからも好評価をもらったし、その後も細かいところはつまづきながらも、大きなアクシデントなく本番前日までやってきた。


 その日の夕食、綾乃から嬉しいお誘いを受けた。




「明日はいよいよ本番ね。せっかくシフト合わせてもらったんだし、一緒に色々回りましょう?」


「もちろん。でも、何も起きないといいんだけどな。どうにも嫌な予感が………」


「考え過ぎよ。始まる前からそんなネガティブでいても仕方ないじゃない。ほら、パンフレットも貰ったんだし、他のクラスの出し物を見るのも面白いわよ」



 他のクラスは喫茶店やカジノといったものが多く、俺たちのクラスでも挙がっていた通り、やはりかなりの人気があったようだ。

 その他で目に留まったものだと、手芸やコスプレなどの体験系や、プチ縁日のような出し物もあった。縁日なんかは老若男女誰でも楽しめそうで、人気がありそうだな。



「こことかどう?手作りアクセサリーショップだって」


「なになに…『完成品を買うもよし、自分で作ってもよし、唯一無二のアクセサリーを提供しています』…なるほど、自分で作るっていうのは良い思い出になりそうだな」


「でしょう?それに、その……お揃いのアクセサリーとか欲しいなって…」



 俺の彼女可愛すぎか?いや可愛いんだけどさ。


 少し上目遣いになってそんなこと言われたら、彼氏として断れるわけない。お揃いの物といえば、旅行の時に一緒に作ったこけしぐらいだしな。身に付けられる物はあったらいいな、とは考えていた。



「いいよ。明日、行ってみようか」


「ありがと。………何よその顔。そんな優しい目で見ないで頂戴、恥ずかしくなってくるでしょう………………」


「ごめんごめん。綾乃が可愛いくてつい」


「もう誤魔化されてあげないからね」




 二人で談笑していれば、いつの間にか嫌な予感は消え去っていた。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










「おっはよー!文化祭本番、気合い入れていくぞー!」


「テンション高いわね、彼女」


「そりゃあ実行委員として頑張ってたからなぁ。裏で色々苦労してたみたいだし、気持ちは分かるよ」




 この文化祭を1番楽しみにしていたのはおそらく真田さんだろう。実行委員としてクラスのため、文化祭の成功のために奔走し、それを嫌な顔ひとつせず楽しそうにやるもんだから。

 皆のやる気もどんどん高まっていったんだよな。


 見た目こそギャルだが、やはり真田さんの根はしっかりしているんだろうな。気づけばクラスメイト全員が頼りにしていた。かくいう俺も色々助けられた。


 そしてその真田さんから開始前に最後の一言。




「それじゃあみんな、帰るまでが文化祭だからねっ!でも、成功させなきゃ帰らせてあげないから。絶対優勝するぞーーー!!!」


「「「オォーーーーーー!!!」」」




 大変だけども楽しい、文化祭の幕開けだ。




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