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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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75.家族水入らず

 



 授業参観の日の夜。優心はしばらく振りに1人の食卓を過ごしていた。

 なぜ綾乃がいないのかというと、実家に帰って食事をするためである。発案者は綾乃で、この話を聞いて一番喜んでいたのは妹の琴乃だったとか。


 そんな訳で優心は寂しさを覚えて………はいなかった。




「お兄ちゃん…一人暮らししてるなら簡単な料理くらい覚えなよ………」


「余計なお世話だ。というか綾乃から、危険だからって止められてるんだよ」


「うわぁ……何しでかしたのお兄ちゃん。お姉様がそう言うってよっぽどだよ………」




 こちらも妹との食事を楽しんでいた。というのも優心が、1人での食事は味がしないと言っていたのを覚えていた綾乃が、偶には良いだろうと優奈に連絡を入れたのだ。

 綾乃を慕っている優奈はもちろん断るはずも無かった。それ以上に優奈も割とブラコンの部類ではあるのだが。


 綾乃から冷蔵庫の食材は自由に使っていいと聞いていたので、優奈は慣れた手つきで作業を始め、すぐに料理を作り上げた。



「しかし優奈が料理、しかもオムライスなんて作れるようになってるとは。お兄ちゃんは誇らしいよ」


「何それヤメテキモい。お兄ちゃんそういうキャラじゃないでしょ」


「ちょっと言い過ぎじゃない?俺、優奈になんかした?」


「お姉様がこの場にいない」


「だから呼ばれたんじゃないのかな?」



 理不尽だと分かっていながらも、優奈には綾乃の頼みを断る選択肢は無いので、怒りの矛先は自然と優心へ向く。

 優心も理不尽だと思いながら、優奈の気持ちは分かる上に夕飯まで作ってもらった手前、それを受け入れる以外に選択肢はないのだ。


 やはり兄妹、似た者同士である。話題はお互いの好きなものについて話す、というものなのだが、この2人の好きなものが共に綾乃であるのは察するところ。

 気づけば、ただただ綾乃の良いところを語り合うだけの空間が形成されていた。




 当の綾乃は、食事中にも関わらずくしゃみが止まらなかったとか。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










 さて、今日は10月22日。秋も深くなってきたが、まだまだ厳しい残暑が続くこの日。

 以前話した事を覚えているだろうか。修学旅行から文化祭まで、あまり時間がないという事を。既に文化祭本番まで、残り2週間を切っている。




「よーし、今日から文化祭の準備始めるよー!本番直前までは放課後とHRの時間しか使えないから、結構急がないとまずいかもね。でも火を扱うから、焦って火事とかにならないように!」




 そこから急ピッチの作業が始まった。焼くために必要な焼き器は学校側で用意してくれるそうなので、自分たちで用意するのは食材と、食事スペースを作るための椅子や机くらいだ。


 その食材の調達が問題なのだ。当日に使う分に加えて、試作に使うだけでも相当量が必要になる。それに学生に卸してくれる業者なんかいるのか?

 俺だけでなく、何人ものクラスメイトがそう考えていた。


 時間も無いので早めに決めたいところだが、中々良い案は出なかった。するとここまで沈黙を貫いていた先生が口を開く。




「うーん、そもそも1から作る事にこだわりすぎじゃないか?これは私個人の意見だが、最初から串に刺さった既製品を、味付けして焼くだけでも美味しくなると思うが」


「なるほど…その発想は無かった………それなら冷凍の既製品を使えば保存の問題も解決する………先生、天才ですか?」


「いや、酒のアテを探している時に偶然知っただけだよ。………なんか自分で言ってて悲しくなってきたな。まあ、後はお前たちで考えてみろ」


「はい、ありがとうございます!方向性に異論が無いなら、このまま進めちゃうけど大丈夫?」



 反対意見は無く、これで一歩前進といったところ。先生も時間が無いことを理解しているから、余計な事で足踏みするのは避けたかったのだろう。


 そしてもう一つ決めなければならないのが、文化祭当日や準備期間の役割分担。屋台で焼く人には責任もあるし、冷凍だろうが生物(なまもの)なので適当には決められない。当然、俺は論外。学校が焼け野原になりそうだ。







 少しして、当日の役割が決まった。


 まず今回の出し物の前提として、“人気投票で一位を獲る”ということが一貫している。一般の人も参加するので、どうやったらお客さんに満足してもらえるかを考えなければならない。


 例えば、食事スペースは不特定多数の人が利用する。かなり広く設営する予定なので、利用後の片付けだけでも手が掛かる。

 食材の管理なども必要になる。外に冷凍庫を置けそうな場所は無い——そもそも冷凍庫を置くためのコンセントが足りない——ので、調理室の冷凍庫を借りることになっている。常温放置など以ての外なので、取ってくる人も必要だ。


 そう考えると、当日は人手が足りなくなるかもしれない。高い目標を設定した以上、手を抜くことは許されないのだ。それは、クラス全員がちゃんと理解していた。




 という訳で俺の役割は食材調達、並びに金銭管理に決定した。要するに仕入れとレジスタッフだ。

 なんでこんな重要な役割になったかというと、春馬の推薦によるところが大きい。


『優心ならしっかりしてるから適任だと思うぞ。あ、火には近づけるなよ』


 余計なことは言わなくてよろしい。



 そして春馬も同じくレジスタッフに決まった。女子からは客寄せをやって欲しい、と頼まれていたが、彼女持ちという理由で一蹴していた。

 他には、綾乃は調理、雛は看板などの小道具やメニューの製作。ジョージは雑用、孝太は意外にも調理担当になった。実は料理好きらしい。




「じゃ、それぞれ別れて作業開始!」




 仕入れ担当の俺たちは、まず冷凍の焼き鳥を取り扱っている所を探さなければならない。当然、そこらのスーパーマーケットでは売っていないだろうし、それ専門の会社かお店が選択肢になってくる。

 そこでネックになってくるのが、俺たちが学生である、ということ。何かあった時に、会社側が責任を取る必要があるかもしれない。わざわざそのリスクを負ってまで卸してくれるだろうか?


 それに俺たちが仕入れられない間、調理担当も何もできなくなってしまう。




 はぁ、前途多難だなぁ………………。



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