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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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78/82

74.タイミング

短めです

 



 昔、私は実家で腫れ物同然の扱いを受けていた。そんな私に唯一優しく接し続けてくれた人がいたの。

 私よりも少しだけ年上だったから、姉さんと呼んで尊敬していたわ。いつか彼女みたいに優しい人になろうって、そう思っていた。


 でも、優しくなんてなれなかった。お父様や琴乃との軋轢で、神経は徐々に摩耗していった。姉さんは気遣ってくれていたけれど、その気遣いにさえ気づけない、それくらいには限界だった。




 そして逃げた。自分の弱さから、目を背けた。




 姉さんには何も言えず、感謝も伝えられないままに家を飛び出してきてしまった。まだ未熟で脆かった私には、そうするしかないと思い込んでいた。………それすらも、言い訳にすぎないのだけど。




「簡単に言うとこんなところ。もしもう一度彼女に会えるのなら、何も言わずに出ていったことをを謝って、今までの感謝を伝えたい。でもお父様は居場所を教えてくれないの。だから半ば諦めているのだけどね」


「別に綾乃が悪いことをした訳じゃないだろ。気に病む必要は無いし、あれだけ複雑な家庭事情なら綾乃みたいになって当然だ」



 綾乃に非はないと伝えるも、その首は横に振られる。



「結局は私が未熟だった、それだけのこと。姉さんにも色々考えはあったのでしょうけど、やっぱりまた会って昔みたいに話したいわ」


「なら、大和さんにお願いしてみようか?あの人ならすぐに見つけてくれると思うけど」


「それは最後の手段ね。出来るだけ自分の手で探してみたいの」


「そっか、分かった。でも危ないことはやめてくれよ。綾乃に何かあったら嫌だからな」


「もう、心配性ね。そんなことする訳ないじゃない。なら最初から大和さんの力を借りるわよ」




 夕焼けに照らされた横顔が、その言葉が本心であることを物語っていた。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———









「あーちゃん、どったの?」


「いえ、大丈夫よ。うん、大丈夫だから気にしないで」


「なあ綾乃、まさかとは思うけど……」


「そのまさかだけど、言わないでちょうだい。その言葉を口にされると、現実を直視しなければならないもの…………」




 デートから2日後。この日は優心たちが通う古見高校の授業参観日。家族が授業の見学に来るというまこと恐ろしい日で、優心も大和が見学に来ていたため少し緊張していた。

 ただ隣にそれ以上に顔色が悪い人間がいたので、幾分かはマシであったが。




 その顔色の悪い人間(あやの)はといえば、想定外の状況に頭を抱えていた。






(あの女性、明らかに私の方を見てる………)



 授業参観はもちろん強制ではないけれど、家族の形を取り戻そうとしている今ならお父様は参加する可能性は高い。けれどお父様が来ることができないのは分かっているから、使用人の中から誰かが派遣されるだろう。そう考えていた。


 でも前に実家に行った時には、あんな人は見かけなかった。見送りの時には使用人が一堂に会していたから、見逃していたということも無いはず。


 気になったので思い切って話しかけてみることにした。




「えっと、私に何か用事でも………?」


「ええ、繁様にお願いされてしまったので。でも…私のこと、忘れてしまったのですか?()()()()()


「ま、まさか………いえそんなはずは……でもそれしか可能性は………………」


「あんなに姉さん姉さんって慕ってくれてたのに、流石の姉さんもショックですよ?」




 そのまさか。こんなに早く会えるとは思ってもみなかったけど。


 それでも会えたことは素直に嬉しい。




「本当に…姉さんなんですね………。ごめんなさい……黙って出ていったりなんかして………」


「私の方こそごめんね。一番辛い時に側にいてあげられなくて。私も妹のように思ってたから、寂しくて使用人も辞めちゃった」


「それは嬉しいけれど、姉さんが気に病むことなんか一つもない。姉さんはいつも私のことを気にかけてくれていたでしょう?それが救いになってた。姉さんがいなかったら、もっと早くに壊れてたかもしれなかった…」




 感動の再会だが、綾乃が頭を抱えている理由はそこではない。先程から教室の外に、黒いハットを被り、サングラスをかけた男の影が見え隠れしているのだ。

 ハットの方はまだしも、室内なのにサングラスをかけているという怪しすぎる状況。説明するには、顔を隠す必要があると考えるしかない。綾乃と優心は男の正体にすぐに思い至った。




「えーっと…何してるんですか、繁さん」


「む、気付かれてしまったか。我ながら完璧な変装だと思ったのだが」


「室内でサングラスなんて着けてたらそりゃバレますよ………」



 綾乃が姉さんと呼んだ女性を、ここに連れてきたのが誰かという謎。そもそも実の姉妹でもなければ、保護者として登録もされていないので、校内に入ることは限りなく不可能に近い。

 だが家族の付き添いがあるのなら話は別。それが可能なのは氷川 繁、ただ1人である。



「なに、今なら綾乃と彼女を会わせてやれると思ってな。前々から相談を受けてはいたのだ。どうにか綾乃と会えないか、と。だが今までの私では難しかった」


「親子仲を修復した後で、さらにはサプライズを仕掛けられるタイミングを探ってた…ってことですか」


「そんなところだ。どうせなら感動的なものにしてやりたくてな」




 なら時と場所は考えましょうよ。そう思っても口には出さない優心であった。




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