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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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73.穏やかデート

新作投稿しました。興味のある方は是非。

 



「おはよう優心。随分と早いけれど、待たせてしまったかしら?」


「俺も今来たところだ。それにまだ集合時間前だしな」


「本当は?」


「30分前には着いてた」




 そもそも部屋が隣同士なので、優心がいつ家を出たのかは筒抜けである。そんな中身の無い会話を交わしたところから、久々のデートは始まる。


 ちなみにこのデート、優心は事前情報ゼロである。行き先も何をするのかも、全くの未知数。不満は無いが、不安はある。何も分からないというのは、いくら親しくとも怖いものだ。




「本当に着くまで何も教えてくれないのか?」


「教えてもいいけど、逃げられない状況で教えた方が面白いもの」


「………………俺、今から何されるの?」



 綾乃は特段おしゃれをしている感じではない。いつも出かける時と同じような服装だ。遊園地とか特別な場所に行くということは無いだろう。………余計不安になってきたけどな。


 内心怯えながら歩くこと10分。目の前には小綺麗なビル。どうやら本日のお目当てはここにあるらしい。



「こんにちは。今日()よろしくお願いします」


「こんにちは氷川さん。そちらの方がいつも話されてる?」


「ふふっ。ええ、私の彼氏の優心です」


「戸張 優心です、よろしくお願いします。それで、ここは一体…?」



 エレベーターを降りた途端、女性に挨拶をする綾乃。気安い雰囲気に見えるので、ここには何度も来ているのだろう。

 場所はビルの6階。パッと見た感じ、個室が多いように思う。あとすごい良い匂いがする。こんなところ初めてだ………。



「本日は彼氏さんも、ということでしたね」


「お願いできますか?日頃の疲れを少しでも癒やしてほしくて」


「もちろんです。それが我々の仕事ですので」



 質問には答えてもらえないまま、先ほどの女性に個室へと案内される。そして幾つか質問をされるうちに、ここがどういう場所なのかなんとなく理解した。

 おそらくここはマッサージ店だ。さっき施術って言ってたから、それに近しいものだとは察することができる。



「それでは始めていきますね」


「お願いしま…いっだぁ!?」


「最初は痛いかもしれませんが、徐々に慣れてきますからね〜」




 な、慣れる……?これに慣れるとか無いだろ……!ちょ、痛い痛い痛い!これ、不健康な人ほど痛いって聞いたことあるんだけど、俺ってもしかしてとても不健康………?




 ………30分後。前言撤回だ、痛みにはもう慣れた。身体がほぐれてきて、だんだんと気持ち良さの方を強く感じるようになってきた。

 これはいいな。綾乃が通いたくなる気持ちも分かる。もう昨日までの身体には戻れないかもしれない。


 それからさらに30分。施術が終わり立ち上がってみると、今までで一番と言っていいほど全身が軽い。まるで翼でも生えたかのような気分だ。



「お疲れ様でした。全身が物凄く凝っていましたけど、どれだけ無茶な体の使い方をしてきたんですか………?」


「常に全力を出しながら行動しているので。それが最良の結果に繋がると思うんです」


「あまり無理はなさらない方がよろしいですよ。氷川さんはいつも心配されていますから」


「それ、俺に言っていいんですか?」



 同じく施術を終えて個室から出てきた綾乃が、赤面しているのが見える。今の会話、聞こえてたんだろうな。



「あ、聞かれてましたか。氷川さんは彼氏さんのことが本当にお好きなんだなぁ、と。あら、少しやりすぎてしまったでしょうか」


「〜〜〜〜〜!!だい、じょうぶ、です………。うぅ………………」


「あはは………」



 綾乃からしてみれば酷い辱めを受けた格好だが、彼女の名誉のためにこれ以上の言及は控えることとする。




 気を取り直して、二人は買い物をするためにいつぞやのショッピングモールへ。色々騒ぎになり、優心にとってはあまりいい思い出が無い場所でもある。


 今日は春馬が居ないので騒ぎにもならず、ただ心地良いデートの時間を楽しむ。すると優心がふと足を止める。

 そこは、綾乃に贈った髪飾りを買った店だった。




「どうしたの優心。何か気になる物でもあったの?」


「そういうわけじゃ無いんだけどさ。あの髪飾り、ここで買ったんだよ」


「へえ…ここが………。あれ、結局あの時以来使えてないのよね。優心から初めて貰ったプレゼントだから、大事にしたくって」


「大事にしてくれるのは嬉しいけど、別にそこまで高い物でもないぞ?そうだ、だったら普段使いできそうなやつを探してみるか」



 店に入り色々見てみるが、髪飾りの時のようにピンとくるような物は中々見つからない。

 そういうこともあるかと店を出ようとした時、俺と綾乃の目線が同じ方向を向く。



「このブレスレット………………」


「はは、やっぱり俺たち似た者同士だな。買ってくるから、ちょっと待っててくれ」


「駄目よ、私が使う物なんだし、私が払わないと」


「いや。俺は普段使いできる贈り物を探してたんだ。いつも料理に家事、勉強も頑張ってる綾乃に、少しでも感謝の気持ちが伝わったらいいなって」


「そんな言い方………ずるいわよ…」



 綾乃が喜んでくれそうで良かった。いつも綾乃にお世話になりっぱなしだし、家事の手伝い以外にも、何か思い出に残るもので恩返ししたかったんだ。


 綾乃はプレゼントの入った袋を受け取って、大事そうに抱えていた。








 デートの最後は、ショッピングモールから少し歩いた所にある、海が見える丘に来ていた。




「………風が気持ちいいな」


「ええ。夕焼けもすごく綺麗でしょう。ここは昔、姉さん……私の恩人に連れてきてもらった思い出の場所なの」


「…それは、俺が聞いてもいい話なのか?」


「少しずつでも、前に進まなきゃって。そう決意したはずなのに止まったままだったから」



 優心なら受け入れてくれるって分かってるのにね。



「だから、聞いてくれる?氷川綾乃を形作った原点の話を」






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