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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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69.力関係

更新遅れてすみません。

 



 別府温泉に着いて最初に思ったこと。それは、意外と硫黄臭がしないことだ。


 俺の勝手な偏見だと思うけど、温泉地はどこも硫黄の匂いがすると思っていた。

 うっすら香ってくるような気もするが、そこら中が匂うなんてことはない。一度深呼吸をしてみても、それは変わらなかった。



「どうしたのよ、深呼吸なんかして。まさか電車も酔ったの?」


「電車酔いはしてない…はず。いやそうじゃなくて、温泉の匂いが全然しないなーって思ってさ」


「そういう硫黄臭がするのって、本当に一部の温泉地に限るらしいわよ。草津みたいに、温泉が街の中心にでもない限り、強く匂うことは無いんですって」



 なんかとても恥ずかしくなってきた。綾乃が博識すぎて、彼氏として立つ瀬がない。俺は綾乃に何か勝てることがあるだろうか?

 ………無いな。力の強さなんかは論外だ。俺は一生、綾乃には逆らえないのだろうな。







 2人の間の力関係がはっきりしたところで、温泉街と呼ばれるような区域に差し掛かる。


 周りは旅館と、温泉まんじゅうをはじめとした土産物店ばかりだ。時折立ち寄りつつ、目的地を目指していく。




「すごい活気だな。今日は平日だってのに」


「外国人旅行者が多いのでしょう。私たちみたいな学生はあまりいないし、別府温泉は海外だとかなり人気があるって聞いたことがあるわ」


「へえ。言われてみれば、日本人よりも多い気がするな。インバウンド需要ってやつか。よく分かんないけど」


「そんな言葉よく知ってるわね。今どきの高校生はニュースなんか見ないものだと思っていたわ」



 いや、言葉を知ってるだけで、意味はほとんど分かってないんです。なんか観光のことらしいってくらいしか知らない。

 綾乃に対抗してそれっぽいこと言って、ちょっと見栄を張りたくなっただけです………。




 勝手に張り合って勝手に敗北感を抱いている。そんな様子に綾乃は首を傾げていた。


 どこか微妙な空気のまま歩き続け、気づけば目的のホテルに到着していた。




「お、戸張に氷川。早かったじゃないか。お前たちが一番乗りだよ」


「そうなんですか。てっきり誰かしら来ているものだと」


「いやそれがな。事故でバスが渋滞にはまったらしいんだよ。今、担任は生徒に連絡を取って、電車で移動するように誘導してるところだ」



 そんなことがあったのか。だとしたら俺たちが電車移動を選んだのは正解だったな。ちゃんと調べておいてよかった。


 春馬にも連絡して、電車で移動するよう伝える。しかし誰も来てないのか………。みんな意外と観光してるんだな。



「とりあえず部屋の鍵は渡しておくから、先に戻って休んでてくれ。夕飯と風呂の時間はちゃんと守れよー」




 それぞれの部屋の鍵を渡され、一足先に休むことにした。なんだかんだで結構疲れたし、少し落ち着きたいな。

 綾乃とは階が違うのでエレベーターで別れ、自らの部屋に向かう。


 鍵を開け部屋に入ると、ザ・和室とでも言えばいいだろうか。そのような光景が広がっていた。


 4人部屋だが、それよりも広く感じる。その倍は布団が敷けそうなくらい、大きな部屋だった。



「これ、俺たちだけで使っていいのか………?」



 そう不安になるほど、豪華に感じる。いやこんなものなのか?最近泊まったのが雛が用意したあの部屋だけだから、感覚がおかしくなってるのかもしれない。

 だが少なくとも、俺はこの旅館に大満足している。







 荷物をある程度整理して、同部屋のメンバーに鍵を持っていることを伝えておく。

 返事はすぐに返ってきた。さすが現代人だな。


 その中でも、ジョージが渋滞に巻き込まれたらしく、少し遅くなりそうとの連絡があった。一緒に行動している孝太も同様だ。先ほど注意するように言われたばかりだが、夕飯の時間は多少融通が利くそうなので、あまり心配しなくても良さそうだ。


 さて、やる事も無いしテレビでも点けるか。









 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










 ふう、飛行機移動なんて久々だから、知らない内に疲れが溜まっていたみたいね。少しリラックスしただけで、一気に身体が重くなっちゃった。


 それにしても、九州をちゃんと巡るのは初めてだったけれど、とても楽しめたわね。これでまだ初日だというのだから、明日以降にも期待が膨らむわね。




 ………実は、悩んでいることがある。

 お父様にお土産を買うべきか、買うとして何がいいのか。


 琴乃とは約束したけれど、あれ以来お父様とは話せていない。私が実家に戻っていないのが悪いのだけれど、今の生活が心地良くて、あまり戻る気にもなれないのよね。

 でもこれをきっかけに、もう少し家族の時間を作ってみるのもいいかもしれない。


 こういう時は、優心に相談するのがいいと思うのだけれど、かなり疲れているようだったし、今から行くのは気が引ける。大人しく雛たちが来るのを待ちましょうか。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










 結局、ジョージと孝太は夕飯の時間に無事間に合い、会場で和食を楽しんだ。その時綾乃と少し顔を合わせたのだが、何か考え事をしているようで、どこか上の空だった。

 その場では指摘しなかったけど、心配だし後で連絡しよう。


 その後はみんなで大浴場に行き、別府温泉を満喫した。やっぱり温泉はいいな、身体が芯から暖まって、全身の疲れが取れていく。



「いやー、最高だったな!何回でも入れそうだわ」


「やめとけジョージ。お前じゃのぼせて医務室行きがオチだ」


「酷くない孝太?」



 俺もジョージと同じで何回でも入れそうだけど、5回も10回も入るのは流石に勘弁してほしい。




 やはり部屋は広く、4人でもかなり持て余している。全員分の荷物を置き、布団を敷いてもまだスペースは残っている。これ、本当は6人とか8人部屋っぽいし、学校側もかなり奮発してるんだな。お金自体はこっちが出してるんだけど。


 それはともかく、今は修学旅行の夜。そう、修学旅行といえば………。



「恋バナの時間だーーー!!!」


「お前以外彼女持ちだぞ」


「うるせー!今日はとことん俺に付き合ってもらうからな!」


「なあ春馬、俺たち寝れるのか?」


「Zzz………………」


「もう寝てるし………」



 こうして俺たちの、眠れない夜が幕を開けた。



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