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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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68.順調な旅程

 



 初めての水炊きは、優心たちにとってとても満足のいくものであった。

 その後は市街地を歩きながら、「あれが美味しそう」「これも美味しそう」などと、今しがた食事を済ませたばかりだというのに、食べ物のことばかり考えていた。

 それだけ福岡はグルメな街である、ということだろう。


 さすがに満腹であるのか、彼らはここで別れることになった。理由としては、帰りも福岡空港から羽田空港へと飛ぶことになるので、最終日にもう一度戻ってくることになるからだ。



「それじゃあ、また後でなー」


「ああ、2人も楽しんで」


「それで、私たちはどこに行きましょうか?」


「今日のチェックポイントは宿泊先の旅館だったよな。先にそっちの方に向かおうか」



 日ごとに定められたチェックポイント。初日は大分の温泉旅館に泊まることになっている。

 なぜ旅館がそのままチェックポイントになっているのか。大山先生曰く、大分といえばやはり温泉!だからだそうだ。


 道中の確認が取れなければ意味がないと思うかもしれないが、そこは現代。修学旅行用に作られたグループチャットに、昼過ぎに通話がかかってくるそうだ。

 班単位での行動を義務付けていない以上、こうする以外に方法はないからだ。いくら私立校といえど、数百台もの携帯端末を用意するのは不可能だったようだ。


 とはいえ、この通話に出なかったら修学旅行は中止、なんて言われたら嫌でも出ざるを得ないだろう。それだけ高校生にとって、修学旅行というのは価値あるものなのだ。



「でも、どうやって行くのかしら。領収書を持っていけば学校からお金が出るって言っていたけれど」


「どの移動手段にしても高額だし、距離もかなりあるからな。今から行っても着くのは夕方頃だろうな」



 時計の針は13時を過ぎた辺りを示している。今いる福岡天神から、博多駅まで移動。そこから特急列車に乗って行くのが、乗り換えが少なく楽なルートらしい。


 事前に調べておいて正解だった。バスや特急ではない在来線を使うと乗り換えが増えたり、かなりの時間がかかっていたみたいだ。



「ならさっさと行きましょう?明日は温泉街を観光する時間なんて無いのだから」


「そうだな。温泉地に寄れるのは今日だけみたいだし、優奈にお土産も買っときたいな」


「最後にした方が良いんじゃないかしら。荷物増えちゃうわよ?」



 いや、温泉地行くなら温泉まんじゅう買ってきて、って言われたんだよな。普段和菓子なんかほとんど食べないくせに。


 まあ荷物が増えるのは仕方がない。後でスーツケースに入れておけば良いだろう。





 バスに乗って数分、博多駅に到着した。

 降りて最初に思ったことは一つ。



「でかいな………………」


「前もどこかで聞いたような言葉ね」


「だって、ただの駅だぞ?」


「それを言ったら新宿や池袋だってそうじゃない。最近は駅と商業施設が一体化している所も珍しくは無いわ」



 それはそうなんだけどね。前に見た城とは違う、駅ならではの良さがあるんだ。こういう所も旅の醍醐味だからな。



「観光名所を巡ることだけが旅じゃないだろ?」


「その気持ちは少し分かるわ。他ではあまり見かけないものとか、つい探してしまうもの」


「そうそう。ご当地限定!みたいな響きが良いんだよなぁ」


「ところで時間、大丈夫なの?」



 そうだった。乗り換え時間、ちょっと余裕は持ってるけど、特急券とか買わなきゃいけないし急ぐか。




 駅に入り、窓口へ向かう。周りを見渡すと、俺たちと同じ制服を着た生徒が一定数見受けられる。彼らもしっかり調べてきたのだろう。


 その時、ポケットが震えているのに気づく。例の確認だろうな。ここは班長の綾乃に任せることにしよう。




『あー、遅くなって悪かったな、迷子になったりしてないか?ここの班に限って無いとは思うけどな』


「はい、こっちは大丈夫です。雛たちは大丈夫かしら?」


『俺たちも大丈夫だ。そろそろ博多駅の方に行こうかって話してたんだよ。優心が時刻表まで送ってくれてたしな』


『よし。これで全員の確認が取れた。待て、いつも喧しい山﨑の気配が無いようだが?』


『ああ、多分そろそろ…あ、戻ってき……『はいっ、雛ちゃん元気ですっ!』………だそうです』



 うん、とりあえず問題なさそうで安心だ。後は無事に旅館まで辿り着くだけ。駅からもそう離れてないらしいし、難しいことは何ひとつ無い。




 窓口で切符と特急券を購入し、ホームへ向かう。既に列車は到着していたが、始発のため清掃中のようだった。


 中から清掃員の人が降りてきて、一度ドアが閉まる。少しして、再度ドアが開く。周りの人も乗ってるし、恐らくこれで大丈夫なのだろう。




 車内は意外と広く、新幹線と大きく変わらないように感じる。いや、座席数が少ないからそんなことはないのか。


 床は木製、椅子も本革を採用しているようで、シックな雰囲気がとても好みだ。

 なんというか、大人の列車という感じがする。



「すごいわね………。こういう特急列車に乗るのは初めてだけれど、新幹線とは違った良さがあるわ」


「そうだな…。なんか贅沢してる気持ちになる」


「椅子の座り心地も良いわね。家にも欲しいくらいよ」


「これ、いくらするんだろうな………」



 初めての特急列車に、驚きと興奮の連続だ。これ、もっと早く知りたかった。値段もそこまで張らないし、なんなら新幹線よりも満足度高いぞ。


 しばらくして列車が動き出す。ここから約1時間半。飛行機で少し疲れたし、ここらで少し休んでおくか。

 夜は、ジョージと春馬が喧しいだろうしな。孝太は、まあ………恋愛の話とかしなければ大人しくしてるだろ。




 優心は暫しの間、夢の世界と旅立つのであった。







 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———







 ぐっすり眠っていた優心は、優しい眼差しの綾乃に起こされるまで一度も瞼を開かなかった。


 綾乃の方は乗り物酔いはしない体質らしく、ずっと本を読んでいたようだが平気な様子だった。




「起こしてくれてありがとな」


「もうじき着くみたいだったから。降りる準備、しましょうか」


「だな」



 ずっと寝てたし、特段準備とか無いんだけどな。ただリュックを背負うだけだ。




 綾乃も準備を終えたところで、車内アナウンスが流れる。タイミングバッチリだな。


 列車に別れを告げ、俺たちは今日の宿泊地、別府温泉へとやって来た。




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