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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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67.全力で楽しもう

明けましておめでとうございます。今年も精一杯書かせて頂きますので、応援のほどよろしくお願いします。

 



 福岡空港まで3時間ほど。生徒一同は、快適な空の旅に揺られていた。


 そして、揺られすぎた男がここに2人。




「…なあ優心、大丈夫か?」


「………ジョージ、お前こそ」


「「………気持ち悪い…」」


「なーにやってんだお前ら。優心に至っては寝てただけじゃねーか」



 いやぁ、面目ない。寝て起きたら、そこには青い空。あと1時間で着くみたいだったから起きて待つことにしたが。


 気づけばこのザマである。綾乃にはこんな姿見せられないな。



「ほら、氷川さんも心配してるぞ」


「ケッ、お前は良いよな。心配してくれる可愛い彼女がいてさ。なのに俺は………うぷっ」


「深呼吸だジョージ。安心しろ、何かあっても骨は拾ってやる」


「うるせー彼女持ちどもめ!俺なんか、俺なんかぁ………」



 これは余談だが、さっきジョージが言った通り、孝太にも彼女ができた。

 相手は近所に住む幼馴染だそうで、部活でもマネージャーとして支えていたらしい。IH(インターハイ)で優勝し、勢いそのままに告白したそうだ。

 まるでラブコメの世界の話だな。



 ジョージもちゃんとしてればモテるんだけどなぁ…。

 雛の話によれば、今フリーの男子の中でもかなり人気があるとか。


 でもかなり繊細なタイプだし、人は選ぶかもしれないな。ああ見えてかなり一途らしく、初恋すらまだらしい。曰く、『俺の軽いノリに付き合ってくれて、ちゃんと叱ってくれる人』がいいらしい。

 モテたいとか言ってる割には、結構条件あるのな。


 学生恋愛は長続きしないとよく言うけど、その先もきっちり見据えてるのだろう。本人からは言うなと言われているけど、実は真面目だしな。



「本当に落ち着けってジョージ。それ以上はマジでまずい。色々とまずい。騒いだって吐き気が収まるわけじゃないだろ?」


「そうは言ってもよぉ。優心はまだ耐えられるのか?」


「いや無理。あと10分くらいで着いてほしいかも」


「良かったなお前ら。先生が、たぶんあと5分くらいで着くから降りる準備しとけって言ってたぞ」



 そういえばちょっと前に、『まもなく着陸します』ってアナウンスがあったな。気持ち悪くてそれどころじゃ無かったけど、意外と時間経ってたんだな。


 俺たちは安堵の息を漏らす。綾乃にこれ以上情けないところは見せられないし。…いや、もう今更か。散々ダサいとこ見せてるし、綾乃はそれも受け入れてくれてる。取り繕う必要なんかないか。







 気づいたら空港の中にいた。春馬に手伝ってもらいながら、なんとか吐かずにここまで来れた。

 そして後から降りてきた女性陣が、俺たちの姿を見つけて歩み寄ってくる。



「優心、大丈夫?まだ顔色悪いわよ」


「さっきよりはマシだよ。飛行機なんて久々に乗ったから、こんなにキツいとは思わなかったんだ。まだ頭がガンガンする………」


「とりあえず保険の先生に診てもらって、それから私たちは出発しましょうか」


「ごめん…迷惑かけて………」


「迷惑じゃない。誰にだってあり得ることだから、自分を卑下するのはやめなさい。ちゃんと謝れるのは良いことだけど、そんな弱気になったら嫌いになっちゃうわよ?」




 綾乃に嫌われるくらいなら死んだ方がマシだ。




 そう言ってやりたいけど、また怒られるし泣かれるから口にはしない。そもそもこんな衆人環視の中でそんなこと言えるか。


 最近はこの性格も鳴りを潜めていたけど、久々にマイナスな感情になった気がする。

 体調が悪いと気持ちの面でも負の要素が強くなってしまう。それはこの間の風邪でよく思い知った。こればっかりは努力でどうにかなる問題でもないし、そうだな………まず薬をもらってからだな。







 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———




 先生に診てもらい、酔い止めと頭痛薬を渡された後、4人で空港から出発する。


 最初から2人で行動しても良かったのだが、少しくらいは4人で巡るのもいいだろうということで、福岡にいる間はいつもの面子での道中になった。




 まずは腹ごしらえから。


 福岡には数々の名物グルメがあるが、ここに来たら最初に食べたかったものがある。



「「「おお〜〜〜」」」


「いい匂いね。寒くなってきたし、丁度よさそう」


「ラーメンにしても良かったんだけど、せっかくだしあまり食べないようなものにしようかなって」


「トバっち、ナイスだよ。食欲がそそられるねえ〜」



 俺たちが選んだのは、水炊きである。

 福岡県の郷土料理として有名な水炊きだが、その名前の由来は、水を煮立たせて具材から出汁を取ることから来ているそうだ。


 あとは、主な具材が鶏肉であることも特徴だ。別に鶏肉である必要は無いらしいが、やはりそちらが主流らしい。




 俺たちが入った店でもそれは変わらず、骨の付いた肉から出汁が出ていることだろう。


 それでは早速。



「「「「いただきます」」」」



 スープから一口。



「美味い………。雑味のない、塩だけで味付けされたスープ。そこに昆布と鶏の出汁が合わさって、優しい旨味になっている………」


「評論家かよ。でも確かに美味いな。雛ん家でも鍋はあんまりやらなかったからなぁ。新鮮だな」


「そうだねえ。鍋なんか作っても、家に人がいないことの方が多いし余っちゃうもん。どうしても食べ切りの料理になっちゃってたからね」


「暖まるわね。帰ったら私たちもお鍋、やりましょうか」



 それはいいな。確か、買ってもらったけど一度も使ってない調理器具、あの中に大きめの鍋があったはずだ。

 これみたいに、鶏肉を入れて水炊き風にするのもありだな。



「あっ、ポン酢ある?」


「はいよ。優心、お前ポン酢とか使うタイプだったっけ?」


「綾乃の作った料理を食べてると、色んな味付けに出会うんだよ。その中でも結構気に入ってるんだ」


「流れるように惚気られたな………。雛もなんか手料理作れない?」


「味を度外視していいなら、振る舞ってあげてもいいよ」


「やめとくわ。興味より不安が勝るね」




 序盤からドタバタしていたが、修学旅行はまだ始まったばかり。今は余計なことは考えずに、初めての九州を満喫しよう。




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