67.全力で楽しもう
明けましておめでとうございます。今年も精一杯書かせて頂きますので、応援のほどよろしくお願いします。
福岡空港まで3時間ほど。生徒一同は、快適な空の旅に揺られていた。
そして、揺られすぎた男がここに2人。
「…なあ優心、大丈夫か?」
「………ジョージ、お前こそ」
「「………気持ち悪い…」」
「なーにやってんだお前ら。優心に至っては寝てただけじゃねーか」
いやぁ、面目ない。寝て起きたら、そこには青い空。あと1時間で着くみたいだったから起きて待つことにしたが。
気づけばこのザマである。綾乃にはこんな姿見せられないな。
「ほら、氷川さんも心配してるぞ」
「ケッ、お前は良いよな。心配してくれる可愛い彼女がいてさ。なのに俺は………うぷっ」
「深呼吸だジョージ。安心しろ、何かあっても骨は拾ってやる」
「うるせー彼女持ちどもめ!俺なんか、俺なんかぁ………」
これは余談だが、さっきジョージが言った通り、孝太にも彼女ができた。
相手は近所に住む幼馴染だそうで、部活でもマネージャーとして支えていたらしい。IHで優勝し、勢いそのままに告白したそうだ。
まるでラブコメの世界の話だな。
ジョージもちゃんとしてればモテるんだけどなぁ…。
雛の話によれば、今フリーの男子の中でもかなり人気があるとか。
でもかなり繊細なタイプだし、人は選ぶかもしれないな。ああ見えてかなり一途らしく、初恋すらまだらしい。曰く、『俺の軽いノリに付き合ってくれて、ちゃんと叱ってくれる人』がいいらしい。
モテたいとか言ってる割には、結構条件あるのな。
学生恋愛は長続きしないとよく言うけど、その先もきっちり見据えてるのだろう。本人からは言うなと言われているけど、実は真面目だしな。
「本当に落ち着けってジョージ。それ以上はマジでまずい。色々とまずい。騒いだって吐き気が収まるわけじゃないだろ?」
「そうは言ってもよぉ。優心はまだ耐えられるのか?」
「いや無理。あと10分くらいで着いてほしいかも」
「良かったなお前ら。先生が、たぶんあと5分くらいで着くから降りる準備しとけって言ってたぞ」
そういえばちょっと前に、『まもなく着陸します』ってアナウンスがあったな。気持ち悪くてそれどころじゃ無かったけど、意外と時間経ってたんだな。
俺たちは安堵の息を漏らす。綾乃にこれ以上情けないところは見せられないし。…いや、もう今更か。散々ダサいとこ見せてるし、綾乃はそれも受け入れてくれてる。取り繕う必要なんかないか。
気づいたら空港の中にいた。春馬に手伝ってもらいながら、なんとか吐かずにここまで来れた。
そして後から降りてきた女性陣が、俺たちの姿を見つけて歩み寄ってくる。
「優心、大丈夫?まだ顔色悪いわよ」
「さっきよりはマシだよ。飛行機なんて久々に乗ったから、こんなにキツいとは思わなかったんだ。まだ頭がガンガンする………」
「とりあえず保険の先生に診てもらって、それから私たちは出発しましょうか」
「ごめん…迷惑かけて………」
「迷惑じゃない。誰にだってあり得ることだから、自分を卑下するのはやめなさい。ちゃんと謝れるのは良いことだけど、そんな弱気になったら嫌いになっちゃうわよ?」
綾乃に嫌われるくらいなら死んだ方がマシだ。
そう言ってやりたいけど、また怒られるし泣かれるから口にはしない。そもそもこんな衆人環視の中でそんなこと言えるか。
最近はこの性格も鳴りを潜めていたけど、久々にマイナスな感情になった気がする。
体調が悪いと気持ちの面でも負の要素が強くなってしまう。それはこの間の風邪でよく思い知った。こればっかりは努力でどうにかなる問題でもないし、そうだな………まず薬をもらってからだな。
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先生に診てもらい、酔い止めと頭痛薬を渡された後、4人で空港から出発する。
最初から2人で行動しても良かったのだが、少しくらいは4人で巡るのもいいだろうということで、福岡にいる間はいつもの面子での道中になった。
まずは腹ごしらえから。
福岡には数々の名物グルメがあるが、ここに来たら最初に食べたかったものがある。
「「「おお〜〜〜」」」
「いい匂いね。寒くなってきたし、丁度よさそう」
「ラーメンにしても良かったんだけど、せっかくだしあまり食べないようなものにしようかなって」
「トバっち、ナイスだよ。食欲がそそられるねえ〜」
俺たちが選んだのは、水炊きである。
福岡県の郷土料理として有名な水炊きだが、その名前の由来は、水を煮立たせて具材から出汁を取ることから来ているそうだ。
あとは、主な具材が鶏肉であることも特徴だ。別に鶏肉である必要は無いらしいが、やはりそちらが主流らしい。
俺たちが入った店でもそれは変わらず、骨の付いた肉から出汁が出ていることだろう。
それでは早速。
「「「「いただきます」」」」
スープから一口。
「美味い………。雑味のない、塩だけで味付けされたスープ。そこに昆布と鶏の出汁が合わさって、優しい旨味になっている………」
「評論家かよ。でも確かに美味いな。雛ん家でも鍋はあんまりやらなかったからなぁ。新鮮だな」
「そうだねえ。鍋なんか作っても、家に人がいないことの方が多いし余っちゃうもん。どうしても食べ切りの料理になっちゃってたからね」
「暖まるわね。帰ったら私たちもお鍋、やりましょうか」
それはいいな。確か、買ってもらったけど一度も使ってない調理器具、あの中に大きめの鍋があったはずだ。
これみたいに、鶏肉を入れて水炊き風にするのもありだな。
「あっ、ポン酢ある?」
「はいよ。優心、お前ポン酢とか使うタイプだったっけ?」
「綾乃の作った料理を食べてると、色んな味付けに出会うんだよ。その中でも結構気に入ってるんだ」
「流れるように惚気られたな………。雛もなんか手料理作れない?」
「味を度外視していいなら、振る舞ってあげてもいいよ」
「やめとくわ。興味より不安が勝るね」
序盤からドタバタしていたが、修学旅行はまだ始まったばかり。今は余計なことは考えずに、初めての九州を満喫しよう。
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