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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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66.ささやかな願い

今年最後の更新です。皆様、良いお年を。

 



 迎えた修学旅行当日。

 3泊4日と長めの日程になっているが、出発時間は早い。


 集合は午前7時。この国で圧倒的な旅客数を誇る羽田空港から、九州の玄関口、福岡空港へ。


 まずは羽田で出欠を取るところから。ただ高校ともなれば容赦ないわけで、遅刻した者は自力で移動することになっている。1人のせいで飛行機を遅らせることは出来ない。そもそも貸し切りではないため、一般の乗客もいるのだ。




 もちろん優心が遅刻することはない。優秀な隣人が起こしに来てくれるので。




「おはよう優心。準備は出来てる?」


「バッチリだ。昨日一緒に確認したじゃないか」


「優心のことだし、うっかりがあるかもしれないでしょう?」



 それは聞き捨てならない………けど否定できない。

 実際忘れ物をすることもあるし、その度に綾乃に助けてもらってた。まあ、頭が上がらないんだよ。


 綾乃にそう言われては確認するしかない。リュックとスーツケースを開き、1つ1つチェックを入れていく。

 時刻は早朝5時。時間にはまだまだ余裕はあるが、空港までバス移動になるので渋滞などの可能性も考慮しなければならない。




 荷物の確認を終え、2人で家を出る。とりあえず忘れていたものはなかったので一安心だ。


 まだ陽の昇らない静かな道を歩く。もう暑さは通り過ぎて、たまに吹く秋風が心地良いくらいになっていた。




「少し肌寒くなってきたな」


「上着、入れておいて正解だったわね」


「綾乃さまさまだよ。俺1人ならそこまで考えてなかっただろうな」


「どうかしらね。貴方、家事を軽くこなせるくらいには器用なんだし、私に頼らなくてもそこまで考えていそうだけど」




 信頼してくれるのは嬉しいけど、俺はそこまで思慮深い人間でもなければ注意力も散漫である。だからいつまで経っても料理が出来ないんだな。



 バスに乗り込み、空港へと向かう。その道中、旅行先に想いを馳せる。




「九州といえば、やっぱりグルメだよなあ。ラーメンに水炊き、スイーツだって沢山あるし」


「いいわね。聞いてるだけでお腹空いてきちゃった」


「ははっ、その気持ち分かるよ。食べ物以外だと、温泉とかいいよな」


「そういえば私たちが泊まる旅館にも温泉、あるらしいわよ」



 えっ、マジか。全然そこまで調べてなかった。どんどん期待値が上がっていくなあ。


 俺、旅行って結構好きなんだよな。まだ高校生だからあんまり行けないけど、卒業して余裕ができたら行きたい所が山ほどあるんだ。


 この修学旅行で巡るのは福岡や熊本を中心とした、九州の北部地方。ここには含まれない宮崎県と鹿児島県にもいつか行ってみたい。

 その時は出来れば綾乃と一緒がいいな。2人で色んな所に行って、思い出を作りたい。


 それが今の俺の、ささやかな願いだ。










 空港には30分以上早く着いた。

 早朝の羽田は人もまばらで、窓口が混み合うなんてこともない。まあ、椅子に寝っ転がって休んでいる人たちも散見されるが。これが空港の日常だろう。




 集合場所に向かってみれば、まだ生徒は数えるほどしかおらず、先生も揃っていなかった。


 だが我らが担任は、しっかり朝型の人だったらしい。




「おはよう戸張、氷川。ウチのクラスはお前らが一番乗りだ」


「おはようございます」


「おはようございます大山先生。誰かしら来てもいい頃だと思いますけどね」


「いや、本当にな。全く…もっとしっかり言い聞かせておくべきだったな………」




 先生は「はぁ…」と、ため息をひとつ。

 今までの様子からも、クラスメイトたちが時間にルーズだということは分かっていたはず。


 別に先生の落ち度とは言わないが。だって悪いのは本人だからな。

 正直、俺も綾乃がいなかったら起きれたかどうか。


 先生と雑談していれば、少しずつ生徒がやってくる。ウチのクラスも増えてはいるが、他に比べれば圧倒的に少ない。勘弁してくれよ。







 なんとか時間前に全員揃ったので、校長先生による挨拶と注意事項の確認が行われる。

 そして最後に一言。




「そうですねぇ…これ以上僕から言うことは無いのですが、周りに迷惑をかけずに全力で楽しんで下さい」




 迷惑をかけない、当たり前のことだ。それが皆出来ていれば、こんなことは言われない。

 日野先生は、迷惑かけてなんぼみたいなこと言ってたけど限度はある。

 常識の範囲内で楽しむのが大事ってことだな。




 その後もう一度点呼を行い、保安検査場へと向かう。金属探知機を通過して、待合ロビーへと向かう。たまにピーッと音が鳴るが、金属のベルトか何かが引っかかったのだろう。まさに俺の後ろ(春馬)から鳴っているが。

 カッコつけてデカいベルトなんか着けてるからだ。


 待合ロビーは思ってた数倍広かった。はしゃぎたくなる気持ちは抑え、売店などを見て回る。

 値段は、まあ気にしない方がいいのだろう。プレミアム価格というやつだ。


 動く歩道なんかもあって面白かった。こういうのって見かけると乗りたくなるよな。




 その他にも色々あったが、残念ながら時間だ。それでもここよりもっと面白いことが待っているだろうし、楽しみは取っておこう。


 チケットを貰い、改札を通り抜ける。飛行機の中は限界まで座席が並んでいて、通路を歩くだけでも一苦労だ。


 俺の座席は真ん中の辺りで、春馬とジョージに挟まれている。なぜ綾乃がいないのかと言えば、座席を男女別で決めたからである。そうすることで、何かあった時に対応しやすくするためだそうだ。


 電子機器の電源を切って離陸を待つ。班が違うジョージや孝太に、どこへ行くのか予定を聞いたり、座席のパネルをいじったり。




 そうこうしていればすぐに離陸の時間になり、飛行機のエンジンがかかる。

 その揺れに、初めて飛行機に乗る人は悲鳴を上げていた。これ、思ったよりも揺れるんだよな。俺も久々に乗ったから少し驚いた。


 飛行機が動き出し、揺れがさらに強くなる。それと同時に悲鳴も大きくなるが、教師陣は大きく注意することはなかった。こうなるのは目に見えていたからだろう。




 そして気づけば飛び立っていた。そうすれば逆に揺れは少なくなり、今度は雲の上の景色に声が上がる。




 ………割と暇だな。見たい映画とかも入ってなかったし、うーん………………寝るか。




 そう考えた優心は、すぐに夢の世界へと旅立っていった。




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