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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第一章 1年遅れの関係
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4.夜の散歩

 


 微妙な空気のまま委員決めは進んでいった。


「委員に入ってないやつはいないな?それなら今日はこれで終わりだ。明日は休みで授業は明後日から始まるからしっかり遅刻せずに来るんだぞ?改めて1年間よろしくな」


 そう言って先生は退室していった。


「それじゃ帰ろうぜ。優心」


「何言ってんだ、春馬。お前委員長の集まりあるんじゃないのか?」


「うわ、やっべ忘れてた!じゃあな優心、また明後日な!」


 そう言うと、春馬は急いで集まりに向かっていった。早めに行動しないと、あいつすぐ囲まれるからなぁ………そういうわけで俺も帰りますかね。春馬がいなくなって若干居心地悪いし。


 そうして俺はそそくさと教室を出て行く。何やら氷川さんに意味深な感じで見られていた気がするが気のせいだろう。うん。





 帰宅した俺はいつも通り夕飯の時間までだらだら過ごし、お腹が空いてきたのでコンビニへと向かう。一人暮らしになって1年が過ぎて、家事はそこそこできるようになったが料理だけは未だにできない。1年以上もコンビニ飯である。最近のコンビニ飯はすごいぞ、健康にしっかり気を遣ったものも多いからな。


 そんなわけでコンビニで最近のマイブームである、ねぎ塩豚カルビ弁当(598円)を購入し帰路に着く。


 ………ん?あれは………氷川さんか?こんな夜中に何してるんだ?見たところ誰かと話しているみたいだが………もう少し近くまで行ってみるか。


「なあ、嬢ちゃん。俺と一緒に楽しいことしようぜぇ?ヒック」


「やめてください!離して!」



 酔っ払いに絡まれてたのか。すぐに助けなきゃ!

 買ったばかりの弁当をその場に捨て置き、急いで駆けつける。



「大丈夫?氷川さん」


「あなたは…戸張くん?どうしてこんなところに」


「ちょっとコンビニに夕飯を調達しに。今どうにかするからちょっと待ってて」


 そう言い、俺は酔っ払いと相対する。


「なんだぁ?てめえ?今こっちは大事な話してんだよ。ヒック。ガキはとっとと帰りなぁ」


「いやあ、そういうわけにもいかないんですよね。とりあえず彼女から離れてくれませんかね」


「よっぽど痛い目見たいみてえだなぁ。すっこんでなあ!」


 そう言って酔っ払いは俺に殴りかかってくるが、俺はその力を利用して逆に投げ飛ばす。酔っ払いは衝撃で気絶したようで、そのまま起き上がってこなかった。



「一丁上がりってな」



 少し待つと呼んでおいた警察が到着し、酔っ払いを署まで連れていった。俺たちも当事者として事情聴取を受けたが、学生ということもありすぐに解放された。送ってもらうことも提案されたが、警察署からマンションまではすぐであったため断り、歩いて帰宅することにした。なんとも言えない空気がその場に漂い、マンションに着くまでに俺たちが口を利くことはなかった。



 エレベーターを降り、部屋に着いたところでここまで一言も発さなかった氷川さんが口を開く。


「…………その、助かったわ。………ありがとう」


「いや、氷川さんが無事でなによりだよ。それじゃあ、俺はこれで」


「待って、何かお礼がしたいのだけれど」


「気にしないで、俺はただ目の前に困ってた人がいたから助けただけ。お礼なんていらないよ」


「そうは言ってもそれでは私の気が収まらないし……」



 俺は思い切ってとあるお願いをしてみる。



「うーん、なら毎朝挨拶を返してくれないかな?それだけでいいからさ」


「それだけでいいの?遠慮なんかしなくていいのに」



 え?いいの?てっきり突っぱねられるのかと………。



「いや、それだけで十分だよ。それに、今までどれだけ挨拶をしても無視されてたのは少し寂しかったからね」


「うっ、それは……ごめんなさい。それには少し訳があって……えっと、あまり詮索しないでくれると助かるのだけど」


「大丈夫、そのあたりは弁えてるから」


「ごめんなさい。いつか話せるときになったら話すから」


「うん、分かった。それじゃおやすみ、氷川さん」


「ええ、今日は本当にありがとう戸張くん。おやすみなさい」




 家の中に入るとその瞬間緊張が解け、山のように疲れが襲ってきた。

 そのまま俺はせっかく買ってきた弁当にも手を付けずにベッドに潜り込んだ。


 明後日の朝に思いを馳せながら。



お読みいただきありがとうございます!

感想、誤字報告もどんどんください!

高評価もして下さるとものすごく作者の励みになります………!!!

余談ですが、警察が来るまでの間にちゃっかり弁当回収してました

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