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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第一章 1年遅れの関係
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1.新学期

 

 春、桜が舞い、新生活が始まる時期。


 俺、戸張優心もこの季節に例外なく浮かれていた。


 新生活が始まるからではない。そもそも俺高2だしね。


 ではなぜ浮かれているかというと、お隣さんである氷川綾乃と今年も同じクラスになれたからである。


 今年()といっても、去年は業務連絡でしか話せなかったけどな。しかもその唯一と言っていい会話の機会でさえ別の人を通してのことが大半だったし。


 なんで俺こんなに嫌われてるんだろうなぁ。心当たりは割とあるけどここまで嫌われるようなことした覚えはないし、そもそも引っ越しの挨拶からして無視された気が………


 まあ一旦卑屈になった俺は置いといて、そんな浮かれポンチな俺のところにそろそろ……



「はよーっす!!!ゆーしーん!!!」



 ほら来た。


「今日も朝から元気だなお前は。おはよう、春馬(はるま)。」


 この元気すぎる陽キャイケメンは志田春馬。俺の唯一にして至高の親友である。陽キャイケメンなだけあって、こいつには友人がまあ多いのなんの。俺はこいつと友人関係にない奴を知らない。もしそんな奴がいるなら是非ともその面を拝んでみたいね。


 俺はずっと思ってるんだ。なんでこんな神のごとき存在が俺と親友やってるんだろうって。

 一度本人に聞いた時には、「うーん、面白いから?」って言ってたが俺には面白い点なんかないぞ?

 いやまあ周りから見たら、俺がやってることって相当な奇行なんだろうが。生憎とこのことを知っているのは春馬だけである。




 閑話休題(それはさておき)




「優心、もっとテンション上げてこうぜ?せっかくの新学期、新クラスなんだからさ。それに、今年もあの“氷の女王”様と同じクラスだし」


「もちろん分かってるよ。これでも俺のテンションは高い方なんだぞ?なんたってターゲットが常に目の前にいるんだからな。それはお前が一番よく分かってるだろ?」


「いやターゲットて。そりゃいつもよりテンション高いのは流石に分かるけどさ」


 と、こんな感じで軽口を叩き合いながら教室へ向かうのが俺たちのいつもの光景だ。こうしてる間にも春馬には挨拶がひっきりなしに飛んできているが。

 ん?俺?ハッハッハッハ。


 ちなみに、俺と春馬は中学からの付き合いでなぜか5年間同じクラスという奇跡を起こしている。

 もうそろそろ作為的なものを疑い始めたぞ。



 そんなこんなで駅から教室までの短い道のりを終え、教室に入る——————


 その瞬間、先に教室来て話していたやつらは、

「春馬!」「おはよう!」「おはよう春馬くん!」「今年もよろしくね!」


 なんだこれ。


 いや分かってたけどね?こいつの人心掌握マジで半端ないんだが?もうこれ誰が抵抗できんの?……いや1人だけいたわ。まあいいや。


 春馬がもみくちゃにされて俺は押し出されたため、大人しく後ろの扉から教室に入る。


 俺の席はっと………ド真ん中やないかい。俺みたいな隠キャにはキツいぜ……そしてふと隣を見ると………あ。



 氷川さん(ターゲット)、隣じゃん。



 よし、まずは今日の挨拶チャンスだ。新学期一発目だし、彼女の気に障らないように落ち着いた挨拶を……


「おはよう、氷川さん」


「……………」



 スンッ。



 うん。知ってた。もう慣れたよ、この虚しさには。できることなら慣れたくはなかったけど。


「ふう、ようやく解放されたぜ…。ん?どうかしたか?優心」


「……なんでもないよ」


 しっかりスタートダッシュに失敗した新学期初日の朝であった。




お読みいただきありがとうございます!

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