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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第一章 1年遅れの関係
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10.噂と仲間

 



 帰る方向の違う優奈とは途中で別れ、2人は帰宅する。

 そして綾乃は外では出来ない質問をする。


「それで、私と秋津さんのどちらが大事なのかしら?」


「それ帰ってきて最初に言うことか?」


「私にとってはとても大事なことなの」


 随分と可愛いことを言うな。そんなもの、考えるまでもない。


「氷川さんに決まってる。どんなことがあってもそれは変わらない」


「本当に?」


「ほん………家族が生き返ったら少し考えるが」


「それはそうよ。むしろ私より家族を優先してほしいわ。寂しいけれどそちらの方が大切だもの」


「でもそんなことはあり得ないと分かってる。だから今の俺にとっては氷川さんが一番大事だよ」


「うん、ありがとう」


 急に素直になったな。でも彼女の優しさが沁みるな。






 翌朝、登校するといつもより興味や悪意の視線が多いことに気づく。そういえば春馬から気を付けろよ、とメッセージが入っていたがまさかその関係か?ちらほらと噂話も聞こえてくるが、


「あいつが氷川さんと?」

「いやないだろ」

「でも春馬も相当気に入ってるみたいだしな」

「1年の女子も侍らせてたとか」


 氷川さん?一体何の話だ?まさか昨日のあれを見られてたとか?あとそこのお前。侍らせてたんじゃなくあいつが勝手に付いてきただけだからな。


 そうして教室に入ると、




「おい戸張、どういうことか説明してくれ」




 よく分からん筋肉ダルマに肩を掴まれた。

 こんなやつクラスにいたか?……う〜ん、思い出せん。


「誰だか知らんがとりあえず離してくれ。俺も何がなんだか全く分かってないんだ」


「む、すまん。俺も少し動揺していたみたいだ」


 そう言うと筋肉ダルマはあっさりと引き下がった。


「なんたってあの女王様のスクープだからな。気になって当然だろう?」


「待て、さっきも言ったが何の話だ?むしろ説明して欲しいのは俺の方なんだが」


「孝太。そこからは俺が話す」


 そう言って出てきたのはジョージ。こいつと知り合いだったのか。


「優心。ここじゃなんだから場所を変えよう」


「ああ、分かった」


「孝太も来るか?」


「いいのか!?もちろん行くぞ!」


 食い気味に言う筋肉。そんなに聞きたかったのかよ。




 そうして3人は場所を移し、とある空き教室。

 ジョージが今回のプチ騒動について話し始める。


「発端はクラスのグルチャに投稿されたこの写真だ」


「ちょっと待て。このクラスグルチャあったのか?」


「あ、やべ。これ言っちゃダメなんだっけ。まあ渡が勝手に言ってるだけだし別にいいか」



 お前の仕業か渡。え?これ入ってないの俺だけ?普通にショックなんだが。

 流石に氷川さんが入ってるなんてことはないよな?


「安心しろ戸張。氷川さんも入っていない」


 この筋肉エスパーかよ。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は黒田孝太だ。一応同じクラスなんだが……」


 ………なんかごめん。


「戸張の色々な噂は聞き及んでいるが、実のところ俺はそこまで信じちゃいない」


「そうなのか?」


「勘違いさせたかもしれないが、孝太は普通にいいやつなんだよ。ただ噂やゴシップに関わると暴走するだけで」


 それ割とダメじゃね?


「だけど噂に関する審美眼は信用していい」


「なんだよ噂に関する審美眼って」


「大丈夫だ戸張。平常時は基本お前の味方に付くからな」


「自分で平常時って言っちゃってるじゃん」


「自分でも暴走しがちなのは自覚している」


 してんのかい。ならなおさらダメだろ。


「分かっちゃいるんだが、噂の真相を掴んだ時の快感が何とも忘れがたくな……」


「とまあ、こんなやつだが仲良くしてやってくれ」


「あ、ああ。よろしくな、黒田」


「こちらこそよろしく頼む。あといい感じの噂があったら教えてくれ」


 ブレないなこいつ。





「話が逸れたが本題に入ろう」


 ジョージが話を戻す。


「ああ。氷川さんがどうのって聞こえたが、それと俺に何の関係が?」


「それでこの画像だ。心当たり、あるだろ?」


 そこに写っていたのは、昨日の帰り道の写真だった。俺が氷川さんに説教されながら、トリップしている秋津さんと歩いている姿を撮られていたみたいだ。


「これを撮ったのは誰だ?」


 その質問に孝太が答える。


「グルチャに上げたのは渡。撮ったのはどうやら渡の友人らしい。あいつの周りには黒い噂が絶えないからな。どうせ氷川のことを尾けさせていたんだろう」


 また渡か。あいつもなかなか執念深いな。


「普段から尾けさせているのか、何かするつもりで昨日だけ尾けてたのは分からんがな」


「優心、気を付けろよ。渡は多分バレないギリギリのラインまでやるぞ」


「ありがとう。しばらくは氷川さんを上手いこと守らなきゃな。この状況で表立って動くのは難しいし」


「俺たちも協力するぜ」


「ああ、俺も前々からあいつの噂の真相を暴きたいと思っていたんだ」


 黒田だけ方向性違くね?9割9分あり得ないが、渡がシロだった場合、大幅な戦力ダウンになるんだが。


「それとは関係なく俺たちは友達だからな。助けがいるなら呼んでくれ」


 ふう、黒田が友達想いなやつでよかった。


「それはそれとして、噂の真相を聞かせてもらおうか」


「本当にブレないな!いいぜ、聞かせてやろうじゃねえか」


 もうこの際だ。2人にも俺たちの事情を共有しておこう。









 マンションのことなどを全て話した後。


「お前、マジか………。クッソ羨ましいんだが」


「そんな事情があったとは。だが噂にあった、1年の女子は誰なんだ?」


「その子も俺たちのことを尾行してたんだよ。秋津さんって子なんだけど、純粋な興味だったみたいだ」


 秋津さんのことも明かすが、2人の反応は思っていたものとは違った。



「秋津って、あの秋津優奈か!?」


「ああ、そうだが……知ってるのか?」


「知ってるも何も超ビッグネームじゃねーか!1年で一番可愛いって話題なんだぞ?」


「そうなのか?…………だから見覚えがあったのか?」


 俺は小声でそう呟く。彼女の周りで騒ぎになっている時、見かけたのかもな。


「この学校の3大美少女の内2人と知り合い……しかもあの春馬とも親友とか、どうなってんのお前の交友関係」


「なんかどんどん知らない情報が出てくるんだけど。3大美少女ってなんだ?」


 新情報がポンポン出てくるな。ジョージも大概噂好きだろ。


「それも知らないのか……お前去年どんな学校生活送ってたんだよ」


 2人はそう言って俺に説明する。


「まず一番有名なのが、“氷の女王”氷川綾乃。そしてさっき話題に挙がった、”永遠の後輩“秋津優奈。最後に3年の”聖母“堀田京香。この3人がウチの高校の3大美少女って呼ばれてる」


「待て、今堀田京香って言ったか?」



 優心は懐かしいその名に反応する。



「そうだが………もしや優心。聖母とも知り合いとか言わねえよな?」


「同姓同名の別人じゃなければ、間違いなく知り合いだ」


「………お前、刺されても文句言えねえぞ?この学校の有名人トップ4と知り合いとか、他のやつが知ったら気が狂うんじゃないか?」


「大丈夫だ。もうナイフ持った同級生に襲われたことあるしな」



 優心はさらっと衝撃の事実を口にする。



「なんっにも大丈夫じゃねえ!?何があったんだよ!?」


「春馬が好きすぎて嫉妬に狂った女子に殺されかけた」


「男にも嫉妬すんのかよ……その後どうなったんだ?」


「取り押さえて警察呼んだ。なんか退学になったらしいが興味なかったしな」



 余談だが、優心はかなり鍛えている。祖父母の実家で力仕事をすることが多々あったからだ。学校もないような田舎だったから家から学校までかなり距離があり、毎日自転車を必死で漕いでいたのはいい思い出だ。

 そしてこの事件があってからさらに鍛えている。



 衝撃の事実を次々と聞かされた2人は、始業前から疲れ切っていた。




お読みいただきありがとうございます!

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