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第一章:始まり/響平

神崎響平はある頭痛をきっかけに、高校時代の同級生だった間宮光一と六年ぶりに偶然再会をする。

喜ぶ光一に誘われるままランチをしていると、ぶり返す激しい頭痛と耳鳴り。苦しんでいると店の外で突然男が倒れた。

騒然とする中で、プツリと響平の耳鳴りと頭痛が止む。それは倒れた男の死と同時だった。

度重なる死との対面。敏感になる嗅覚。突如、響平に目覚めた能力。これらはなんのサインなのか。

身に起こった謎に再会した元親友と立ち向かうバディダークサスペンス。



                                                      

『こっちに戻ってきてるって光一。同窓会参加するってさ』


 久々に連絡してきた高校の同級生からの電話に、ストンと手から携帯が滑り落ちた。

 要件は同窓会の誘い。年に一度、あるいは二度、定期的にやってくる恒例行事。動揺することもなかったはず。そんな今さらな俺をあざ笑うように、拾い上げた携帯のディスプレイには、バッキリとひび割れが走っていた。

 なにビビってんだよ。どのみち、今回も不参加だと決めているじゃないか。アイツが来ようが、来なかろうが、俺には関係ない。


『おお〜い、響平。今すっげー音したけど』

「あぁ、ごめん。携帯落っことした』

『なぁ、今回こそ来いよな同窓会っ! 六年ぶりに全員集合にしようぜ』

「も、もう電車来たから切るわ。また、連絡する」


 早々に電話を切り、顔を上げた時だった。車内から降りる人の中にふと視線が向かう。

 え……。

 まさかそんなはずないだろう。そう思っているのに、視線は釘付けになっていた。すれ違ったあとをそのまま追い続けてしまう。

 スラリとした長身。黒く柔らかな髪質、細く伸びた首筋。振り向かなくてもその微笑みがありありと蘇る。

 背後でプシューッとドアの閉まる音がした。流れていく人の波に押されるように登ってきたばかりの階段を下っていく。

 は……なにしてる? いやいやいや、追っかけてどうするつもり? というか、追っかけたらダメでしょ。万が一そうだったらどうするんだよ。って、なんで万が一なんて考えてるんだ? 電話で名前を聞いたからって……。

 手のひらにジワリと汗が滲む。

 期待なんてあるわけないから! おかしいから。

 そう思いつつも、振り切れない。男の頭がわずかに動くたびに、心臓がピクンと跳ね息を飲んでしまう。

 もう、六年も前。まだガキだった。体つきだって今とは違うし、スーツだし。でも似ている男が数メートル前にいる。もし本人だったとしても、俺は絶対声をかけないのに。じゃあ、なんでこんなことをしている? 俺は安心したいのか?

 本人であることを、ないことを確認して、ただ安心したいだけなのかもしれない。

 自分の気持ちの行き場所も分からないまま、振り向いた男に息を止める。それはまったく知らない顔だった。

 あいつじゃない。

 脱力して通路の冷たい壁に身を預けた。


「……なにやってんだよ」


 俺はやっぱりホッとして、言葉を漏らし軽く笑った。


 高校生最後の日。

 あの夜、俺はあいつから逃げ出した。


『響平?』


 不安気に呼びかける光一の頼りない声が今でも、耳の奥にこびりついている。





お読み下さり、ありがとうございます!

こちらは新連載です。

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