表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分岐点  作者: りん
3/3

【生まれた日、終わる日。】

 誕生日の朝。


 こんな気の重い誕生日、生まれて初めてだよ。

 だけど、今日も学校がある。のろのろと制服に着替えて、あたしはLDKに向かった。


「おはよう、紗帆(さほ)ちゃん。誕生日おめでとう!」

 先に食卓に着いてた双子の妹が、あたしの顔見るなり明るく声掛けて来る。


「……あー、ありがと。麻帆(まほ)もおめでとう。お互い十七歳だね」

 椅子を引いて座った目の前には、白いプレートにトーストとスクランブルエッグ、ウィンナー。いつもはサラダだけど、今日は白い小鉢にキウイ。

 鮮やかなグリーンの断面が眩し過ぎて、朝から涙出そうになるのをあたしは必死で堪えた。


 ──昨日、祥平(しょうへい)が持って来てくれたんだ。


「ねぇ。昨夜、祥ちゃん来てたんでしょ?」

「うん。ママに聞いた?」

 麻帆の言葉に、あたしは何気ない振りで返す。


「そう、『キウイ貰ったのよ~』って。……わたしも塾じゃなかったら会えたのに、残念ー」

 逆だよ。麻帆が塾で居ないってわかってたから、祥平はうちに来たの。


「紗帆ちゃん、祥ちゃんと仲良しでいいなぁ」

 軽く口尖らせた、そんな表情でさえ可愛い、妹。


「あたしは祥平にとっては『女の子』じゃなくて男友達と同レベルなんだよ。それだけ」

「えー、そんな筈ないって! 紗帆ちゃん、綺麗だし大人っぽいし。せめてわたしも紗帆ちゃんみたいに、もうちょっと背が高かったらな~」

 別に自虐でも何でもない。たぶん、これは真実だから。

 なのに単なる慰めって感じじゃなく、麻帆が本気で言ってくれてるのが伝わる。

 ……そういうとこ、ホント敵わない。


「紗帆ちゃん、先に洗面所使うね!」

 食べ終わって、律儀に断って席を立つ麻帆に頷く。あたしもさっさと食べて用意しないと。

 プレートを空にして、あたしはスライスしたキウイにわざと乱雑にフォークを突き刺した。


 ──甘くて、酸っぱくて。これから先、あたしはきっとキウイを見るたび、食べるたびに今の気持ちを思い出す。


                              ~END~


『Pink』

シリーズで麻帆視点があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なるほどですね。 誕生日が来るたびに……彼女は何を思うのか。
2024/05/28 10:54 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ