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第九八六話、第一遊撃部隊、アゾレス諸島へ


 アゾレス諸島にあるサンタマリア島に英陸軍が、テルセイラ島に米海兵隊が取り残されていた。

 制海権維持のための英独米艦隊を撃退後、退却した異世界帝国軍だったが、本格的に島を奪回するため、新たな艦隊と上陸船団を送り込んだ。


 その状況で孤立する英陸軍と米海兵隊を救助するのが、日本海軍第一遊撃部隊の任務である。


「敵がもっと少なければ、輸送船団の護衛としてここに送られていたかもしれない」


 遊撃部隊指揮官の神明 龍造少将は旗艦『蝦夷』の艦橋で言うのである。

 船団から物資を陸揚げし、部隊は敵侵攻部隊と戦う。米英軍にまともな水上艦隊が残っていたら、アゾレス諸島を巡って島嶼戦が繰り広げられていたかもしれない。

 これに対して、戦艦『蝦夷』の艦長の阿久津 英正大佐は。


「酷い任務ですよ」


 と、きっぱりと言った。


「我々だけで何とかなる数ではない……」


 確認されている敵戦力は、ヴラフォス級旧式戦艦10、重巡洋艦10、軽巡洋艦20、駆逐艦40、軽空母10――これがサンタマリア、テルセイラ、それぞれに1セットずつ存在している。

 つまりは戦艦20、重巡洋艦20、軽巡洋艦40、駆逐艦80、軽空母20が、アゾレス諸島に展開しているのである。


「これの相手を全部するわけではないからな」


 神明はいつも通りだった。圧倒的戦力差を前にしても、悲壮感は欠片もない。


「我々は夜陰に乗じてサンタマリア島に近づき、敵を引きつける。その間に、サンタマリア、テルセイラの兵を撤収させればいい」

「はっ!」


 阿久津は表情を引き締めた。

 今回の撤収作戦に参加する兵力は以下の通り。



●第一遊撃部隊:指揮官、神明 龍造少将


○主力隊

戦艦:「蝦夷」「大和」

空母:「翔竜」「鳳翔」

装甲艦:「大雷」「火雷」

水上機母艦:「早岐」

巡洋艦:「夕張」「早月」「矢矧」

駆逐艦:「島風」「氷雨」「早雨」「霧雨」

潜水艦:「伊600」「伊701」「伊702」「伊703」「伊401」「伊402」


○収容隊

軽空母:「龍驤」

大型巡洋艦:「早池峰」

装甲艦:「黒雷」

駆逐艦:「若竹」「呉竹」「早苗」「朝顔」「夕顔」

特務艦:「鰤谷丸」「牛谷丸」

特設補給艦:「千早」「辺戸」「波戸」

防空補給艦:「新洋丸」「天風丸」

海氷空母:「深海」



 英国陸軍と米海兵隊員を救出するために、兵員輸送が可能な大型巡洋艦『早池峰』、特務艦『鰤谷丸』『牛谷丸』、さらに補給艦『千早』『辺戸』『波戸』の六隻が用意された。


 また航空支援と兵員収容が可能なスペースを持つ大型海氷空母『深海』が加わり、空からの救出活動に威力を発揮する。なお『深海』は大海型の五番艦であり、海氷島の分離してしまった一部を流用して作られている。


 そして現地、1月19日の夜間。秩父型ゲート巡洋艦、兼、転移巡洋艦『大館』の転移中継装置を活用して、第一遊撃部隊はアゾレス諸島南方海域に到着した。

 主力隊から、戦艦『蝦夷』、装甲艦『大雷』『火雷』が浮遊、エ1式機関を使用しての飛行でサンタマリア島、サンミゲル島、テルセイラ島方面へ高速移動する。


 この頃、水上機母艦『早岐』から、暁星改攻撃機の二個小隊が射出され、空母『翔竜』『鳳翔』の飛行甲板は、夜間攻撃隊の発艦準備が進められた。

 サンタマリア島には英陸軍、テルセイラ島には米海兵隊がいる。なお、サンミゲル島はサンタマリア島寄りだが、双方の島の中間に近く、しかし今は無人である。



  ・  ・  ・



 アゾレス諸島東の端、サンタマリア島に飛んだ戦艦『蝦夷』は、島を包囲する敵艦隊、その主砲射程範囲ギリギリにて着水。砲撃準備にかかった。

『蝦夷』の転移中継装置を利用し、戦艦『大和』、軽巡『夕張』『早月』、駆逐艦『島風』、潜水艦『伊600』『伊401』が移動。潜水艦はただちに潜水を開始。残る三隻は、対潜警戒と『蝦夷』の護衛任務についた。


 サンタマリア島の周りでは異世界帝国艦隊が展開しているが、その中で戦艦部隊が島に向かって艦砲射撃を見舞っていた。闇夜に砲撃の炎がちらつき、島の一部を燃え上がらせている。


「夜間砲撃戦用意。目標、敵戦艦」


 神明少将は命じる。戦艦『蝦夷』の51センチ連装砲、『大和』の46センチ三連装砲が島を背にしている敵戦艦を狙う。

 藤島 正先任参謀が口を開く。


「敵は偵察情報によれば、旧式のB型――ヴラフォス型らしいですが……」

「当たれば大破、確実だろう」


 神明は淡々としている。34センチ砲搭載のヴラフォス級戦艦の装甲は、蝦夷や大和の砲弾の直撃を防御できない。しかも艦砲射撃中ということは、防御シールドも展開していないだろう。


「対水上電探より、こちらに接近中の艦影あり。巡洋艦3ないし4」


 レーダーが敵艦を捉えた。低空とはいえ、飛行してきた『蝦夷』を捕捉し、正体を確かめに向かってきているのだろう。


「護衛艦に任せる。こちらは戦艦を狙え」


 軽巡洋艦『夕張』『早月』が遮蔽を使って姿を消す。敵が対遮蔽フィールドを発生させていれば効果はないのだが、見えないということは、敵は遮蔽対策装備を持っていないかものかもしれない。それならば、こちらの小型軽巡でも対処法はある。

 暗視装置により、浮かび上がる敵艦影。砲撃準備完了の報告が上がる。


「司令、砲撃準備、整いました」

「撃ち方はじめ」


 戦艦『蝦夷』、そして『大和』の主砲が火を噴いた。

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