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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第九七五話、そのゲートの向こう


 スカパフローは炎上した。

 英独艦隊航空隊によって、駐留していた異世界帝国艦隊は出撃間際を叩かれた。アルクトス級空母の飛行甲板は艦載機の燃料の誘爆によってめくれ、激しく燃え上がる。オリクト級戦艦は艦橋トップを潰され、対空砲群が崩壊。プラクス級重巡洋艦は艦体が転覆し、駆逐艦は真っ二つに折れ曲がっている。


 奇襲は成功だった。

 魚雷は使わなかったものの1600ポンドE爆弾、500ポンドE爆弾などのエネルギー爆弾による破壊力は、異世界帝国艦を破壊に追いやった。


 イギリスに駐留する異世界帝国軍の抵抗力は大幅に低下しつつあった。空軍は初期の航空撃滅戦で半壊。さらにアヴラタワーを破壊されたことで、陸軍共々戦闘力が低下。海軍もまた、駐留艦隊がことごとく奇襲を許し、撃破された。


 地球勢力側――特に英軍が転移を用いることを想定していなかったことが、怠慢とも思える初動の遅れを呼んだ。

 スカパフローの艦隊にしても、出撃したのち敵艦隊と接触して艦隊決戦を行うと考えていて、まさか出港前に攻撃されるとは夢にも思っていなかった。


 これが常日頃、日本海軍と対峙していたなら、もう少し転移襲撃について用心したかもしれない。

 もしかしたら、遮蔽解除装置の配備で航空機による奇襲は不可能になったと慢心していた可能性も捨てきれない。


 ともあれ、イギリス駐留軍は大幅に弱体化。このまま英独加軍による侵攻が進めば英本土の奪回も見えてきていた。

 その頃、リバプールの異世界帝国拠点を攻撃し、異世界ゲートを制圧した日本海軍第一特務艦隊は、さっそくゲートへ突入を開始した。



  ・  ・  ・



 防御障壁を展開し、戦艦『金剛』『榛名』を先頭に、巨大なアーチ型ゲートをくぐる第一特務艦隊。

 光を抜けて、旗艦『武尊』の艦橋から見えた景色は――


「長官、海です……」

「わかっとる!」


 武本 権三郎中将は、見間違いではないかと瞬きを繰り返した。

 その海は青かった。どんよりと曇った空。水平線の彼方まで海が広がっていて、陸地は見えない。リバプールではないのは確かだ。


「敵艦隊! 重巡洋艦!」


 見張り員が絶叫し、電探もまた敵を捉える。空母3、重巡洋艦ないし軽巡洋艦10、駆逐艦15。


「砲撃戦、各個に応戦!」


 武本は怒鳴る。ゲートの向こうに敵がいることなど予測済みだ。もちろん、その規模は入ってみなければわからないのだが。


「赤い世界には、見えんな……」

「我々の世界のどこか、でしょうか」


 参謀たちも動揺している。ルベル世界に孤立した義勇軍艦隊と連絡を取るべく、無理をして奪取したリバプール・ゲート。だがその先は、肝心の赤の世界ではなさそうだった。


「しかし、調べねばなるまい。ひと段落ついたら偵察を出す。――航空参謀! いや、後でいい。今は目の前の敵を片付ける!」


 索敵計画を立てろ、と命じそうになり、まだ近くに敵がいるのを思い出す武本である。戦闘中に強行偵察機を出すのならともかく、今は優先すべきことがあるのだ。


 先頭の『金剛』『榛名』が35.6センチ連装砲を発砲。さらに12.7センチ連装高角砲が近い位置の敵エリヤ駆逐艦へ砲弾を立て続けに撃ち込む。ゲートの近くに敵が配置されており、すでに双方、魚雷を狙って撃てる距離だ。


「敵駆逐艦、魚雷を発射した模様!」


 見張り員の報告に武本は片目を閉じる。


「思ったそばからこれだ。後続艦に対魚雷防御を知らせろ! 高角砲で魚雷を迎撃だ!」


 一式障壁弾ならば浅いところを進む魚雷も障壁にぶつけて迎撃できる。日本海軍の高角砲は対空のみならず水雷防御も可能なのだ。


「敵もやりよるわい」


 第一特務艦隊は、次々にゲートをくぐって現れる。敵からすれば、ゲートに向かって魚雷や砲撃を放てば入ってきた日本艦艇に当たる確率が高まる、という寸法だ。


 旗艦『武尊』は敵重巡洋艦に46センチ三連光弾砲を叩き込む。数千メートルとなれば直射距離。さらにシールドも貫通する一撃が戦艦級の威力となれば、重防御のプラクス級といえど、いとも簡単にひしゃげ、轟沈する。


 重巡洋艦『古鷹』『加古』も、通常型の20.3センチ光弾砲を矢継ぎ早に発砲し、敵艦を迎撃する。

 こちら側のゲート守備隊も、さほど時間がかからず殲滅できるだろう、と武本は思う。果たして、ここはどこなのだろうか。



  ・  ・  ・



 グレートブリテン島東方、ドッガーバンク。海上に転移ゲートが現れ、ムンドゥス帝国艦隊が姿を現した。

 地球軍がイギリスに攻勢をかけてきた。その報告に接した帝国軍は、ただちに増援艦隊を派遣した。


 帝国第五艦隊。その編成は、戦艦55、空母30、重巡洋艦55、軽巡洋艦80、駆逐艦40、潜水艦30からなる。

 帝国第五艦隊司令長官のオルモス大将は腕を組み、旗艦の司令塔に仁王立ちする。武人型の将が多いムンドゥスにあって、全体的に体が細く、長身。顔のそこそこ長く、やや異質感がある男である。


 参謀長のアクレオ中将がやってきた。


「閣下、やはりスカパフローはやられました。戦艦、空母が軒並み叩かれ、実質戦力外です」

「元から地元連中など、あてにはしておらんよ」


 心底人の悪そうな笑みを浮かべるオルモスである。


「皇帝陛下の精鋭たるナンバーズ。我が帝国第五艦隊だけで充分地球人など蹴散らせるだろうよ」

「よろしいのですか? ササ長官は、くれぐれも油断はしないよう言っておりましたが」

「油断はしておらんよ、参謀長。楽しんでいるのだ、私は」


 ここまで帝国の手を煩わせた地球人である。よい戦いができることを期待し、胸を膨らませているのだ。


「スカパフローには、敵は上陸していないのだな?」

「はい。上陸船団なども確認されておりません」

「つまりは、イギリス本土奪回のための邪魔者排除だったわけだ。であれば、我々の針路はスカパフローではないな」


 オルモスは判断した。地球人が上陸しているイギリス本土南部へ向かい、そこからぐるりと回って、セントジョーンズ海峡を通りダブリンへ。それぞれ敵艦隊を撃滅する。


「そうなると、このドーバー海峡を通ることになりますが……」


 狭い海域である。地球人が攻撃してくるとしたら、大艦隊がここを通るところを狙ってくるのではないか。


「来てほしいね、私としては」


 ニヤニヤするオルモス。


「その方が、絶対に楽しい」

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