第九五九話、アゾレス諸島上陸作戦
1945年1月5日。
マカロネシア、アゾレス諸島に、米英独の三カ国艦隊が殺到した。
その戦力は――
●イギリス・フォースH
戦艦 :「ヴァンガード」「センチュリオン」
:「ミナス・ジェライス」「サン・パウロ」
前弩級戦艦:「フォーミダブル」「オーディシャス(旧)」
:「キング・エドワード7世」「モンターギュー」
巡洋戦艦:「インディファティガブル(旧)」「クイーン・メリー」
:「インヴィンシブル」
空母:「フューリアス」、「カレイジャス」「コロッサス」「オーシャン」
:「パイオニア」「シーシュース」「ヴェネラブル」
護衛空母:「パーシュアー」「ストライカー」「サーチャー」「レバイジャー」
:「アスリング」「エンペラー」「トランペッター」
重巡洋艦:「ロンドン」「サセックス」「シュロップシャー」「ヨーク」
軽巡洋艦:「ベルファスト」「エディンバラ」「ジャマイカ」「ケニア」
防空巡洋艦:「フィービ」「ハーマイオニー」「クレオパトラ」
駆逐艦 :24
●ドイツZ艦隊・第二群
戦艦 :「ティルピッツ」「ビスマルク」
巡洋戦艦:「デアフリンガー」「モルトケ」「ゲーベン」
装甲艦 :「アドミラル・シェーア」「アドミラル・グラーフ・シュペー」
:「アドミラル・ヒッパー」「リュッツオウ」
:「プリンツレゲント・ルイトポルト」「ケーニヒ・アルベルト」
空母(日本より貸与):「カール・マイヤー」「マックス・スチンスキー」
:「インメルマン」
軽巡洋艦:「マインツ」「マクデブルク」「ロストック」
駆逐艦 :12
水雷艇 :10
●アメリカ・第66任務部隊
戦艦 :「コネチカット」「カンザスⅡ」「ミネソタⅡ」「サウスカロライナⅡ」
空母 :「ボノム・リシャール」「カリブ(史実のレイテ)」「キアサージ」
護衛空母:「シャムロック・ベイ」「シップレイ・ベイ」「シットコー・ベイ」
:「スティーマー・ベイ」「アングィラ・ベイ」「セティス・ベイ」
重巡洋艦:「ニューオーリンズ「サンフランシスコ」「シカゴ」
:「インディアナポリス」「チェスター」「ルイビル」
軽巡洋艦:「リトルロック」「ガルベストン」「ヤングズタウン」
:「オークランド」「リノ」「フリント」
駆逐艦 :31
護衛駆逐艦:41
イギリス艦隊は、そのほとんどが、異世界帝国が再利用していた艦艇を鹵獲、改修した艦艇で構成されている。
旗艦である『ヴァンガード』、コロッサス級空母群を除けば、第一次大戦期の旧型が多く、去年のバミューダ諸島沖海戦――米本土防衛戦で、敵輸送船団の護衛についていたのを回収。日本海軍が改修を施した上で、イギリス海軍に譲渡された。
前弩級戦艦の『フォーミダブル』『オーディシャス(旧)』『キング・エドワード7世』『モンターギュー』や、巡洋戦艦『インディファティガブル(旧)』『クイーン・メリー』『インヴィンシブル』など、機関周りを多少交換した程度では、現在の主力艦艇と戦えるようなものではない。
だがそれでも運用される理由は、ずばり敵陸上施設への艦砲射撃を行うためである。上陸部隊への砲撃支援で、旧型も戦線に投入。本命であるブリテン島奪回作戦のための主力を温存するのであった。
ドイツ艦隊は、日本海軍と共に戦ったインド洋大決戦において沈められた艦を回収、再生してもらった上に、いくつか鹵獲艦艇をもらい、戦力を増強。こちらもまた主力を本命作戦に投入するため、分派した第二戦闘群を、アゾレス諸島攻撃作戦に投入した。
なお、第二群が運用する空母は、異世界帝国のアルクトス級中型高速空母で、その艦名は、今次大戦初期に、ドイツで建造されていた水上機母艦のものを流用している。
残るアメリカ海軍66任務部隊は、戦艦は日本からの貸与艦の復活艦。
空母は、魔核利用で早期に完成したエセックス級の新造艦。なにせ計画で32隻も建造が進められた艦である。完成を早められれば、空母に関していえば、自前のものでどうにでもなるのが、アメリカの底力だ。
その他は、新旧入り交じる編成となっている。
三カ国艦隊は、日本海軍の転移ゲート巡洋艦戦隊――鹵獲したキュクロス級を日本海軍仕様に改装したもの――を活用し、アゾレス諸島を急襲した。
口火を切ったのは、フォースH、そして第45任務部隊の空母群から、発艦した第一次攻撃隊である。
米軍は、F6Fヘルキャット、SB2Cヘルダイバー、TBFアヴェンジャーのいつもの機種に加え、新型のTBY-2シーウルフ雷撃機が新加入している。
コンソリデーテッドTBYはもとは、ヴォード社の開発していたTBUだったが、F4Uコルセアの生産に手一杯だったヴォード社に代わり、コンソリデーテッドが量産を担当した。
同じ雷撃機であるアヴェンジャーに比べ、翼を広げた幅はさらに大きく、重量も重いが、最高速度は492キロと、アヴェンジャーよりも50キロ以上早い。また航続距離も長かった。
ただ主翼の折り畳み機構が、グラマン社が採用しているようなものと違い、従来の形だったため、小型空母では運用しづらいという欠点もあり、評価については賛否が分かれる。
これら新型を加えたアメリカ海軍航空隊は、アゾレス諸島テルセイラ島の敵拠点とラジェス飛行場へ飛んだ。
イギリス海軍航空隊は、レンドリースされたヘルキャットⅡ、ターポン――アヴェンジャー雷撃機で構成され、サンタマリア島のサンタマリア飛行場を爆撃した。この飛行場は今次大戦初期、米軍が、イギリスの船団保護のために建築したものであったが、現状は、例によって、異世界帝国軍が占領し、基地としている。
飛行場からは待機していたヴォンヴィクス戦闘機が、垂直離着陸機能を活かして、即時に迎撃。米軍、もしくは英軍戦闘機と空中戦となった。
F6Fとヴォンヴィクス、双方の主力戦闘機同士の戦いは互角であり、12.7ミリの曳光弾に捉えられた機から墜落した。
その間に艦爆、爆装した艦上雷撃機が、基地施設とアヴラタワーを爆撃。アゾレス諸島の異世界帝国守備隊に大打撃を与えた。
そして上陸部隊を守る護衛部隊が、拠点のあるテルセイラ島とサンタマリア島に接近。戦艦部隊による艦砲射撃が実施された。