第八〇一話、連合艦隊、突撃す
前衛・第三群を壊滅させた日本艦隊は、29ノットの速力で突き進んでいた。
アメリカ艦隊と異世界帝国艦隊の針路上から、最短で追いつけるよう先回りするようなコースをとった日本艦隊は二つ。
山本 五十六大将が率いる前衛第一部隊と、宇垣 纏中将が指揮する前衛第二部隊である。
●前衛・第一部隊
・独立旗艦:「越前」
第三戦隊:「土佐」「天城」「紀伊」「尾張」
第四戦隊:「長門」「陸奥」「薩摩」
第七巡洋艦戦隊:「九重」「那須」「六甲」「蔵王」
第十一巡洋艦戦隊:「伊吹」「鞍馬」
第十二巡洋艦戦隊:「阿蘇」「笠置」「葛城」「身延」
第十五巡洋艦戦隊:「妙高」「那智」「足柄」「羽黒」
第十七巡洋艦戦隊:「最上」「三隈」「鈴谷」「熊野」
第二十七巡洋艦戦隊:「大沼」「神西」「尾瀬」「浜名」
第二十八巡洋艦戦隊:「不動」「宍道」「北竜」「網走」
・第一水雷戦隊:「青葉」
第七駆逐隊 :「曙」「潮」「不知火」「朝雲」
第十七駆逐隊 :「磯風」「浜風」「浦風」「雪風」
第二十一駆逐隊:「初霜」「若葉」「初春」「子日」
第二十七駆逐隊:「白露」「時雨」「村雨」「海風」
・第三水雷戦隊:「衣笠」
第四駆逐隊 :「野分」「萩風」「霞」
第十二駆逐隊 :「夕雲」「風雲」「長波」「高波」
第十五駆逐隊 :「朝靄」「夕靄」「雨靄」「薄靄」
第三十一駆逐隊:「巻波」「大波」
○前衛・第二部隊
第二戦隊:「大和」「武蔵」「信濃」
第七戦隊:「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」
第八戦隊:「出羽」「美作」
第十戦隊:「美濃」「和泉」「伊豆」「岩代」
第三巡洋艦戦隊:「道後」「霊山」「迫間」
第十三巡洋艦戦隊:「二上」「笠取」
第十六巡洋艦戦隊:「古鷹」「標津」
第十九巡洋艦戦隊:「葉山」「七面」
第二十三巡洋艦戦隊:「和賀」「白沢」「斉勝」「半田」
第二十四巡洋艦戦隊:「大又」「初沢」
・第二水雷戦隊:「川内」
第八駆逐隊 :「大潮」「満潮」「夏雲」
第九駆逐隊 :「浜雪」「風雪」「磯雪」
第十駆逐隊 :「谷雪」「川雪」「大雪」「峯雪」
第十六駆逐隊 :「妙風」「里風」「村風」「冬風」
・第四水雷戦隊:「神通」
第十一駆逐隊 :「敷波」「春雨」「漣」
第十八駆逐隊 :「海霧」「谷霧」「山霧」「大霧」
第十九駆逐隊 :「吹雪」「白雪」「初雪」「深雪」
第二十駆逐隊 :「黒潮」「初風」「天津風」
水上型と、潜水型の二つの隊に分かれ、反転してきた異世界帝国の主力艦隊を左右から挟撃するように突き進む。
米艦隊と撃ち合っていた敵主力のうち、日本艦隊に向かってきたのは、旗艦級を含む戦艦11、重巡洋艦5、軽巡洋艦15、駆逐艦15である。
「敵の総旗艦が、こちらに向かってきたようです」
連合艦隊旗艦『越前』。草鹿 龍之介連合艦隊参謀長は、泰然とした表情のまま告げた。山本 五十六大将は頷く。
今回初めて交戦することになる敵の大型戦艦――キーリア級。これまでの異世界帝国戦艦に比べて、趣の異なる軍艦だ。
全長は300メートルを超える大型戦艦だが、その胴体は寸胴、いやまるで小山のように艦橋が盛り上がる。船というより城塞を思わすそのスタイルは、戦艦が亀の甲羅を背負っていて、さらにそこから城塞がそびえているようでもあった。
塔状の艦橋司令部は重厚。見るからに旗艦設備が充実していそうであった。
「果たして、実力のほどはどうかな?」
異世界帝国艦隊は軽巡、駆逐艦部隊を前進させた。これに対して、第一部隊、第二部隊ともに大型巡洋艦を始め、重巡、軽巡戦隊が応戦する。
フランス旧式戦艦改装の第七巡洋艦戦隊の大型巡洋艦4隻、イタリア旧式戦艦が元の第三巡洋艦戦隊の道後型大巡3隻が、30.5センチ砲を撃ち込み、二方向からの攻撃で敵の突進を押しとどめる。
その間、敵旗艦と主力戦艦群は、その主砲を発砲した。狙いは、第二部隊であった。
「『大和』を旗艦と見たのか……?」
高田 利種首席参謀が呟く。現在の戦艦戦力で最大と言えば、大和型戦艦三隻の第二戦隊だ。他の戦艦より一回り大きく見えるその姿は、敵から見ても旗艦と思われたようだった。
「敵の注意が第二部隊に向いている間に、こちらも全力で砲撃を加えろ」
山本の指示を受けて、『越前』以下、『土佐』『天城』『紀伊』『尾張』『長門』『陸奥』『薩摩』が41センチ砲弾を連続して叩き込む。
また第二部隊でも、防御障壁を展開して、敵弾を弾きながら、次の弾着までのインターバルに、主砲による反撃を行う。
敵前衛・第三群がやった時間差での着弾。異世界帝国戦艦群の射撃の間隔が徐々に遅くなっていく。戦艦の数で圧倒する日本艦隊の砲撃は、オリクトⅡ級戦艦のシールドを削り、そして、貫いた。
すでに米戦艦との撃ち合いで、ある程度シールドが消耗していたこともある。さらに二部隊からの交差連続撃ちに正確な砲撃は、異世界人の盾を奪い、その艦体にダメージを与えていった。
11隻の戦艦も、次々に被弾による煙を上げていく中、総旗艦と思われるキーリア級は、大和型戦艦の集中砲火を受けていた。だがただ一隻、まったく障壁が揺らぐことなく、存在し続けた。