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第七三三話、イ号作戦、発動


『島に旗を立てた』


 その暗号は、軽空母『龍驤』、哨戒空母『潮瀬』で受信し、さらに内地へと飛ばされた。

 軍令部、海軍省はもちろん、イ号作戦のために待機している連合艦隊の元にも届いた。


 連合艦隊旗艦、航空戦艦『敷島』で、その時を待っていた山本 五十六連合艦隊司令長官は、目を見開くと、一同が待ち望んだ命令を発した。


「連合艦隊は、ただちに出撃。インド洋へ転移を開始する!」


 通信班は、ただちに第一艦隊、第一機動艦隊、第二機動艦隊、第六艦隊に出撃、転移命令を伝達する。


 第一艦隊は、戦艦16、空母6、重・軽巡洋艦19、防空巡8、転移巡4、駆逐艦24。他、海氷飛行場『日高見』、海氷空母『大海』『雲海』、甲型海氷空母4、特設潜水母艦2,潜水艦15で編成される。


 その戦艦群は、すべて異世界帝国からの鹵獲艦であるが、旗艦の『敷島』を除き、7隻が51センチ連装砲を搭載し、残る8隻もオリクト級改装の41センチ三連装砲で武装する。

 前者は、メギストス級3隻と改メギストス級4隻。後者は特殊砲撃艦として間に合わせていたものを、きちんと戦艦として改修したものとなる。


 この主力戦艦は、1950年までに整備予定だったマル五、マル六計画のそれに匹敵する規模と言える非常に強力なものだ。特に51センチ砲搭載戦艦は、敵の紫の艦隊の旗艦である超戦艦を数で圧倒し、いざ戦闘となった時の切り札であった。


 前衛であり、戦いの主力となる二つの機動艦隊は、第一機動艦隊が空母15、戦艦14、大型巡洋艦8、重巡16、軽巡5、防空巡12、転移巡4、駆逐艦48。第二機動艦隊が空母16、戦艦15、大型巡8、重巡16、軽巡11、転移巡4、駆逐艦48。


 そして第六艦隊には、68隻の艦隊型潜水艦があり、すべて防御障壁搭載などの改装を終えている。


 これらを主力とし、山本は、インド洋から東南アジアへ攻め寄せる異世界帝国艦隊を殲滅するつもりでいた。

 しかし、マダガスカル島から進出し、赤道を超えて迫る敵艦隊の規模は強大である。


 赤の艦隊と紫の艦隊、さらにどこからか補充を得た異世界帝国インド洋進撃艦隊は、戦艦51、空母40、軽空母80、航空巡洋艦80、重巡洋艦680、軽巡洋艦60、駆逐艦120、他輸送船600の大艦隊である。


 重巡洋艦の数が異常だが、これは大半の640隻がルベル・クルーザーであるため、実質は軽巡以上、重巡以下というところだ。だが砲撃であれば、駆逐艦などよりもパンチ力があるため侮れない。


 空母40の主力は高速中型空母であり、軽空母に至ってはルベル・クルーザー改装空母で、こちらは艦載機自体はさほど多くない。しかし直掩の無人戦闘機を射出する航空巡洋艦も80隻があり、その防空力は高い。


 いかに史上最強の連合艦隊といえど、その物量の前には弾薬を切らし、押し切られる未来が予想された。

 だが、持ち駒作戦により、『転移島』を一時的に確保したことが、物量差を埋める切り札となる。


 この持ち駒作戦を活かすため、下準備を行う艦隊があった。

 それは、インド洋とセイロン島を防衛する第七艦隊である。今回、異世界帝国は、セイロン島に対して、牽制などは仕掛けてこなかった。


 進撃の際は、邪魔されないようにいつも先制攻撃をかけた異世界帝国だが、攻撃すると見せかけてしないことにより、駐留艦隊をやきもきさせて、セイロン島から動けないようにする……という策でも考えたのかもしれない。


 あるいは小物扱い、眼中になしと言うこと可能性もある。ともかく敵が妨害してこないのをいいことに、第七艦隊はイ号作戦のために行動を開始していた。



●第七艦隊:司令長官、武本 権三郎中将


第十一戦隊:(戦艦):「扶桑」「山城」

第十二戦隊:(戦艦):「近江」「駿河」「常陸」「磐城」


第十三航空戦隊:(哨戒空母):「真鶴」「松帆」「立石」

第十七航空戦隊:(空母):「白龍」「赤龍」「翠龍」


第四巡洋艦戦隊  :(大型巡洋艦):「戸隠」「五竜」

第二十五巡洋艦戦隊:(軽巡洋艦):「鳴瀬」「新田」「成羽」「黒瀬」

第四十四巡洋艦戦隊:(特巡洋艦):「足尾」「八溝」「静浦」「春日」


第六十五巡洋艦戦隊:(転移巡洋艦):「来島」「根室」「滝波」「佐波」

第七十五戦隊   :(敷設艦):「津軽」「沖島」


第九水雷戦隊:(軽巡洋艦):「神流」「静間」

 第八十一駆逐隊:「初桜」「椎」「榎」「雄竹」

 第八十二駆逐隊:「初梅」「八重桜」「若桜」「篠竹」

 第八十三駆逐隊:「桂」「梓」「蓬」「白梅」

 第八十四駆逐隊:「榊」「早梅」「飛梅」「葵」

 第八十五駆逐隊:「藤」「山桜」「葦」「菱」

 第八十六駆逐隊:「葛」「栃」「菊」「矢竹」


第十三潜水戦隊(特設潜水母艦3):いくら丸、ろくろ丸、はくろ丸

 第六十潜水隊 :呂500、呂501、呂502、呂503、呂504、

         呂505、呂506、呂507、呂508

 第六十一潜水隊:呂509、呂510、呂511、呂512、呂513、

         呂514、呂515、呂516、呂517

 第六十二潜水隊:呂518、呂519、呂520、呂521、呂522、

         呂523、呂524、呂525、呂526



「やれやれ、忙しいことだ」


 第七艦隊司令長官、武本中将は、旗艦『扶桑』で、イ号作戦発動の命令を受け取った。


「準備はできとるか?」

「はい。各隊、配置に尽きつつあります」


 阿畑参謀長は答えた。

 第七艦隊は、元から配置されていた『扶桑』『山城』の他、四隻の潜水可能な戦艦が加わったが、今回の任務において、ほぼ戦隊単位の行動はとらない。


 それは他の艦種も同じであり、艦隊は部隊を六分割し、インド洋に展開していた。転移巡洋艦、空母をそれぞれ分け、戦艦、巡洋艦、駆逐艦も分散し護衛についている。

 転移巡洋艦は四隻しかないように見えるが、第七艦隊にはフランス軽巡、ラ・ガルソニエール級を改装したものが六隻配備されており、これらもそれぞれ転移中継装置を装備しているため、転移巡洋艦として活用することができた。


 異世界帝国艦隊は、スマトラ島を目指して航行しており、北に回ればマラッカ海峡、東に行けばスンダ海峡を通ることになるだろう。

 海峡の広さなどを考えれば、そこで大渋滞を起こすことになり、待ち伏せや襲撃も可能であるが、日本海軍はその手を取らない。その時点で、スマトラ島にある油田地帯が敵の空襲で完全破壊されてしまう恐れがあるからだ。


「資源を守りつつ、敵をインド洋上で仕留める」

「そのためのイ号作戦ですな」


 阿畑が頷けば、武本は相好を崩した。


「それでは、特殊誘導機を攻撃地点に向けろ。奴らが一番嫌がる場所にな」

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