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第七三一話、米太平洋艦隊、迎撃す


 転移島、サンディエゴに現れる。

 哨戒のカタリナ哨戒機が発見の報告を飛ばし、ただちに米太平洋艦隊司令部に届いた。太平洋艦隊司令長官、チェスター・ニミッツ大将は、臨戦態勢であった太平洋艦隊を出動させ、迎撃に向かわせた。


 近隣の基地航空隊による防空を命じると共に、陸軍航空隊に支援の要請を出した。海軍はもちろん、陸軍としても敵による西海岸上陸の可能性は、断固阻止する構えである。

 そして転移島出現の報告は、サンディエゴから発信された米海軍の通信を傍受した日本海軍籍の輸送船、その護衛の軽巡洋艦『香椎』によって、日本本土にも伝えられた。


 軍令部は、転移島捜索のためにアメリカ西海岸近くに移動していた第十五航空戦隊に、『持ち駒作戦』発動が指示。

 もっともサンディエゴに近い位置にいた哨戒空母『潮瀬』が、彩雲改二を飛ばし、転移島の近海に転移中継ブイを投下。

 内地で待機していた軽空母『龍驤』が、その飛行甲板に虚空特殊輸送機3機を載せて、転移した。


 またこれに合わせて、連合艦隊の主力である第一艦隊、第一機動艦隊、第二機動艦隊が出撃。転移連絡網を用いてインド洋へ出た。

 そしてセイロン島の守備を担う第七艦隊もまた、決戦支援のため出港した。

 日本海軍は、ハワイの敵を無視し、インド洋決戦『イ号作戦』を発動するのであった。



  ・  ・  ・



 アメリカ海軍太平洋艦隊司令部は、ハワイを電撃的に制圧された後、異世界帝国の次の動きは本土西海岸への攻撃であると予測していた。

 大西洋方面から東海岸に迫りつつある大艦隊への対抗のため、米軍は戦力を大西洋に集中したい。日本から提供された転移ゲートによって、パナマ運河を経由せずとも戦力の移動が可能となっている。


 この状況で、米海軍が一番嫌なのは、大西洋側と同時に太平洋側からも敵が攻撃してくることだった。

 太平洋は日本海軍が、異世界帝国軍を駆逐してくれたおかげで、戦線はだいぶ大人しくはなっている。しかし南米の南端から敵の有力艦隊が太平洋に出てくる可能性があるため、米軍は太平洋にそれなりの規模の戦力を展開せざるを得なかった。


 結果として、南米からは現れなかったが、謎の転移で移動する島によってハワイが陥落し、有力な敵が太平洋にも出現した。

 大西洋に、太平洋艦隊の主力を送るよう言われていた太平洋艦隊司令長官のニミッツ大将だったが、それをギリギリまで引き伸ばしていたことが、サンディエゴに襲来した敵への対抗する術を与えた。


 言われた通りに、さっさと太平洋艦隊を大西洋に転用していたら、今頃、無防備な西海岸に敵が攻撃を仕掛け、上陸していたかもしれない。

 現時点での、サンディエゴに集結していた太平洋艦隊の戦力は以下の通り。



●太平洋艦隊


戦艦:「ニュージャージー」「インディアナ」「ネブラスカ」「バーモント」

  :「コネチカット」「カンザス」「ミネソタ」「サウスカロライナ」

空母:「エセックス」「レキシントンⅡ」「エンタープライズⅡ」

   「スプリングフィールド」

軽空母:「ラングレーⅡ」「カウペンス」

重巡:「ボルチモア」「ボストン」「キャンベラ」「ウィチタ」


軽巡:「クリーブランド」「モントピリア」「デンバー」「ヴィックスバーグ」

  :「ダルース」「アストリア」「ウィルクスバリ」「デイトン」

  :「ブルックリン」「セントルイス」

防空巡:「アトランタ」「サンファン」「サンディエゴ」

駆逐艦:84



 戦艦8隻、正規空母4隻、軽空母2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦10隻、防空巡3、駆逐艦84隻という編成である。


 新鋭のアイオワ級『ニュージャージー』、サウスダコタ級『インディアナ』を除く6隻は、日本海軍からの貸与戦艦である。『ネブラスカ』、『バーモント』は以前よりあったが、続く4隻は、バックヤード作戦以後、レンドリースされたものとなる。


 南米侵攻作戦直後の戦艦不足に喘ぐ米海軍の求めで、戦力回復の繋ぎとして回されたのが16インチ砲連装四基八門の、改長門級――高速型コロラド級戦艦。これを4隻、太平洋艦隊に配属されていた。


 ちなみにこれら4隻は、元は米海軍の戦艦の改装であり、『コネチカット』は『相模』=『テネシー』、『カンザス』が『周防』=『カリフォルニア』、『ミネソタ』、『甲斐』=『ペンシルベニア』、『サウスカロライナ』が『越後』=『アリゾナ』となっている。


 空母、重巡洋艦に関しては、日米協同のハワイ作戦の頃と変わらないが、軽巡洋艦が、クリーブランド級の新造艦が5隻加わり、厚みを増している。


 一見すると、ハワイ作戦の頃と同等の戦力を有しているように見えるが、アメリカの工業力、造船力がフル稼働したことにより、新造艦艇が東海岸で次々に産声を上げていた。それらは次々に実戦配備されており、比較してしまうと太平洋艦隊は、やや劣っていると言わざるを得なかった。


 現在の太平洋艦隊、第五艦隊を指揮するのは、トーマス・カッシン・キンケイド中将である。

 旗艦である戦艦『ニュージャージー』に座乗するキンケイドは、太平洋艦隊司令長官であるニミッツから出撃を命じられたが、正直困惑していた。


「テレポーテーションでやってきた島なんて、どうしろというのだ? 島に艦砲射撃を見舞えばいいのか?」


 艦隊が相手ならまだしも、謎の技術で移動している島を相手にしようとしている提督は、世界広しと言えど、自分が初だろうとキンケイドは思う。


「提督、ミッチャー中将の『レキシントンⅡ』より通信。攻撃隊を発艦準備完了!」

「催促されているようで、不愉快だな」


 キンケイドは皮肉げに、通信参謀に返した。


「よろしい。やらせろ。例の円盤の相手も頼むと付け加えておけ」


 ホワイトハウスを破壊した、異世界帝国の空飛ぶ円盤アステール。米陸軍航空隊は、それを撃墜できなかったという。

 オアフ島は、その円盤によって壊滅したと聞く。方法は問わないが、何とか排除してもらわねば艦隊も返り討ちであろう。


「哨戒機より通信です! 敵の島にゲート反応あり。艦隊が出現!」


 敵艦隊――オアフ島でも、懐にまで踏み込んだ敵の島から大艦隊が現れたという報告がある。

 第五艦隊にも相手ができたと喜びたいところだが、おそらくそうは言っていられない規模なのだろうと、キンケイドは眉をひそめた。

 やがて、カタリナ哨戒機から、敵艦隊の詳細が通報される。


「鹵獲艦と思われる艦隊――戦艦級およそ80以上。超大型空母1を含む空母5。航空巡洋艦ないし航空戦艦12。巡洋艦6、駆逐艦およそ100を確認。ただし、その艦型について、多国籍のものかつ識別表になし――とこのことです」


 情報参謀の報告に、キンケイドは目を見開く。


「戦艦クラスが80以上、だと……!?」


 鹵獲艦と思われるということは、地球の艦ということだろうが、多国籍かつ識別表にない、とは果たして……。

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