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第六九〇話、三度(みたび)、マダガスカル


 連合艦隊は、インド洋海戦から2カ月を費やし、戦力の補充と再編、そして訓練を行っていた。

 八月中旬には作戦行動が開始できるよう、準備を進めていたが、ルベル世界からの艦隊出現や、異世界攻勢の噂など、事態の推移から、じっとしていられなくなる者が現れた。


 その最先鋒が、山口 多聞中将だった。

 彼曰く、戦力の再編は日本だけでなく、異世界帝国もまた同じ。赤の艦隊なるルベル艦隊のマダガスカル島近辺の出現は、その前兆であると危機感を募らせた。


「敵の戦力回復を待つことはありません。敵が動き出す前に叩き潰すべきです」


 連合艦隊司令部に対して、山口は早期の攻撃を訴えた。

 第二機動艦隊の中で再編が終わっている第二、第四、第六航空戦隊だけでもやらせてほしいと言えば、連合艦隊司令部の樋端航空参謀が尋ねる。


「マダガスカル島は、先にT艦隊が奇襲を仕掛けました。狙ったのは軍港一つですが、それで敵の警戒レベルは上がっていると思われます。遮蔽で姿を隠す二機艦の航空隊といえども、奇襲は難しいのではないでしょうか?」

「狙うのは港ではない。赤の艦隊だ」


 山口は、きっぱりと告げた。


「三百を超える赤の艦隊の艦艇を狙う。先日、T艦隊が撃沈し回収した敵の主力重巡を解析した結果、その防空能力は異世界帝国の他の艦に比べて低い傾向にあるのがわかっている」


 弱点があるならば、そこを狙うべきである。


「で、あれば、敵が本格的に動き出す前に、その数を減らしておくのが、後々のためになるだろう」


 ただでさえ数が多いのだ。いずれ衝突する時には、赤の艦隊以外の異世界帝国艦が加わっている可能性すらある。物量で押し負けないよう、先手を打つべきと山口は主張した。

 これに対して、山本 五十六長官は――


「僕も、マダガスカル島の敵は減らしておきたいと思っていた。よろしい、山口君、やってみたまえ」


 長官の許可は下りた。これが七月下旬のことだ。山口と第二機動艦隊、航空戦隊司令部は作戦計画を練るが、当然ながら第二機動艦隊のボスである、角田 覚治中将が黙っているはずもなかった。


「当然、我々も行くぞ」


 第二機動艦隊、水上・水中打撃部隊である、戦艦、巡洋艦部隊も加わり、二機艦の全力出撃となった。

 欧州に偵察部隊を上陸させるセ号作戦が実施された翌日の8月3日に、第二機動艦隊はセイロン島に転移で集結。8月4日を攻撃日とし、行動を開始した。



⚫第二機動艦隊:司令長官:角田 覚治中将 同航空戦隊司令:山口 多聞中将


第二航空戦隊:(空母):「大龍」「海龍」「剣龍」「瑞龍」

第四航空戦隊:(空母):「加賀」「応龍」「蛟竜」「神龍」

第六航空戦隊:(空母):「紅鳳」「神鳳」「星鳳」「雷鳳」

第八航空戦隊:(空母):「水龍」「幡龍」「白鳳」「蒼鳳」


第二戦隊:(戦艦):「大和」「武蔵」「信濃」

第八戦隊:(戦艦):「石見」「出羽」「美作」「丹後」

第九戦隊:(戦艦):「伊予」「淡路」「越前」「能登」

第十戦隊:(戦艦):「美濃」「和泉」「伊豆」「岩代」


第二巡洋艦戦隊:(大巡):「黒姫」「八海」「荒海」「摩周」

第三巡洋艦戦隊:(大巡):「道後」「高見」「霊山」「迫間」


第十三巡洋艦戦隊:(重巡):「二上」「斑尾」「農鳥」「笠取」

第十六巡洋艦戦隊:(重巡):「古鷹」「加古」「標津」「皆子」

第十九巡洋艦戦隊:(重巡):「阿寒」「葉山」「志賀」「三国」

第二十巡洋艦戦隊:(重巡):「飯縄」「多度」「七面」「玉置」


第二十三巡洋艦戦隊:(軽巡):「和賀」「白沢」「斉勝」「半田」

第二十四巡洋艦戦隊:(軽巡):「大又」「阿仁」「巴波」「初沢」


第二防空戦隊:(軽巡):「能代」

 第六十四駆逐隊:「清月」「大月」「葉月」「山月」

 第六十五駆逐隊:「浦月」「紅雲」「春雲」「八重雲」

 第六十七駆逐隊:「雪月」「沖月」「風月」「青月」

 第六十八駆逐隊:「天月」「海月」「白月」「浜月」


・第二水雷戦隊:(軽巡):「川内」

第八駆逐隊  :「大潮」「満潮」「荒潮」「夏雲」

第九駆逐隊  :「山雪」「浜雪」「風雪」「磯雪」

第十駆逐隊  :「谷雪」「川雪」「大雪」「峯雪」

第一六駆逐隊 :「妙風」「里風」「村風」「冬風」


・第四水雷戦隊:(軽巡):「神通」

第十一駆逐隊 :「敷波」「夕霧」「春雨」「漣」

第十九駆逐隊 :「吹雪」「白雪」「初雪」「深雪」

第十八駆逐隊 :「海霧」「谷霧」「山霧」「大霧」

第二十駆逐隊 :「黒潮」「早潮」「初風」「天津風」



 再編の結果、以前からの二機艦と第一〇艦隊を統合した形となった。

 空母16、戦艦15、大型巡洋艦8、重巡洋艦16、軽巡洋艦11、駆逐艦48からなる、堂々たる大艦隊である。もちろん、全艦艇が潜水行動が可能な、潜水型水上戦闘艦艇で構成されている。


 なお日本海軍では、艦艇数が飛躍的に増えた結果、戦隊にも変更が加えられ、従来の戦隊と、空母戦隊を表記する航空戦隊の他、巡洋艦戦隊が新たに加えられた。

 特に巡洋艦の数は、新たに分けねば戦隊番号を圧迫してしまうところまで増えていたのだ。


 それはさておき、空母に関しては、新たに改瑞龍型である白鳳型が加わっている。異世界帝国のアルクトス級中型空母の改装艦であり、艦載機数は瑞龍型と変わらない。

 しかし最新の転移格納庫、転移飛行甲板による艦載機の運用能力を飛躍的に向上させており、さらに新式の魔法防弾装甲を採用し、重量をほとんど変えず、装甲空母並の防御性能を獲得した。

 16隻の空母のうち6隻がこの新型の白鳳型となっている。


 また駆逐隊も新たにナンバーと編成替えが行われ、フランス大型駆逐艦など鹵獲改修した新型も加えられていた。


 閑話休題。

 セイロン島からマダガスカル島近辺の転移中継ブイを用いて移動した第二機動艦隊は、第七艦隊所属の哨戒空母の偵察情報に基づき、攻撃隊の発艦にかかった。


「目標! 敵艦艇!」


 第二航空戦隊旗艦である『大龍』の艦橋から、山口は命令を発した。

 飛行甲板に並べられた紫電改二、流星改二、彩雲改二がレールカタパルトによって滑るように発艦を開始する。


 機種転換は終わっており、二機艦にはかつての九九式戦闘爆撃機や、二式艦上攻撃機はない。搭乗員については半数以上が、無人コアの自動操縦ではあるが、それ以外は大半が二機艦で奇襲攻撃の経験を重ねた熟練者揃いである。


 かくて16隻の航空母艦から、432機の第一攻撃隊が飛び立った。途中、遮蔽で正面方向からの索敵を回避しつつ、マダガスカル島のすぐ東の海上にある赤の艦隊へ殺到したのである。

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