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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第六七五話、セ号作戦と陽動作戦


 イギリスを出た異世界帝国機動部隊が、ジブラルタルを通過する頃合いを見計らいビスゲー湾に偵察大隊を上陸させる。

 セ号作戦と名付けられたその作戦に投入される海上部隊の編成はすでに完了していた。



 ●上陸支援部隊


 特務艦:「鰤谷丸」

 潜水艦:ホ号潜水空母「鳳翔」

 大型巡洋艦:「妙義」

 駆逐艦:「湿雪」「春雪」「雨雪」



 大型巡洋艦『妙義』はインド洋での戦いで大きな被害を出し、修理と共に改装が加えられて戦列に復帰だが、第九艦隊預かりの艦なので、この作戦の護衛隊旗艦に据えられた。

 駆逐艦3隻は、フランスの大型駆逐艦シャカル級の改修艦であり、改夕雲型といった武装配置に、主砲は連装両用砲となっている。


 ちなみに現在、全艦が日本海軍で使用されており、残りの3隻は、T艦隊で運用されていた。


 そのT艦隊は、上陸に並行して、フランスのブレスト港を攻撃。さらに敵北海艦隊の拠点、ドイツ、ヴィルヘルムスハーフェン。そして北欧艦隊の拠点となっているノルウェー、トロンハイムフィヨルドも奇襲を仕掛ける計画を立てた。


 本命攻撃はブレストであり、残る二点は、欧州に展開する敵の注意を引くための攻撃となる。神出鬼没の攻撃を仕掛けることで、守備艦隊を現地から動けなくするのが目的だ。

 その一方、T艦隊参謀長の神明少将は、ジブラルタル海峡から地中海に向かう敵機動部隊にも、攻撃を仕掛ける案を、栗田 健男中将に提出。敵がすぐに大西洋に戻ってこられなくするため、と目的を告げれば、栗田は「参謀長に任せるよ」と許可を出した。


 早速、神明は、計画のための準備にかかった。

 まずは、九頭島の魔技研に飛び、転移光線を照射する装置を重爆撃機に載せるように頼んだ研究チームのもとを訪ねた。

 円盤兵器撃退用に作らせたのだが、マ式収納庫と装置のサイズ合わせが上手くいかず、必要な時に間に合わなかった。

 ちなみにその案は、あれから完成したのかと聞いてみれば、まだ手間取っていて、別部門に回したという答えが返ってきた。


「今は、超戦艦の再生改修作業の監督をやっているんですよ」


 という研究者に、神明は片方の眉を吊り上げた。


「監督なら、一人いればいいだろう。空いている一人か二人。ちょっとしたものをすぐにこしらえてもらいたいから、手を貸してくれ」

「ほいほい、神明さんがまた何か面白いものを思いついたんですね?」


 嬉々として研究者二人がついてきた。好奇心が旺盛な変わり者グループを選んで、神明は作業をふるのである。


「遮蔽装置搭載の封鎖突破船があったな?」

「武装突破船ですな?」


 物資を運ぶ輸送船でありながら、仮装巡洋艦のように武装。光線砲を装備して、立ち塞がる敵艦を吹き飛ばし、強化されたマ式機関による高速航行で突っ切る――というコンセプトで、沈没貨客船を再生させるついでに大改装したものがある。

 これに遮蔽装置も搭載され、護衛なしで、補給活動ができる……はずだったのだが、転移連絡網が整備された今、想定されていた頃より出番がないのでは、と魔技研の試験船として使われていた。


「こいつに出番が?」

「ちょっと改造してもらう。可及的速やかに」

「また急ぎの仕事ですか……」


 二人の研究者は顔を見合わせた。普通の手段での作業となれば、準備や資材を揃えても数日からの作業となる。

 もちろん、魔技研では、研究者にも能力者がいて、彼らは魔核の力を借りることで、圧倒的に短い時間で工事を終えることができる。


「で、どこを改造するんです?」

「光線砲を、転移照射装置に載せ換える」


 重爆に無理やり載せるのと違い、船ならばスペースの問題をある程度解決できる。

 先日の重爆撃機に載せる場合、転移照射装置だけでなく、転移ビームを撃つためのエネルギー供給装置を積まないといけなかった。だがスペースの都合上、その両方を載せることができなかった。

 その問題自体は、重爆から光線砲を使うのと同じ、エネルギー装填式することで、1回しか使えないが使用可能とした。


 しかし今回、船に載せるわけなので、スペースの問題は、限界はあれど解決できる。


「ちなみに確認ですが、転移照射装置は、光線砲と同様の装填式ですか? それとも倉庫を潰してエネルギータンクを設置しますか?」


 前者であれば、砲と装置を載せ換えるだけで、工事は最小限で済む。しかし後者であるなら、それだけ作業の手間は増える。


「もちろん、エネルギータンクを積む」


 神明はきっぱりと告げた。


「使い捨てにするつもりはない。複数回の使用が可能なようにするんだ」

「承知しました」


 研究者は首肯した。

 この改造は、軍令部第二部長の黒島 亀人少将と話していた時に、神明の脳裏に過った案、それを具現化するものであった。

 敵の戦力を減らし、あわよくばこちらで利用する。今回の敵機動部隊の艦艇は、元々はイギリスで建造されていたものだ。異世界帝国の手から取り戻してやれば、少々の恩を売ることにもなるかもしれない。


 封鎖突破船の改造指示を出した後、神明は転移装置で、インド洋はセイロン島の第七艦隊司令部へ飛んだ。


「貸しの取り立てか?」


 武本 権三郎中将は、皮肉げに神明を迎えた。ベンガル湾の残党撃滅の際、第七艦隊はT艦隊に助っ人を頼んだ。そこで作った貸しを返す時が来たのだ。


「七十五戦隊をお借りしたい」


 神明の言うそれは、敷設艦『津軽』と『沖島』であった。一度撃沈され、潜水機能を持った機雷敷設艦として再生されたこの2隻を使って、ジブラルタル海峡に機雷をバラまこうというのである。


「今、そこを通過するのは異世界帝国しかありませんし、彼らもジブラルタル海峡の利用のために徹底的に掃海するでしょう」


 あくまで数日、最低でも一日二日足止めできるだけで充分である。


「その2隻だけでいいのか?」


 武本は問うた。


「何なら、一個潜水駆逐隊くらい、回すぞ?」


 第七艦隊に所属する第九水雷戦隊の初桜型潜水駆逐艦は、誘導機雷を装備しており、敷設作業も行える。


「いいんですか?」

「まあ、こっちもまた、いつお前たちに助っ人を頼むとも限らないからな」


 マダガスカル島の敵が動けば、セイロン島の第七艦隊もまた立ち向かわねばならない。紫の艦隊の他、多数のルベル艦隊が出てくるなら、内地から援軍が必要となる。また貸しを作ることになるなら、せめて借りを返せる時に目いっぱい返そうと言うのである。

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