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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第五八七話、転移ゲート輸送部隊


 伊藤 整一軍令部次長は、永野軍令部総長に転移ゲート輸送の件を持っていった。

 転移ゲートの二つ目の提供の話は、海軍省、そして海軍大臣である嶋田大将にも行ったが、実際にどうするかは討議を重ねることとなった。


 が、その間に、二つの輸送計画自体は裁可が下りた。実際、どちらに、あるいは両方で転移ゲートを運ぶかは、ギリギリまでわからないが、最低1セットは輸送するので、もう片方は敵をまどわすダミープランとして活用できると考えられ、準備が進められた。


 海上ルートにおける戦力は、当初は駆逐艦4隻のみであったが、神明はこれに九頭島の戦力を加えて、増強することにした。

 第九艦隊ならびに九頭島戦力は、軍令部の管轄なので、永野総長が『よし』と言えば、引き抜きも可能だった。


「敵となるのは、今のところ潜水艦のみだ」


 故に、対潜警戒・迎撃部隊としての艦艇の選抜となる。輸送艦1隻を守るのに、戦艦や大型巡洋艦はいらない。

 そして選ばれた戦力は以下の通り。



○転移ゲート輸送部隊


 空母:「龍驤」

 軽巡洋艦:「鈴鹿」

 駆逐艦:「柳」「椿」「檜」「橘」

 海防艦:「島浦」「小浜」

 潜水艦:「マ-1」

 輸送艦:「九頭竜丸」



 軽空母『龍驤』は、潜水機能を備え、さらに転移中継装置を搭載している。必要とあれば搭載機数以上の航空戦力発進基地となる。今回の任務は、対潜警戒と上空直掩となる。


 軽巡洋艦『鈴鹿』は、日露戦争で沈んだ『アドミラル・ウシャコフ』と、『見島』の資材を用いて合成改修された艦で、基準排水量8900トン、全長174メートル、全幅16メートルと阿賀野型に近い艦体を持つ。

 主砲は14センチ連装自動砲三基六門、12.7センチ単装高角砲四門と、軽武装ではあるが、対潜短魚雷投下機を二基搭載し、対空、対艦、対潜戦闘とマルチにこなすことが可能だ。


 これまで、第九艦隊の水雷戦隊旗艦として、数々の戦闘を経験している歴戦艦である。

 松型駆逐艦は、第一次世界大戦後にスカパフローで自沈したドイツ駆逐艦の改修艦であり、こちらも対空・対潜戦闘に対応している。


 そして海防艦の2隻であるが、今の日本海軍の海防艦の多数を形成する鹵獲駆逐艦ではなかったりする。


『島浦』は、清国海軍の防護巡洋艦『済遠(さいえん)』だ。日清戦争後、日本に編入されたが、日露戦争で触雷して沈没。これを魔技研が回収し、大改装、復活した。

 基準排水量2350トン。全長75メートル、全幅10.5メートルと、駆逐艦としても排水量はともかく、全長が短い。機関をマ式に換装し4万馬力、最高速度30ノットを発揮する。武装は12.7センチ連装高角砲二基四門のほか、対潜短魚雷投下機を装備している。


 一方の『小浜』は、広乙級防護巡洋艦『広丙』であり、済遠同様、日清戦争後、戦利艦として日本が使用していたが、任務中に座礁ののち沈没した過去を持つ。その後、魔技研が回収し、復活。排水量1000トンと、済遠よりさらに軽い。全長80メートル、全幅8.3メートル。機関出力4万馬力、速度は36ノットと高速だ。武装は12.7センチ単装高角砲二門のほか、対潜短魚雷投下機を積んでいる。


『島浦』と『小浜』は、九頭島海域の対潜部隊として活動していたが、今回の作戦のために引き抜かれた。


 そして輸送部隊に加わった潜水艦は、マ-1号潜水艦。全ての始まりであり、異世界に飛ばされ、そして戻ってきた防護巡洋艦『畝傍(うねび)』の生まれ変わりだ。


 異世界技術を取り込み、潜水艦に改装されたマ-1号だが、さすがに第一次世界大戦頃に現役だった潜水艦は、今次大戦では戦闘任務はなかった。大戦初期から沈没艦回収隊の所属として活用されていたが、より新型の回収艦が就役することで、お役御免。


 昨年、新技術を用いた試験艦として近代化改装を受けて、さらなる大改装で三度蘇ったのである。

 艦首の形状こそ、かつての面影はあれど、もはやかつては機帆船だったとは思えないほど外観は変わっている。潜水艦としても、これまでの伊号潜水艦とは異なる雰囲気をかもし出していた。


 ほぼ新造艦といってもよいその性能は、機関出力の倍化により速度も格段に向上。現在のマ式潜水艦の新鋭艦にも匹敵した。

 かくて、転移ゲート輸送部隊は、1隻の輸送艦を守るために、空母1、軽巡洋艦1、駆逐艦4、海防艦2、潜水艦1が投入されたのだった。



  ・  ・  ・



 輸送部隊は、九頭島の第九艦隊からの増援を受けて、転移でカリブ海はパナマ近海まで移動した。


 最先任ということで、指揮は神明が執ることになっていた。本来は、オブザーバーとして輸送艦と共にアメリカへ行くはずだったのが、輸送計画にがっつり関わったことで、増強された輸送部隊の指揮官を務めることになったのだ。

 神明は旗艦を『龍驤』に定めた。

 艦長の足鹿 禎史大佐は、神明を迎える。


「よろしくお願いします、司令」

「急な呼び出しで済まないな。この通り身一つなものでな。参謀もいないから君にも手伝ってもらう」

「はっ」


 輸送部隊の増援に空きがあった『龍驤』を指名したのは、神明である。潜水型小型空母にして、魔技研の新技術を優先的に装備し、半ば試験艦に片足を突っ込んでいる『龍驤』である。

 足鹿も、九頭島と魔技研に対してそれなりの付き合いとなるため、そこでの神明の評判についても知っていた。


「この艦の役割は多い」


 神明は海図台に向かう。カリブ海を中心に北米と南米の一部の地図を見下ろす。


「我々の現在位置はここ」


 指さしたのは、パナマ運河より北におよそ50キロの地点。


「針路を北東に向け、ジャマイカ島の東を抜ける。そこからキューバとハイチの間、ウインドワード海峡を越えて、カイコス諸島を通過。大西洋を北上し、アメリカはノーフォークを目指す」

「カリブ海は大小アンティル諸島もあって島が非常に多いですな」


 足鹿は思案顔になった。


「敵は潜水艦だということですが、どこを抜けようとしても敵が待ち伏せしていそうです」

「いるな」


 神明は断言した。


「敵は、南米侵攻中のアメリカ軍を妨害したい。先の大潜水艦隊による一撃離脱だけで済ませるはずがない。あの大量投入の裏で、さらに多数の潜水艦が、アンティル諸島の島々の間を抜けて侵入している」


 それを我々は抜けていかねばならないのだ――

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