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第五八一話、艦艇レンドリース案


 南米派遣艦隊から、入れ替わりで内地に帰還した。その数、戦艦2、空母1、巡洋艦15、駆逐艦16である。



 第二戦隊:(戦艦):「大和」「信濃」

 機動艦隊旗艦:(空母):「赤城」

 第二十八戦隊:(特殊巡洋艦》:「那珂」「鬼怒」「球磨」「多摩」

 第八十四戦隊:(特務巡洋艦):「足尾」「八溝」「静浦」「春日」

 第六十四戦隊:(転移巡洋艦):「豊予」「本渡」「大隅」

 第八十三戦隊:(転移巡洋艦):「夕張」「青島」「矢矧」


・第五水雷戦隊:軽巡洋艦「名取」

  第五駆逐隊  :「朝風」「春風」「松風」「旗風」

  第十四駆逐隊 :「楓」「欅」「柿」「樺」

  第四十二駆逐隊:「竹」「梅」「桃」「松」

  第四十三駆逐隊:「桑」「桐」「榧」「杉」



 米軍が矢面に立ち、日本艦隊は側面から奇襲攻撃ができたこともあって、沈没艦はなしで戻ることができた。

 艦の補修や改修作業、あるいは日本でしか受けられない武器の補給もあって戻ったこれらは、それぞれ鎮守府や軍港に入ることになる。

 第一機動艦隊の再編の面倒を見ることになる小沢中将は、神明参謀長と共に、連合艦隊旗艦『敷島』に赴き、一連の戦闘について山本 五十六連合艦隊司令長官に報告した。


「ご苦労だった。敵さんもカリブ海艦隊を失い、確認できる範囲で有力な水上艦艇は、南米や大西洋では確認されていない」

「しかし、アメリカも大西洋艦隊が軒並みやられて、懐事情は厳しいようです」


 小沢は、渋い顔をした。


「古賀さんの艦隊も、当面向こうで動けないんじゃないですか?」


 かつてない規模に膨れ上がった日本海軍といえど、今はどこも連戦による消耗からの回復にかかっている。

 主力となる第一、第二機動艦隊はもちろん、地方警備を担う第七、第八艦隊が壊滅的打撃を受け、そちらも再編にかからねばならない状況である。


 現状、敵が有力な艦隊を差し向けてくれば、日本海軍とて余裕はあまりない。南米派遣艦隊など、さっさと内地に撤収させ、艦隊再編に注力すべき――というのが、小沢の本音である。


「そのこともあって、我が国には、アメリカに、パナマ運河の代替となる転移ゲートの提供と……後は回収した敵艦を再生したものを、希望する同盟国に貸与する計画を立てている」

「それは――」


 一瞬、言葉に詰まる小沢である。山本は頷いた。


「うむ、あちらさんの言葉で言うところのレンドリースというやつだ」


 艦艇のレンドリース――武器貸与。これまで日本海軍が回収した沈没艦艇は、現在持て余すほどの大量の在庫を抱えている。

 異世界人もまた、撃沈艦艇をサルベージし、自軍戦力に加えているから、たとえ余っていようとも回収をやめることはできず、拾った沈没艦の数は凄まじいことになっている。


「こちらで使えればいいのだが、残念ながら人員もなければ弾薬にも余裕がないのでな。それならば、いま戦艦や空母を必要としているアメリカに、まとめて10隻ずつ渡してもよい。それでもなお余っているのだから」


 ここ最近では、一つの海戦で、戦艦、空母が30、40隻とぶつかっており、それを(ことごと)く撃沈しているから、10隻と聞いても、たった10隻と感覚がおかしくなってくる。


 小沢も神明も、艦艇のレンドリースと聞いても、反対の言葉は出なかった。

 一昔前ならば、誰もが嫌な顔をしていただろうが、連合艦隊の現状を鑑みれば、どうせ腐らせるなら、味方に委ねて共に戦ってもらったほうがいいという考えが、今では普通になっている。


 日本だけで世界が救えるとか、異世界人との戦いに勝てるなどと思ってはいないこと。何より開戦以降、多くの将兵を失ったことなど、その考え方にも変化があるのだ。


「すでに英国には同盟に基づいて、艦艇の提供などを始めているが、アメリカに対しては技術交換や艦艇のレンドリースについて追々話が進んでいくと思う。我々、連合艦隊は、その間に再編と練兵で、敵との次の戦いに備える。……その前に敵が仕掛けてくれば、否応もないがね」


 山本は静かに笑った。


「それで、だ。神明君、君が立てていたT計画を、今のうちに進めておく。ついては発案者である君にも、そちらに協力してもらうことになるからそのつもりでいてくれ」

「承知しました」


 世界の海に転移連絡網を。転移移動で、世界中の海に移動できるよう、余裕のあるうちに計画を進める――それが連合艦隊司令部と軍令部の共通認識であった。



  ・  ・  ・



 ムンドゥス帝国の地球征服の橋頭堡ティポタ。

 地球征服軍長官、サタナス元帥は、南米戦線の戦況を確認し、冷ややかな笑みを浮かべた。


「また日本軍だ」

「かの国は、とうとう大西洋方面にも進出してきましたな」


 仙人のような風貌のマティス征服軍参謀総長が、その長い髭を撫でた。


「アメリカ軍の大西洋艦隊を、我がカリブ海艦隊が叩いたものの、代わりに日本軍がいて、制海権を維持しております」

「南米展開の陸軍は、苦戦しているようだな」

「もともと南米は広大な反面、人の手が入っていない場所も多く、見た目ほど戦力があるわけではありません。一度攻撃されれば、案外脆かった」

「多少の時間稼ぎはできよう。本国からも、引き続き戦力が届いている」


 サタナスは言ったものの、マティスの表情は曇ったままである。


「しかし、戦線が広すぎて、展開戦力は現地の残存戦力が中心でありますれば……」


 太平洋艦隊、大西洋艦隊、東洋艦隊、インド洋艦隊、南海艦隊、そしてカリブ海艦隊と現在、かつての規模とはほど遠い。


「海軍だけではございません。陸軍もまた、南米で押され、ユーラシアでも大陸侵攻軍が総崩れです」


 満州の手前まで攻め込まれていた日本軍が、大陸侵攻軍の物資枯渇を待って猛反撃に出て、一気に押し返している。

 かつて欧州で行われた電撃戦さながら、日本陸軍はあっという間に西へ突き進んでいるのだ。


「ユーラシアの広大さをみれば、日本軍もいずれ攻勢限界に達するだろうよ。それはそれとして、南米戦線だ。アメリカは上陸した軍のために、補給物資をカリブ海経由で送っておる」

「はっ。すでに潜水艦を集中し、補給ルート破壊と日米軍の消耗を図るべく、行動を開始している頃合いかと」

「例の新式潜水艦だな」


 サタナス長官は、ニヤリと笑った。


「吉報を期待しよう」

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