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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第五七五話、会敵! 米第6艦隊 対 異世界帝国カリブ海艦隊


 日本海軍の南米派遣艦隊・カリブ海進出艦隊は、現在、二手に分かれてカリブ海の東部まで移動していた。

 白鯨号による転移中継ブイの海上投下によって、大幅に時間と距離を詰めての進撃である。


 旗艦である航空戦艦『出雲』では、古賀 峯一大将が、第七九二海軍航空隊の報告、さらに白鯨号の転移中継装置で移動してきた偵察機の情報をもとに、各艦隊の位置を確認していた。


「――異世界帝国艦隊は、空母の大半を喪失し、現在、米上陸船団めがけて進撃しております」


 南米派遣艦隊参謀長である原 鼎三(ていぞう)少将は、海図台を指し示した。

 海軍兵学校41期、海大24期と、連合艦隊参謀長の草鹿 龍之介中将と同期である。水雷屋であるが、通信関係も携わり、欧米各国への出張も経験。軍令部時代は第三部、英欧担当の第八課と第四部第九課、通信担当の課長を務めた。

 かと思えば重巡洋艦『利根』の艤装員長からの初代艦長、そして戦艦『山城』の艦長を経験している。


「この敵の動きに対して、米第6艦隊は、空母を喪失しておりますが、艦隊戦を仕掛けるべく、突撃しております」

「お互いに空母なしか」


 敵艦隊には、一応2隻空母が残存しているが、この艦載機数では、大きなことはできないだろう。

 船団には米護衛空母群がいて、戦闘機で迎撃。第6艦隊に差し向ければ、戦艦1、2隻を脱落させることはできるかもしれない。が、艦隊を撃滅するには、おそらく不足であろう。


「敵艦隊にとっては漸減の意味はないでしょう」


 原は告げた。


「戦艦20、巡洋艦が25隻もあります。米第6艦隊に半分を振り向けたとしても、おつりがきます」

「つまり、敵は残る空母の艦載機は、攻撃ではなく、防御のために用いると見るべきか」


 古賀は頷いた。


「しかし、よくも2隻にまで減らしたものだ」

「まったくです」


 第七九二海軍航空隊の火山重爆撃機の光線砲攻撃は、敵艦隊の虚を衝き、空母18隻を撃沈または大破、戦闘不能とした。


「神明少将の具申だったが、こうも綺麗に片付いてしまうとは……」


 敵空母の三分の一、よくて半分程度削れればよい、という気持ちで了承した古賀だったが、その戦果は過大ではないかと疑いたくなるほどの大成功であった。


「すわ恐ろしいほど、上手くいきましたな」


 原の言葉に高田首席参謀らも頷く。


「おかげで、こちらの航空戦力に余裕ができました」


 こちら側に連れてきた空母は、囮上等の海氷空母4隻である。小沢中将率いる7隻の空母は、太平洋側で米海兵隊の支援と警備を行っていた。


「あとは、艦隊決戦で、敵艦隊を撃滅するのみ」


 古賀は眦を決した。

 米大西洋艦隊の支援にきたとはいえ、これから迎え撃つ異世界帝国艦隊は、日米双方の艦隊を合わせたより強力だ。

 数の差で負けているので、ここからは性能と戦術で補っていくしかないのだ。



  ・  ・  ・



 アーサー・カーペンダー中将の第6艦隊の接近に対して、ムンドゥス帝国カリブ海艦隊のモリンスィ中将は、戦艦10、重巡洋艦5、軽巡洋艦10、駆逐艦40を差し向けた。

 その戦艦は、オリクト級で統一され、40.6センチ砲搭載艦である。アメリカ海軍の新鋭戦艦相手にも性能で互角、数で圧倒する腹づもりだ。


 残る10隻は、ヴラフォス級であり、主砲は34.3センチ砲と、現代の戦艦のレベルを考えるとパンチ力不足だが、船団とそれを護衛する艦艇を叩くには充分な火力だ。あわよくば、米軍上陸地点への艦砲射撃を見舞う。


 船団攻撃部隊に戦艦10、巡洋艦10、駆逐艦30を進ませ、モリンスィ中将は、米第6艦隊を迎え撃つ。


『米艦隊接近! 戦艦4、巡洋艦9、駆逐艦、およそ80!』

「戦艦戦隊、目標、敵戦艦! 先頭から敵戦艦1隻に対して2隻で当たる!」


 10隻中、8隻でアメリカ戦艦を撃ち、残る2隻は敵巡洋艦を攻撃する。巡洋艦戦隊15隻で、敵巡洋艦を早々に撃破し、数の多い敵駆逐艦に備える。


「用心せよ。敵の駆逐艦の数が多いぞ」


 倍近い駆逐艦の数の差が、さすがのモリンスィにも警戒心を抱かせる。こちらの迎撃を躱し、砲撃戦の最中に雷撃戦を仕掛けてくるに違いない。

 ここが空母の切り所だ――モリンスィは判断した。


「敵に航空機はない。空母に残る攻撃機隊に出撃命令。敵駆逐艦が突撃してきた場合、これを叩け」


 わずか2隻の空母の艦載機でも、装甲がない駆逐艦には脅威である。それで手数をカバーする。



  ・  ・  ・



「敵艦隊、面舵。戦力を二分させました。戦艦10を中心とする艦隊で、こちらを迎撃する模様!」

「面舵。敵戦艦と同航戦を取る!」


 米第6艦隊司令長官、カーペンダー中将は命じた。

 戦艦『アイオワ』を先頭に、『ウィスコンシン』『マサチューセッツ』『アラバマ』が波を切って続く。


「4対10ですな」

「駆逐艦戦隊のために時間を稼がねばな」


 遠距離砲戦である。真面目に得意レンジでの殴り合いをすれば、数の差で押し切られる。命中精度の粗くなる遠距離での撃ち合いで、時間を稼ぎ、あわよくば敵が弾を使い果たして撤退――ドローでも、こちらの勝ちだとカーペンダーは心の中で呟く。


 巡洋艦部隊が戦艦戦隊より前に出て、敵巡洋艦を牽制する動きを見せる中、米駆逐艦戦隊が、快速を飛ばして艦隊の前や後ろへ回り込む機動を見せる。駆逐艦80隻は、伊達ではない。


『目標、敵1番艦、射撃準備よし』

「観測機が出せない分、射撃レーダーが頼りだぞ。――射撃開始(ファイア)!」


 アイオワ級戦艦の50口径40.6センチ三連装砲が火を噴いた。


 サウスダコタ級の45口径40.6センチ砲――16インチ45口径砲Mk-6の長砲身・改良型の16インチ50口径砲Mk-7が、アイオワ級の主砲である。


 砲弾こそサウスダコタ級や前級のノースカロライナ級と同じもので、重量1225キロだが、長砲身化に伴う高初速により風の影響を受けにくくなったことで、散布界の縮小、射程距離が伸びた。


 遠距離砲戦ともなれば、後続の『マサチューセッツ』『アラバマ』にはやや不利ではあるが、『アイオワ』『ウィスコンシン』にとっては、そう悪いものではない。

 敵は、こちらと同じ16インチ砲を装備するオリクト級戦艦。従来の型ならば、45口径砲であるから、アイオワ級が若干の有利に戦える――はずだった。


「敵戦艦、発砲!」


 敵――カリブ海艦隊の戦艦群が、一斉にその主砲を放ち、砲口から噴き上げた黒煙が後ろへと流れた。

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