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第五七二話、大西洋艦隊、防空戦闘


 南米派遣艦隊は、その戦力を割いて、カリブ海にそれを送ることになった。


 その戦力の選定の前に、神明は第九航空艦隊の火山重爆撃機隊――第七九二海軍航空隊の出撃を提案。さらに同爆撃機の白鯨号を今のうちに飛ばして、転移中継ブイの設置を急がせた。

 指示を出してから、増援の派遣となるが、その前に古賀は確認する。


「まず、送れるのは、我が艦隊のみということでいいな?」

「はい。米軍の艦艇は転移装置を持っていませんし、間違っても機密の塊を彼らの艦艇に載せるわけにもいきません」


 スプルーアンス大将の提案するところの、日本艦隊のみの救援ということだ。



●南米派遣艦隊・カリブ海進出艦隊


 総旗艦:(航空戦艦):「出雲」

 第二戦隊:(戦艦):「大和」「信濃」

 第八戦隊:(戦艦):「石見」「出羽」「美作」「丹後」


 第三十一航空戦隊:(海氷空母):「海豹4」「海豹5」「海豹6」

 第三十三航空戦隊:(特海氷空母):「雲海」


 第十三戦隊 :(大型巡洋艦):「道後」「高見」「霊山」「迫間」

 第二十八戦隊:(特殊巡洋艦》:「那珂」「鬼怒」「球磨」「多摩」

 第八十四戦隊:(特務巡洋艦):「足尾」「八溝」「静浦」「春日」

 第六十二戦隊:(転移巡洋艦):「宮古」「釣島」


・第五水雷戦隊:軽巡洋艦「名取」

  第五駆逐隊  :「朝風」「春風」「松風」「旗風」

  第十四駆逐隊 :「楓」「欅」「柿」「樺」

  第四十二駆逐隊:「竹」「梅」「桃」「松」

  第四十三駆逐隊:「桑」「桐」「榧」「杉」



 航空戦艦1、戦艦6、海氷空母4、大型巡洋艦4、巡洋艦11、駆逐艦16。それがカリブ海へ進出する。

 空母は海氷空母のみで、戦艦と大型巡洋艦は潜水航行も可能な艦が揃っている。

 さすがに太平洋側の上陸部隊の支援をガラ空きにするわけにもいかないので、空母部隊のほか、戦艦6隻、そして防空艦を中心とした部隊を残す。


「転移巡洋艦がいますから――」


 神明は告げる。


「いざとなれば、太平洋側の戦艦6隻や、第六艦隊の潜水艦、『諏方』など特殊な戦艦なども呼ぶことが可能です」


 状況に応じて、臨機応変に。


「特に『諏方』『石動』『高見』があれば、数の劣勢も埋められましょう」

「敵艦隊は戦艦20に空母20……」


 古賀は唸る。


「米大西洋艦隊と合わせるてもまだ不足。南米派遣艦隊全てを投じて、ようやく互角か?」

「我々が駆けつける前に、大西洋艦隊がやられてしまっている可能性は高いと思います」


 一応、米軍も質はともかく防御障壁を実用化しているようだが、さすがに空母20隻の航空隊の猛爆を受けて、無事に済むとは思えない。特に空母はやられ、制空権を奪われているだろう。


「まともな勝負はできないでしょうから、最初から数はあてにしない方がよろしいかと」


 悪く言えば、米大西洋艦隊を囮に、敵艦隊の側面、背後を襲い葬る――それくらいの気分で行ったほうがよい。……もちろん、スプルーアンス大将をはじめ、米海軍将兵の前では、口が裂けても言えないが。



  ・  ・  ・



 神明の予想は当たっていた。

 ムンドゥス帝国カリブ海増強艦隊は、米大西洋艦隊を捕捉すると、20隻の空母のうち15隻のアルクトス級高速空母から、攻撃隊を発艦させた。

 日本艦隊と違い、転移で逃げたりしないため、躊躇がなかった。

 カリブ海増強艦隊司令長官、モリンスィ中将は檄を飛ばす。


「敵は空母5隻! 我が方の4分の1程度だ。叩き潰すのだ! 1隻残らず、徹底的にな!」


 アルクトス級空母から、540機の攻撃隊が出撃した。これでまだ半分以上を残している。


 しかし米軍のエセックス級空母は艦載機を100機、インディペンデンス級で最大45機なので、5隻の合計、その最大値で390機となる。

 カリブ海増強艦隊の第一次攻撃隊だけで、米艦隊の艦載機を上回ってしまうのである。


 レーダーピケットに出している駆逐艦からの通報で、敵攻撃隊を捉えた大西洋艦隊こと第6艦隊は、ただちに各空母から戦闘機を迎撃に出した。

 F6Fヘルキャット戦闘機、およそ120機が、各空母の戦闘機隊に分かれて、敵攻撃隊を待ち受け……そして襲いかかった。


 2000馬力エンジンを唸らせて飛び込むネイビーブルーの戦闘機。ズングリとした見た目ながら最高時速600キロを超える速度は、異世界帝国の戦闘機に比べると低速ではあるが、頑丈さと連携で、何とか渡り合う。

 12.7ミリ機関銃が火を噴き、ヴォンヴィクス戦闘機やエントマ高速戦闘機を背面から撃ち落とす。


 かと思えば、数の多さから様々な方向から飛び込んでくる敵機の機銃や光弾砲を食らい、四散するヘルキャット。

 米戦闘機の迎撃を抜けて、ミガ攻撃機が第6艦隊に迫る。


 対空輪形陣を形成する第6艦隊は、ただちに所定の対空セクターに入った敵機に対して弾幕を展開した。


 艦載の38口径5インチ両用砲が、毎分12から15発で発砲。VT近接信管の仕込まれた艦対空砲弾は、直撃しなくても近距離の敵機を感知し爆発。その破片を敵機へと浴びせる。


 VT信管は、従来の時限信管の高角砲弾より格段に命中率が向上した――と言われるが、元々の命中率の低さを考えると、数倍アップしたとて、それでバタバタと敵機が落とせるようなものでもない。


 長距離での迎撃をくぐり抜けた敵攻撃機には、40ミリ対空機関砲が中距離でお出迎えである。そして近距離で20ミリ機銃が激しく火を噴くが、その頃にはすでにミガ攻撃機も魚雷やロケット弾、光弾砲を撃ち込んでいて、米艦艇にダメージを与えていく。

 それでも少なからずミガ攻撃機も、胴体を撃ち抜かれて爆発、あるいはバランスを崩して海面に激突して果てた。


 護衛のフレッチャー級駆逐艦が損傷し脱落。その隙間から、空母部隊に突き進むミガ攻撃機。放たれた魚雷が、空母『バンカーヒル』に直撃し、大きな水柱を突き立てた。


 しかしエセックス級の舷側の最も外側は、水防区画ではなく、重油タンクであり、魚雷の一本や二本が当たった程度では、海水と重油が入れ替わるくらいで、致命傷ではない。もしタンク区画が破られても、そこに水防区画があるため、エセックス級は空母にしては雷撃に対して中々の防御性能を誇る。


 しかし、異世界帝国攻撃機は、数に物を言わせて肉薄。多数のロケット弾が飛行甲板や、開放式格納庫のシャッターを破壊し、両用砲や機銃座を吹き飛ばした。


 死闘である。アメリカ戦艦、巡洋艦の対空砲火に構わず、飛び込み、そして打撃を与えていく異世界帝国攻撃隊。

 大西洋艦隊は、その空母戦力を確実に削られていった。

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