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第五六二話、バックヤード作戦の開始


「大西洋艦隊の攻撃は遅れる……?」


 アメリカ合衆国サンディエゴ、太平洋艦隊司令部で、チェスター・ニミッツ大将は、情報参謀からの報告に思わず声に出た。


「今日、攻撃だぞ? いまさら中止にしろと?」

「いいえ、大西洋艦隊とベネズエラ上陸部隊は、攻撃を1日延期するとのことで、中央からの指示では、太平洋艦隊と海兵隊は、予定通りパナマならびにコロンビア上陸を開始せよ、とのことです」

「こちらは先に動けということか」


 ニミッツの呟きに、マクモリス参謀長は口元を歪めた。


「太平洋側で騒ぎを起こして、敵の目をこちらに陽動させる手、とも言えますな」

「……異世界人も、我が軍が大攻勢を仕掛けることはわかりきっているだろうからな」


 敵の偵察機や潜水艦は、太平洋艦隊、そして大西洋艦隊が大船団を伴い出撃しているのを知っている。当然、異世界帝国の南米大陸軍も、地球勢力の侵攻に備えているだろう。さらに日本海軍も来ていれば、馬鹿でも攻撃があるとわかる。

 要するに、バックヤード作戦は完全奇襲とはいかない。攻撃が約束されている中の出撃なので、かならず強襲となる。


「ベネズエラ上陸のDディは、明日にズレこんだが、こちらは予定通り行動開始だ」


 ニミッツは告げた。


「スプルーアンス大将と、日本のゴガ提督に連絡。ターナーとホランド・スミスにも上陸船団指揮を命令」

「イエス・サー」


 太平洋艦隊司令部も、にわかに忙しくなる。長い一日が始まる予感を、ひしひしとニミッツは感じ取っていた。



  ・  ・  ・



 アメリカ海軍第3艦隊は、パナマ南方にあって、すでに配置についていた。

 第3艦隊の指揮官は、ハワイ攻略作戦を指揮したレイモンド・A・スプルーアンス大将である。


 その海上艦隊である第38任務部隊の指揮官は、マーク・ミッチャー中将であり、三つの主力戦闘群と、一つの護衛戦闘群、そして上陸船団を守る護衛群があった。



●第3艦隊:司令長官、レイモンド・A・スプルーアンス大将


○第38任務部隊:指揮官、マーク・ミッチャー中将


・第一群

 空母:「ヨークタウンⅡ」「イントレピッド」「カボット」

 戦艦:「ニュージャージー」

 重巡:「ボルチモア」「ボストン」「キャンベラ」

 軽巡:「サンディエゴ」

 駆逐艦:22


・第二群

 空母:「エセックス」「レキシントンⅡ」「ラングレーⅡ」

 戦艦:「インディアナ」

 重巡:「ウィチタ」

 軽巡:「アトランタ」「サンファン」

 駆逐艦:21


・第三群

 空母:「エンタープライズⅡ」「スプリングフィールド」「カウペンス」

 戦艦:「バーモント」「ネブラスカ」

 軽巡:「クリーブランド」「モントピリア」「デンバー」

 駆逐艦:18


・第四群

 空母:「ウェーク・アイランド」「ホワイト・プレーンズ」「ソロモンズ」

   :「カリーニン・ベイ」「カサーン・ベイ」「ファンショー・ベイ」

 軽巡:「ブルックリン」「セントルイス」

 駆逐艦:23



 他、護衛空母、護衛駆逐艦による輸送船団が二群あり、一つはパナマ、残る一つは、南米コロンビア西部チョコ県に上陸する海兵隊を乗せている。


 太平洋艦隊司令部からのGOサインが出て、スプルーアンス大将は、ただちに艦隊に命令を出した。

 第38任務部隊の主力はパナマへ、古賀大将の日本海軍南米派遣艦隊はコロンビアへその舳先を向けた。

 指示を受けたミッチャー中将は、空母群に攻撃隊の出撃命令を出した。


「まずは制空権を完全に支配する!」


 旗艦『イントレピッド』の艦橋から、艦載機が発艦する。轟々と1800馬力から2000馬力エンジンを唸らせて、TBFアヴェンジャー雷撃機、SB2Cヘルダイバー急降下爆撃機、F6Fヘルキャット戦闘機が飛び立つ。


「攻撃目標は、ハワード・フィールドとその補助基地デビッド・フィールド。チャメ飛行場、フォート・シャーマン。これらの息の根を止めてこい!」


 元はパナマに米軍が開拓し作り上げた飛行場だったり基地だったりするが、今そこは異世界帝国軍が使用している。

 米本土からの定期爆撃に加え、米海軍の空母機動部隊によるヒットエンドラン攻撃を受けて、半壊しているところもあるが、今回は牽制ではなく、パナマ奪回の本格侵攻作戦である。


「飛行場が使えなければ、あとは港を押さえることで、パナマの敵は孤立する」


 ミッチャーが言えば、作戦参謀は頷いた。

 北米大陸と南米大陸は、地図で見る限り、一見繋がっているように見えるが、実のところ陸路での移動は困難で、まして軍隊はほぼ通れない。


 それというのも、ダリエン地峡という未開拓地域が存在するからだ。多数の沼地と熱帯雨林、危険な生物の存在は侵入者を拒み、まともな道がないために、通行するだけでも命がけとなる。

 かつて道路で繋げようと考えた者もいたが、地形を切り開いて舗装するのに必要な莫大なコストと地形によって断念された。


 故に、陸で繋がっているものの、こと陸路での補給ルートは存在せず、南米からパナマへ増援なり物資を運ぶとなると、空輸か海上輸送に限定されるのである。


 そんなパナマに対して、アメリカ海軍は攻撃を開始する。そして占領する部隊は、輸送船に乗り込んだ海兵師団である。

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