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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第五四〇話、臨時編成部隊


「相変わらず、面白い男だよ、神明君は」


 山本 五十六大将は思わず相好を崩すのである。

 アメリカ軍を支援するバックヤード作戦の会議の場に呼んだら、カルカッタ救援の話し合いにも参加することになった第一機動艦隊参謀長の神明少将である。


「マリアナへの奇襲のために、戦力を借りたいと言ってきた時のことを思い出す」


 あの時は、フィリピン作戦にも投入しようがない低速軽空母の春日丸と八幡丸――『大鷹』と『雲鷹』、そして『鳳翔』だった。


 今回、カルカッタ近傍の敵ゲートの破壊のために投入する戦力の候補を神明に選定させたところ、彼はリストを作り上げた。



《臨時編成部隊・候補》

 軽空母:「龍驤」「大鷹」「雲鷹」「冲鷹」

 潜水空母:「鳳翔」「伊400」

 大型巡洋艦:「早池峰」

 転移巡洋艦:「夕張」「青島」「豊予」「本渡」「大隅」

 軽巡洋艦:「名取」

 駆逐艦:「島風」ほか、潜行機能付きの2個駆逐隊


 航空隊:第九航空艦隊 ほか、必要に応じて機動艦隊航空隊

     白鯨号乃至、転移中継装置付き重爆撃機



「聞かせてくれるかな、神明君」


 山本の想像からすると、いささか数が多い。しかしその内容を見ると、数の割に戦闘力に疑問がつく。

 その構成は、再編が必要な主力級ではないものばかりで、内容次第では全て揃えることができそうな気もした。

 神明は、ゲート攻撃部隊とそれに基づく作戦案を説明した。


「敵のゲートの守りは強固なものでしょう。ソロモン作戦のゲート破壊時、そしてインド洋作戦で、敵は小型戦闘機を大量に投入し、こちらの航空攻撃に対して守りを固めています」


 特にシドニー沖でゲートを破壊されたことで、異世界帝国側も、ゲートを狙われることを想定しているだろう。


「そこで転移中継ブイを用いて、ベンガル湾に艦隊を転移させます。敵もこちらが空母機動部隊を進ませているとあれば、迎撃しないわけにもいきませんから、注意を引きます。その間に、『鳳翔』『伊400』が別途進出し、ゲート攻撃隊を出し、これを叩きます」

「囮と本命」


 山本が呟くと、草鹿参謀長は言った。


「転移巡洋艦が5隻いるのは、囮艦隊に敵の攻撃隊が向かってきた時のためか?」


『夕張』と『青島』は第九艦隊所属だった。そして『豊代』『本渡』『大隅』は、最近就役し、前線配備直前の浦賀型転移巡洋艦の七、八、九番艦である。


「はい。編成は対潜警戒には強い潜行機能付きですから、防空能力はあまりありませんし、軽空母群も防御障壁頼りで、狙われればそこまで強くありませんから」

「白鯨号や転移装置付き重爆は?」

「本命である潜水空母群の転移先を作るための転移ブイの輸送。そして万が一、天候や海上の状況で攻撃隊を空母から出せない場合の、予備です」

「予備……」

「今回の作戦は、早期にゲートを排除しなくてはなりませんし、失敗は許されない状況と言えます」


 神明の言葉を受けて、山本は静かに頷いた。


「樋端、この作戦、どう思う?」

「これ以上の策はないかと」


 どこに焦点が合っているかわからない目で樋端は答えた。呆けたような顔をしている時、彼の頭脳は最大限に働いている。


「可及的速やかに行動しなくてはならない状況で、考えうる最善手と思います」


 そうだ。これは時間との勝負だ。敵はカルカッタに転移ゲートを置いた。時間が経てばその分だけ敵は増える。

 うむ、と山本は首肯した。そこへ侍従長が入室、頭を下げた。


「長官。軍令部より伊藤軍令部次長が参られました」

「おう」


 このタイミングでの軍令部次長の来訪。もちろん予定にはない。十中八九、カルカッタの件であろう。



  ・  ・  ・



 予想通り、伊藤 整一軍令部次長が連合艦隊司令部を訪れた理由は、カルカッタの異世界帝国軍の件だった。


「ただちに連合艦隊は出撃が可能でしょうか?」


 陸軍に言われるまでもなく、海軍省、軍令部もまたカルカッタ奪回は、緊急を要する重要案件である。

 現在の連合艦隊の状況はもちろん把握しているが、それでも問わねばならなかった。無茶を承知しての質問だが、連合艦隊司令長官である山本は、待ってましたとばかりに、神明がまとめたメモを手渡した。


「これだけの戦力が使えるなら、速やかに反撃行動に出る。もちろん、一挙に敵を撃滅するには準備に時間がかかるが、ゲートを破壊し敵の補給を断ち、孤立させる作戦は実行可能だ」

「すでに、用意されていましたか」


 伊藤はメモを受け取り、ちら、と部屋の片隅の参謀たち――その中に神明がいることを目ざとく気づいた。見覚えのある筆跡だったから、もしやと思ったが、それを理解すれば軍令部次長の返事は早かった。


「わかりました。こちらで手配が必要なものはすぐに準備させます」

「よろしく頼む」

「はい、いえ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 軍令部と連合艦隊の連携は早かった。

 時間の都合で、案としたものがそのまま通ってしまった感は否めない。しかし神明が要求した戦力は、ほぼ全て、臨時編成部隊として組み込まれることになった。


 そしてその混成部隊を誰が指揮するか、という人選になるが、前第九艦隊司令長官、新堂 儀一中将が指名された。


「やれやれ、俺は待命で、予備役に片足を突っ込んでいたんだぞ」


 第九艦隊の指揮官として前線にあったが、敵超戦艦ギガーコスを取り逃がした件、第八艦隊と連携しての敵輸送船団攻撃の最中、敵の奇襲によって被害を出したことで、その指揮能力を問題視する外野の声が強く、待機を命じられていたのだ。

 いわゆる予備役5秒前、というものである。


「主な司令官が、皆、休養で留守だったんですよ」


 神明は、やってきた新堂に告げた。大きな海戦が連続し、休養が必要なのは兵ばかりではないということだ。


「参謀は、私と樋端が務めます。まあ、臨時部隊なので勘弁してください」

「言い出しっぺの貴様が仕切るのが早いと思うんだがな。俺が呼ばれたのもハンモックナンバーだろう、どうせ」

「よくご存じで」


 神明はあけすけだった。それが許されるほどの関係はある。

 日本海軍には、年次の最先任が指揮官となるのが伝統。自分よりハンモックナンバーが上の者には命令できない、というのが決まりがあるのだ。


 そのルールを律儀に守ると、神明が臨時部隊を指揮するために、より上の者が何人も別職に回したり、予備役に放り込まなくてはいけなくなる。人数不足の海軍にそんな贅沢な人事をしている余裕はないのだ。

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