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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第五十三話、英国艦艇の扱いについて


 日本海軍によるセレター軍港襲撃の顛末は、大本営にとっても格好の宣伝材料となった。


『無敵皇軍、異世界帝国の心臓に一突き!』

『海軍、トラック沖の雪辱を果たせり!』

『我が挺身艦隊、敵地軍港より、囚われの英艦隊を救出!!』


 新聞はこぞってセレター軍港襲撃と、それに続く南シナ海での海戦の勝利を書き立てた。大本営も、トラック沖での敗北や劣勢の仏印での戦いで停滞していた国民の士気昂揚に繋がると積極的に喧伝した。


『敵戦艦2隻、空母2隻、甲巡2隻ほか、撃沈! 我が方の被害、なし!』


 海軍軍令部、定例の会議。永野軍令部総長、伊藤軍令部次長のもと、福留第一部長、鈴木第二部長、前田第三部長、金子第四部長、そして第五部長の土岐が集まっている。


「国民の士気は、よいほうに向かっているようだね、前田君」

「はい、総長」


 前田は、大本営の海軍報道部長もやっているので、こと宣伝内容にも通じている。


「第九艦隊は、困難な任務を果たし、無事帰還しました。戦果もさることながら、損害がほぼない完全勝利。正直、出来過ぎですね」

「おう、それそれ」


 福留は手元の報告書に目を落とす。


「目的の英国戦艦群を持ち帰っただけでも驚きなのに、途中、異世界帝国の艦隊と交戦して、これを撃滅。こんなの予想できたか?」

「できなかった」


 鈴木も眉をひそめる。


「航空機に若干の損失はあるが、こんなもの損害のうちに入らない。艦艇もほぼ無傷だ。魔法装備というのは、ここまで一方的なものなのか?」

「結果が全てだろう」


 その魔技研を統括する立場にある土岐は、唇を曲げた。


「それにこの報告書は、第一課の人間が書いているものだ。おれの身内がホラを吹いているわけじゃないぞ」


 福留は特に渋い顔になった。


 報告書は第九艦隊からも上がっているが、この場には、作戦に同行した軍令部第一課員の神重徳大佐のものが、特に注目されていた。


 魔技研に関係のない人間から見た、魔法装備の性能についての報告を彼らは重視している。何故なら、ここにいる者の大半が、神大佐と同じ目線の立場にあったからだ。


「まあ、端的にいえば、ベタ褒めだ」


 福留は複雑な顔である。


「神大佐曰く、海軍は全面的に魔技研の装備を導入すべし、とある。すっかり神明大佐に感化されてしまったようで、戻ってから資料の熟読と、魔法装備を用いた作戦案の検討に没頭している」

「実際、ほぼ無傷だったからな」


 鈴木は頭をかいた。


「それでもって、敵東洋艦隊の一部隊を全滅させている。神大佐の報告でなければ、戦果を盛ったんじゃないかと疑うくらいに」


 誰もが、帰ってこれるだけ上出来だろうと思われた作戦を、第九艦隊は完遂した。しかも色々と想定外の戦果を引っさげて。


 前田は苦笑した。


「報道部長として言うのも何ですが、大本営でも言われましたからね。『これ本当?』って」


 大本営にまで疑われた。これには皆も苦笑するしかなかった。


「ともあれ、第九艦隊は、英国の戦艦群を持ち帰り、さらにフィリピンに来ていた米艦隊も助けた」


 伊藤軍令部次長が言うと、永野総長も頷いた。


「アメリカさんに、貸しができたかな?」

「マッカーサーという将軍は、米国でも人気があるようですからね」


 伊藤は資料を手にとった。


「日本がドイツ、イタリアと同盟を組んで以降、米国との関係は悪化しましたが、あの国と日本が今、戦争になっていないのは異世界帝国という敵がいたから。……その辺り、どうなのか、前田部長?」

「米国民の日本への関心は低いです」


 米大陸情報を担当する第五課。それを抱える第三部長の前田は答えた。


「次長のおっしゃる通り、米国は異世界帝国と戦っていますから、日本に関する心象操作は、以前よりもかなり薄れています。今回のマッカーサー将軍の救出支援は、あの将軍が帰国すれば、触れないわけにもいかないでしょうから、対日感情の回復も見込めます」

「横須賀での修理も、融通をきかせるように」


 永野は言ったが、福留と鈴木は一瞬目を合わせた。


 横須賀の海軍ドックでは、第110号艦――大和型戦艦三番艦が建造中である。それを同盟国でもないアメリカ海軍に見られるリスクを冒していいものかどうか。


 それでなくても、現在、トラック沖海戦での損傷艦艇の修理などで、資材や人員も動員されているところである。ここで米空母の応急修理のためとはいえ、場所も資材も人も提供するのは……。


「聞けば、アメリカの太平洋艦隊の空母は、あの『サラトガ』1隻しかないというじゃないか。この借りは大きくなると思うんだよね」


 永野は続けた。


「いっそ、英国が、セレターからの回収品を日本に譲渡するなら、それをアメリカさんに提供してもいいかもしれない……」

「総長、それは――」


 これには、一同ビックリした。福留は背筋を伸ばす。


「お言葉ですが、総長。いくら拾いモノとはいえ、米国に渡すのはどうかと……。旧式のR級ならともかく、ネルソン級は16インチ砲搭載の戦艦です。使えるのなら、我が海軍で運用すべきでは?」

「そうはいうけどね。戦艦が増えても、油がなければ動かないじゃないか」


 永野は言った。


「アメリカさんは、その工業力をフルに活用して戦力を整えるだろう。しかしそれまでの時間稼ぎのための戦力が不足している。別にネルソン級でなくてもよい。R級の2隻でも、その時間稼ぎのためでもあれば、あちらさんも助かるんじゃないかね?」

「その引き換えに、アメリカから石油を?」


 伊藤が言えば、永野は相好を崩した。


「実際、連合艦隊は再編で手一杯。各地の修理施設も、順番待ちで、とてもイギリスさんの戦艦を弄っている暇もないんじゃないかな?」

「あー、その件なんですが、よろしいですか?」


 第五部長の土岐が発言した。


「まだイギリスさんの反応が確定していない状況で、その活用云々は時期尚早かとは思いますが、イギリス戦艦の改修作業は、九頭島ドックでやらせていただければ、おそらく半年以内に、連合艦隊に引き渡しが可能になると思います」


 これに対して、鈴木が、またかという顔をした。


「先日、九頭島のドックには、大破した『大和』と『伊勢』他、重巡洋艦が入渠したばかりじゃないか。そんな余裕があるのか?」

「浮きドックでも使うさ。何より、奪取した英国戦艦群には魔核が積まれている。あれを利用するなら、むしろ魔技研のほうが早い」


 もちろん――と、土岐は永野を見た。


「イギリスが、回収艦艇を日本に譲渡して、それをアメリカに分けると決まったなら、それに従うまでですが」


 永野は肩をすくめた。土岐は新たな資料を場に出した。


「うちの神明から、回収艦艇をどう改装するか、魔技研の案をまとめてあります。よろしければご確認を」

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