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第五二五話、セイロン島沖夜戦


 甲艦隊こと、オーストラリア方面艦隊の戦艦を襲った日本海軍艦艇は、複縦陣の間、つまり艦隊のほぼ中央に潜んでいた。


 戦艦『諏方』と、駆逐艦『島風』である。

 転移巡洋艦『志発』によって、敵艦隊の近くに転移した2隻は、遮蔽装置で姿を消して、甲艦隊の間に忍び込み、艦隊中央へ移動。そして時が来た時、攻撃を開始した。


「敵は、障壁を外側に向けている。狙うなら今だ!」


 前島『諏方』艦長の指示を受けて、50口径40.6センチ光弾三連装砲四基十二門が、敵オリクト級戦艦に指向する。魔核を制御する正木 妙子の手により、敵から見えない状態で、射撃準備を整える。


『よーいよし!』


 前島大佐は、宮里司令に視線を向ける。『大和』初代艦長だった宮里は首肯した。


「撃ち方、始め!」

「撃ちー方、始め!」


 十二門、その三倍の光弾が放たれる。防御障壁があれば軽減されたそれも、異世界帝国軍の新式障壁の影響で、全弾が命中してしまう。

 攻撃を想定していない方向は防御せず、エネルギーを節約する新型シールドが、仇となった。複縦陣の間という、本来なら攻撃されない位置からの発砲だった。

 結果は、一撃でオリクト級戦艦は大破、戦闘力を喪失した。


「次の攻撃目標へ!」


 洋上のスクラップには目もくれず、遮蔽で隠れている奇襲効果を活用する。異世界帝国からの回収艦、透明戦艦アルパガスの本領を発揮するのだ。

 戦艦『諏方』が、敵戦艦群の間から、左列を攻撃し始めた時、駆逐艦『島風』もまた、右列の戦艦群へ攻撃態勢に入っていた。


「敵四番艦に光線砲1番、2番。同五番艦に、魚雷全門発射!」


 上井 宏駆逐艦長の命令受け、『島風』は攻撃を開始した。

 本来三基あった魚雷発射管のうち、1番、3番発射管をイ型三連装光線砲に変更。2番発射管は、新型の六連装魚雷発射管となっている。


 二基の光線砲が1門ずつ、真っ白な光線を、敵戦艦に放つ。防御障壁がなく、ガラ空きの敵艦左舷に光線が刻まれ、次の瞬間、爆発する。

 しかし重巡洋艦や空母を一撃撃破できる光線砲も、戦艦の重装甲を相手では単発では撃沈には足りない。1発目の光線が切れると、間髪を入れず2発の光線を発射。

 そしてその間に魚雷発射管が、後続の戦艦めがけて放たれる。六本の魚雷が撃ち終わった時、光線砲の連続射撃を受けた5万トン級のオリクト級戦艦が爆沈した。


『敵戦艦1隻、撃沈!』

「ようし。機関一杯! 砲撃される前に位置変更!」


 遮蔽装置で姿を消している『島風』である。しかし、幾ら船体が見えずとも、光線砲の光は闇夜にはっきり目立っただろう。

 副砲なり高角砲なりで狙われれば、装甲のない駆逐艦では、あっという間に蜂の巣だ。何せ、敵の懐に飛び込んでいる状況だから、距離も近い。見えないからと油断していると、敵が適当に撃ち込んだまぐれ弾にやられる恐れもあった。


『島風』は、敵戦艦との併走をやめ、40ノット強の高速力を発揮して移動する。


「もう1隻やれるか?」


 上井は口の中で呟く。魚雷は全部発射した。『島風』には次発装填装置はない。光線砲は2発ずつ使ったから、残りは1発ずつ。戦艦相手には大破できても撃沈は難しい。

 残るは主砲だが、12.7センチ連装両用砲だから、豆鉄砲もいいところだ。


「こうなれば、転移艦としての役割を全うするか」


 転移中継装置を『島風』は搭載している。対大型艦用武装は残り少ないが、味方を導く役割は、まだ果たせる。


『「諏訪」、敵戦艦、撃沈!』


 一緒に敵中央へ乗り込んだ戦艦は、奇襲戦艦としてなおも攻撃を続行している。その継戦能力は、さすが戦艦だ。


「そろそろ、外側も大騒ぎになる頃だ」


 上井は時計を確認した。艦隊中央で、わずか2隻の殴り込みでは、そのまま袋叩きが落ちだが、さらに別の攻撃が始まれば、それどころではなくなる。

 そして、第二の攻撃は始まった。



  ・  ・  ・


 

 転移巡洋艦『根室』によって移動してきた第一〇艦隊の特殊砲撃艦16隻が、甲艦隊の右舷方向から、熱線砲を発射した。

 戦艦型8隻、軽巡洋艦型8隻の熱線は、遮蔽装備の日本艦艇の攻撃に浮き足立ち、陣形を変更しようとしていた矢先に届いた。


 外周に向けてシールドを張っていた巡洋艦以上の艦は、盾の消滅と引き換えにやり過ごせたが、駆逐艦はそうはいかず、5隻が即時轟沈した。


 特殊砲撃艦は、熱線砲で消費したエネルギーの回復のために潜行して一時離脱。代わりに第二艦隊が転移によって現れ、熱線砲で掻き乱した一帯に突撃を敢行した。


 戦力評価乙。戦闘一回はこなせるだろう弾薬を残している判定の第二艦隊は、熱線砲を逃れた異世界帝国巡洋艦や、駆逐艦の残党に砲撃を開始する。

 栗田中将率いる第二艦隊は、金剛型戦艦4、雲仙型大型巡洋艦4のほか、重巡洋艦8,軽巡洋艦4、駆逐艦10という戦力だが、対巡洋艦戦力と考えた場合、強力であり、障壁を失った敵巡洋艦に致命的な打撃を与え、損傷させていく。


 甲艦隊の巡洋艦部隊が、第二艦隊に殴り込まれ、苦戦する中、戦艦群はようやくもたつきから回復しはじめていた。

 一度は外周を睨んでいた主砲も、内側に敵がいるとなり、砲門の向きを変えていたら、外側から日本艦隊の出現。またも向きを変えていたら、さらなる日本軍の増援が現れる。


 戦力評価乙に分類されている第一艦隊と、第一〇艦隊の戦艦6隻である。

 第一艦隊、原 忠一中将は命令を発した。


「目標、敵戦艦! 第一戦隊は敵1番艦! 残る戦艦は2番艦を狙え!」


 第一艦隊の戦艦は、『遠江』『播磨』『土佐』『天城』『尾張』『陸奥』『薩摩』『飛騨』『相模』『越後』『安芸』『甲斐』の12隻である。

 評価乙であり、砲弾残数の残り少ない戦艦群だが、原の命令は、51センチ砲戦艦2隻で戦艦1隻、41センチ砲戦艦10隻で別の戦艦1隻を仕留めるというものだった。


「障壁があろうとも、数当たれば破れる!」


 統制砲撃、同一目標への集中射撃。


『第一〇艦隊は、敵戦艦3番艦へ砲撃を集中するとのこと』


 古賀大将の第一〇艦隊、戦艦『伊予』『淡路』『越前』『能登』『伊豆』『岩代』は41センチ三連装砲五十四門で、敵戦艦1隻を狙う。如何に防御障壁あろうとも、これらが全弾命中しようものなら、ひとたまりもない。


 そして戦艦部隊による集中射撃が始まった。能力者による砲術命中補助により、格段に命中精度が増した砲撃は、標的となって異世界帝国戦艦を覆い隠すほどのシールドへの着弾と水柱を発生させ、盾を砕くのである。


 狙われた3隻のオリクト級戦艦が戦闘不能、あるいは撃沈されるのはすぐだった。一対一であったなら、シールドを失うまでに砲弾を使わされただろうが、一対複数であれば、少ない砲撃回数で、シールドを削り取れる。砲弾数が少なくなった戦艦でも有効に戦える戦術だ。


 甲艦隊の右半分が、戦力評価乙の艦隊によって蹂躙されている頃、左半分の部隊は、反撃に移ろうとしていた。

『島風』の襲撃で、戦艦2隻が脱落したものの、6隻が健在であり、巡洋艦、駆逐艦部隊は残っているのだ。

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