第五〇一話、二つの奇襲攻撃隊
異世界帝国インド洋艦隊が赤道を越えた。逃げも隠れもしない堂々たる進撃である。
セイロン島に刻々と近づいてくる敵の大艦隊に対して、連合艦隊は着々と迎撃態勢を整えていた。
主力戦闘群は、インド洋艦隊に真っ向から挑むかのように進軍を開始。奇襲攻撃群もまたそれぞれ配置につく。
時に1944年5月3日。インド洋海戦の幕が上がる。
潜水艦と彩雲偵察機からの報告により、敵の位置は掴めていた。まず先鋒は、第二機動艦隊と第七艦隊の奇襲攻撃隊による先制攻撃である。
定石通り、まずは敵の制空権を奪取すべく、空母を叩く。
○第二機動艦隊:司令長官、角田覚治中将
第二戦隊(戦艦):「大和」「武蔵」「信濃」
第八戦隊(戦艦):「近江」「駿河」「常陸」「磐城」
第八十一戦隊(戦艦):「諏方」「和泉」
第七航空戦隊(空母):「海龍」「瑞龍」
第八航空戦隊(空母):「加賀」「応龍」「蛟竜」
第二十七戦隊(特殊巡洋艦):「球磨」「多摩」
第二十九戦隊(特殊巡洋艦):「北上」「大井」「木曽」
第三十二戦隊(大巡・重巡):「早池峰」「古鷹」「加古」「標津」「皆子」
付属:軽巡洋艦:「矢矧」
第七水雷戦隊(軽巡洋艦):「鹿島」
第七十一駆逐隊:「氷雨」「早雨」「白雨」
第七十二駆逐隊:「海霧」「大霧」
第七十三駆逐隊:「黒潮」「早潮」「漣」「朧」
第七十四駆逐隊:「霰」「夕暮」
第八水雷戦隊(軽巡洋艦):「川内」
第七十六駆逐隊:「吹雪」「白雪」「初雪」
第七十七駆逐隊:「磯波」「浦波」「敷波」「綾波」
第七十八駆逐隊:「夕霧」「狭霧」
第七十九駆逐隊:「初春」「春雨」「涼風」
第十七潜水戦隊:補給・潜水母艦3:『ばーじにあ丸』『あいおわ丸』『迅鯨』
・第七十潜水隊 :伊600、伊611、伊612
・第七十一潜水隊:伊607、伊608、伊613
・第七十二潜水隊:伊609、伊610、伊614
○第七艦隊:指揮官:武本権三郎中将
第五十一戦隊 :(戦艦3):「扶桑」「山城」「隠岐」
第十一航空戦隊:(空母3):「白龍」「赤龍」「翠龍」
第十三航空戦隊:(空母3):「幡龍」「水龍」「真鶴」
第九戦隊:(大型巡洋艦4):「黒姫」「荒海」「八海」「摩周」
第三十戦隊(特殊巡洋艦2):「初瀬」「八島」
第三十三戦隊(重巡1・軽巡2):「那岐」「滝波」「佐波」
第六十五戦隊(転移巡洋艦2):「来島」「根室」
第七十五戦隊(敷設艦2):「津軽」「沖島」
第九水雷戦隊(特殊巡洋艦):「九頭竜」
・第八十一駆逐隊:「初桜」「椎」「榎」「雄竹」
・第八十二駆逐隊:「初梅」「八重桜」「矢竹」「葛」
・第八十三駆逐隊:「桂」「若桜」「梓」「栃」
・第八十四駆逐隊:「菱」「榊」「早梅」「飛梅」
・第八十五駆逐隊:「藤」「山桜」「葦」「篠竹」
・第八十六駆逐隊:「蓬」「葵」「白梅」「菊」
第十三潜水戦隊(特設潜水母艦3):いくら丸、ろくろ丸、はくろ丸
第六十潜水隊:呂500、呂501、呂502、呂503、呂504、
呂505、呂506、呂507、呂508
第六十一潜水隊:呂509、呂510、呂511、呂512、呂513、
呂514、呂515、呂516、呂517
第六十二潜水隊:呂518、呂519、呂520、呂521、呂522、
呂523、呂524、呂525、呂526
第二機動艦隊は、ソロモン作戦からの連戦であり、大きく損傷した艦艇が編成から外れている。
一方、第二戦隊に第九艦隊から『信濃』が加わり、大和型戦艦3隻が揃い踏みとなった。一方で僚艦が離脱した『和泉』は、第二戦隊を外れ、アルパガス級改の戦艦『諏方』と組む。
ソロモン作戦では3隻だった空母は、2隻が応急修理も加えて復帰し、5隻となった。
潜水型水雷戦隊である第七、第八水雷戦隊は補充はないが、援護戦力として、潜水可能型重巡洋艦4隻と、大型巡洋艦『早池峰』が加わった。支援火力はむしろ強化されている。
第七艦隊は、インド洋配備の艦隊だけあって、ソロモン作戦に参加しなかった分、その戦力は増えてはいないが、フルに活用できる状態である。
かくて、敵インド洋艦隊の北方に展開する第二機動艦隊の空母『加賀』『海龍』『瑞龍』『応龍』『蛟竜』の5隻、東にいる第七艦隊の空母『白龍』『赤龍』『翠龍』『幡龍』『水龍』の5隻から、それぞれ奇襲攻撃隊が発艦する。
しかし、懸念はあった。
それは彩雲偵察機の報告による、敵艦隊上空の様子だ。
『敵空母部隊上空に、多数の浮遊航空機が滞空、随伴。詳細は不明なれど、防空網は強固なものと推測される』
この報告は、攻撃隊搭乗員らに出撃前に通達された。どうやらシドニー近海で潜水空母『鳳翔』の攻撃隊が、転移ゲートを破壊する際に遭遇したもののようだった。それが、敵インド洋艦隊の上空にもいるという
「敵も、黙って我々に奇襲されたくないということなのだろう」
第二機動艦隊、攻撃隊隊長である内田ハル少佐は、隊員たちに告げた。
「これまで散々、我々にやられてきた。奴らも学習しているということだ。ここ最近は、連中も色々小細工を労して、こっちも楽に勝たせてもらえなくなっている。油断するんじゃないよ! いいね!?」
『応っ!』
「搭乗!」
搭乗員たちがそれぞれの機体へと走る。その艦載機のうち半数は、無人コアによる自動操縦型ではある。轟々と唸りをあげる発動機。
やがて、発艦が開始された。
第二機動艦隊からは、紫電改二18機、九九式戦闘爆撃機72機、流星改二36、二式艦上攻撃機54機、彩雲偵察機5機の合計185機。第七艦隊からも、九九式戦闘爆撃機90機、二式艦上攻撃機90機、彩雲偵察機5機の計185機が、出撃した。
双方合わせて370機。これらが遮蔽装置を隠れ蓑に、敵インド洋艦隊へ進撃する。
これらの機体は対防御障壁弾を搭載しており、半数が転移誘導弾、残り半分が威力向上型のエネルギー弾頭弾であった。
特に転移誘導弾は、敵の防御障壁を無視して攻撃できるため、敵空母が障壁で警戒しようが真っ先に撃破できる。