第四七九話、第一艦隊 VS ガンマ艦隊
ガンマ艦隊から飛び立った432機の攻撃隊は、日本海軍主力である前衛、第一艦隊に接近しつつあった。
●第一艦隊:指揮官:原 忠一中将
第一戦隊(戦艦):「遠江」「播磨」
第三戦隊(戦艦):「土佐」「天城」「紀伊」「尾張」
第四戦隊(戦艦):「長門」「陸奥」「薩摩」「飛騨」
第五戦隊(戦艦):「肥前」「周防」「相模」「越後」
甲型海氷戦隊乙:「海豹4」「海豹5」「海豹6」
第十三戦隊(重巡洋艦):「阿蘇」「笠置」「身延」「葛城」
第十四戦隊(重巡洋艦):「高雄」「愛宕」「摩耶」
第十八戦隊(重巡洋艦):「大雪」「姫神」「五葉」「三峰」
第三十四戦隊(軽巡洋艦):「久慈」「天塩」「小矢部」「雲出」
・第三水雷戦隊:(軽巡洋艦)「揖斐」
第十一駆逐隊 :「朝霜」「早霜」「清霜」
第十二駆逐隊 :「高潮」「秋潮」「春潮」「若潮」
第十五駆逐隊 :「朝靄」「夕靄」「雨靄」「薄靄」
第十九駆逐隊 :「霜風」「沖津風」「初秋」「早春」
第一艦隊に所属する空母は、海氷空母が3隻。囮空母ではあるが、直掩の戦闘機が搭載されている。業風戦闘機が次々に飛び立つ。
海氷空母1隻につき60機。機種は戦闘機54機、偵察機6機である。3隻の海氷空母から、誘導、指揮の彩雲偵察機に先導された戦闘機隊が。第一艦隊の空を守る。
さらに、連合艦隊直率部隊の海氷空母3隻、第一機動艦隊からも戦闘機が発艦し、第一艦隊の防空支援に向かう。
今回は、重爆撃機ではなく、空母艦載機が相手。青電高高度迎撃機ではなく、業風や烈風といった戦闘機の出番だ。
異世界帝国軍攻撃隊は、その進撃途中、第一艦隊の戦闘機隊からの迎撃を受けることになる。
オリジナルが米海軍のF6Fヘルキャットである業風は、彩雲の誘導に従い高度をとってのダイブアタックを敢行する。
すでに異世界帝国側も日本機に気づいていて、上昇。正面からのぶつかり合いとなる。12.7ミリ機銃弾が交差し、直撃した機体から煙を引いて、破片を飛散させる。
中隊ごとの一撃離脱を行う業風に対して、すれ違ったヴォンヴィクス戦闘機は旋回、追尾にかかるが、エントマ高速戦闘機は反対に距離をとっての一撃離脱を狙う。
日本機の迎撃を受けて、ミガ攻撃機隊は、護衛機と共に高度を下げつつ、日本艦隊へと向かった。
第一艦隊戦闘機隊は、それを追わず、迎撃してきた敵戦闘機と交戦しつつ拘束を狙う。
そして、ガンマ艦隊攻撃隊は、視界に第一艦隊を捉えた。
第一艦隊は、海氷空母3隻を戦艦、巡洋艦で囲み、厚い防御隊形をとっていた。異世界帝国攻撃隊は、攻撃隊形に移行。南海艦隊前衛の敵討ちとばかりにさらに接近する。
だが護衛戦闘機隊が、高度を上げ始める。日本軍の第二波、連合艦隊直率部隊、第一機動艦隊の戦闘機隊がエアカバーについていたのだ。
業風のダイブアタックと後続の烈風の襲撃。機銃弾、そして光弾機銃。機体を穿かれるヴォンヴィクス戦闘機、ミガ攻撃機。特に威力の大きな光弾機銃は、一発の被弾で部位をごっそり持っていかれる。12.7ミリ機銃にも数発は耐えられるミガ攻撃機も、瞬く間に撃墜される。
結局、空母の数、戦闘機の数が物を言う。異世界帝国側は、アルファとベータ、そして主力の空母を失った結果、ガンマ艦隊単独の攻撃となり、日本軍の防空網を破ることはできなかったのだ。
もし主力艦隊の空母とその攻撃隊が加わっていたなら、第一艦隊のもとに辿り着けた機もあったかもしれない。
ガンマ艦隊の航空攻撃が不発に終わった頃、第一機動艦隊では、攻撃隊の準備が整い、発艦を開始した。
今度は、日本海軍の反撃の番である。
第一艦隊は、ガンマ艦隊との決戦に向けて前進を続け、第一機動艦隊の第二次攻撃隊が友軍艦隊を追い越した。
・ ・ ・
ムンドゥス帝国南海艦隊所属、ガンマ艦隊。司令官を任せられているフラーウス中将は、主力である本隊からの通信を受け取った。
「ガンマ艦隊は西進し、西回りで本隊と合流せよ、か」
さすがにフラーウスの手持ちの戦力で、日本海軍の主力と思われる艦隊と正面衝突はまずいと、南海艦隊司令部は判断したのだ。
航空攻撃が失敗した今、砲撃戦に持ち込んでも単独では勝ち目が薄いということだ。
「やむを得ない。全艦反転。主力との合流を目指す!」
一度は第一艦隊との決戦に艦首を向けていたガンマ艦隊だが、再度反転し遠ざかる動きをとった。
が――
『上空警戒機より、入電! 日本軍の攻撃隊が本艦隊に接近中。その数、300から400機!』
「こちらが殴り掛かったんだ。反撃はしてくるわな」
フラーウスは頷くと、ただちに直掩部隊の増強を命じた。
放った攻撃隊は、戦闘機も含め、ほとんど帰ってこなかった。残っている戦闘機は全て出すのは当然。爆装なしのミガ攻撃機も敵攻撃機迎撃の防空任務に使うべく、準備にかかる。
敵奇襲攻撃隊に警戒しつつ、順番に艦載機を展開したが、幸いにも日本軍の奇襲はなかった。
どうやらこの近くに、日本軍の奇襲航空隊はいないようだ。第一次攻撃隊を出した時に妨害されなかったからと言って、今も近くにいないという保証はない。
ひとまず安堵しつつ、戦闘機に続き、防空任務用の攻撃機の準備を始める。もちろんこの間は防御シールドを張って、襲撃に備える。
そして攻撃機を順次飛ばし始めた頃、ヴォンヴィクス、エントマ戦闘機隊が、日本軍の攻撃隊に攻撃を仕掛けた。
攻守は入れ替わった。日本軍は豊富な艦載機で、こちらの攻撃隊を撃退したが、果たしてこちらは上手くいくだろうか。
フラーウスは双眼鏡を手に、参謀たちと戦闘の様子を見守った。




