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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第四七五話、オーストラリアからの刺客


 連合艦隊主力は、ソロモン諸島の異世界帝国艦隊の二つに大きな損害を与えた。


 だが、異世界人が何もしなかったわけではない。彼らの牙は、連合艦隊に迫っていた。


『南方警戒部隊、伊16潜水艦より入電。オーストラリア方面よりソロモン諸島方面へ移動する敵重爆撃機の編隊を確認。その数、およそ80。なお後続部隊がある模様』


 連合艦隊旗艦『敷島』では、警戒潜水艦からの通報を受けて、山本五十六大将は呟いた。


「重爆撃機か」


 異世界帝国が、オーストラリアから北上し、ソロモン諸島への救援か、ニューギニアのポートモレスビー辺りへの攻撃を目論んでいるのではないか、と予測されていた。

 第一機動艦隊が先手を打って、ブリスベン、タウンズビルを攻撃したことで、そのルートでの大がかりな進撃の可能性は低くなったが、まったく何もしてこないという保障はない。

 だからソロモン作戦への介入に備えて、警戒部隊を置いておいたのだが……。


「艦隊が駄目なら重爆で来たということか」

「敵の重爆撃機は足が長いですから」


 樋端航空参謀は言った。


「何にせよ、航空から誘導兵器を落とされても面倒です。ただちに迎撃機の準備にかかるべきかと」

「うむ。十六航戦と、第一機動艦隊に、青電迎撃機の準備をさせよ」


 山本長官の命令は、ただちに通達された。

 連合艦隊直率の第十六航空戦隊の空母『黒鷹』『紅鷹』――マーシャル諸島攻略戦で撃沈され、その後復活をした2隻には、直掩機用の戦闘機が中心に載せられており、烈風艦上戦闘機と、マ式エンジン搭載の高高度迎撃機、青電が配備されている。


 まだ、第一機動艦隊では、軽空母『祥鳳』『瑞鳳』が偵察機を除けば、すべてが青電艦上迎撃機だ。

 第一機動艦隊旗艦『伊勢』では、敵重爆接近の報告に、小沢中将が苦い顔をした。


「敵の重爆撃機が出てくる時は、ろくなことにならない」


 艦隊決戦での被害もだが、重爆撃機による被害もまた大きい傾向にある日本海軍である。中部太平洋海戦でも、のこのこやってきた敵重爆撃機に空母を半減させられた経験がある小沢である。


「重爆で小型機を運んできた空中空母、高高度からの誘導爆弾、さらに光線砲――」


 列挙していくたびに、参謀たちは何とも言えない顔になる。表情が変わらなかったのは神明参謀長のみである。

 小沢は、経験者ゆえ眉間のしわは濃い。


「また何か新しいことを仕掛けてくるのか……」

「防御障壁、場合によっては転移の可能性もあります」


 敵のパライナ重爆撃機は、防御障壁を搭載している。艦艇に比べては脆いとはいえ、誘導弾の1、2発では沈まない強度を持ち、撃墜に手間取る。

 事実、ニューギニア方面攻略の際に飛来したパライナ重爆撃機は、迎撃をはねのけ、第八艦隊に爆撃を敢行している。

 敵も以前のオルキ重爆撃機ならば、光弾砲での撃墜もやりやすくなったが、新型パライナ重爆は、それでもある程度耐える頑丈さがあるのだ。


「80機全部が新型ならば、防ぎきれるか?」

「全部は難しいでしょう。ある程度減らすことはできるでしょうが」


 そもそも、第一機動艦隊が保有する青電が54機である。敵の数が80機。これがオルキならば50でも楽だが、パライナならば押さえきれない。


「早期に仕掛け、迎撃時間を多くとって、可能な限り、削るしかありません」

「うむ……。今回は言っても仕方がないが、こっちの重爆撃機対策もやっていかないといかんな」


 小沢は頷いたが、果たして次の機会はあるか、と内心思った。どうにも胸騒ぎがする。


 軽空母『祥鳳』『瑞鳳』から、プロペラのない鋭角的フォルムの高速迎撃機が飛び上がる。マ式エンジンの噴射炎を煌めかせて、グンと上昇する青電艦上迎撃機。

 果たして、どこまで敵機を撃墜できるか……?



  ・  ・  ・



 オーストラリアから飛来したのムンドゥス帝国陸軍の重爆撃機部隊であった。日本海軍の不安の通り、その機体は新型のパライナ重爆撃機で固められていた。

 青電高速迎撃機隊は、高度1万以上でも時速750キロメートル以上を発揮し、異世界帝国の重爆撃機に襲いかかった。

 空対空誘導弾、光弾砲による攻撃は、着実にパライナ重爆撃機に突き刺さるが、持ち前の防御シールドが、数発の被弾に耐える。


「集中攻撃だ! 一小隊で連続攻撃だ!」


 パライナ重爆撃機の対空銃座が反撃の火線を放つ中、青電は3機で敵1機を襲い、シールドを剥がすと、敵重爆の翼を貫き、エンジンを吹き飛ばして高高度からソロモン海へと落としていく。


 速度では青電が圧倒している。しかしパライナ重爆撃機も、速度を落とすことなく高高度を維持しつつ、連合艦隊に迫る。


 第一機動艦隊の迎撃隊に加えて、第十六航空戦隊の空母『黒鷹』『紅鷹』の青電隊も加わり、1機、また1機と敵を脱落させていく。


 だが、予想通り、敵大編隊のおよそ半分を撃墜、脱落させるので精一杯だった。さすがの耐久力である。

 そして状況はますます悪化する。


『南方警戒部隊よりさらなる報告! 敵重爆撃機の編隊、第三波。およそ50を確認!』


 異世界帝国のオーストラリア方面軍は、パライナ重爆撃機を大群で差し向けてきた。

 第一波が80。第二波が60、第三波が50。


『追伸! 敵第四波、およそ100機! ソロモン諸島へ進撃中!』


 連合艦隊司令部では、敵の相次ぐ重爆撃機投入に表情が硬かった。

 連合艦隊に艦隊を叩かせている間に、重爆撃機の大量投入で反撃する――現地の陸海軍の共同攻撃というべきか。

 これらの侵入を事前に阻止することは不可能となっていた。第一波は半数を撃墜したが、間もなく連合艦隊主力に対して攻撃を仕掛けてくるだろう。


 そして第二波以降は、まだ迎撃が手つかず。数が減っていない状態で、なお接近中だ。


「艦隊転移によって敵重爆を回避する!」


 山本長官は決断した。敵爆撃隊の空振りを誘う。艦隊位置、進撃ルートが変わるのは少々面倒ではあるが、背に腹はかえられない。


 重爆撃機の大量投入に対して、まともに応えていて、新兵器を使われでもしたら厄介だ。

 ソロモン諸島の敵艦隊を撃滅するため、連合艦隊主力の消耗は避けなければならない。


「出撃中の各航空隊は、転移離脱装置にて母艦に帰還するよう命令。我が主力艦隊は、艦隊転移で、敵艦隊後方海域へと回り込む!」


 迫る異世界帝国重爆撃機が、日本艦隊をその射程に収めようとした直前、山本五十六連合艦隊司令長官率いる、第一艦隊、第一機動艦隊を中心とした主力艦隊は、サンタイザベル島の南海域から消えた。


 転移による移動。ムンドゥス帝国陸軍の重爆撃機部隊は、眼前にまで日本艦隊に迫りながら、その姿を見失うことになる。


 あれだけ騒がしかった迎撃機も姿を消し、爆撃隊の指揮官は、近場の海域に日本艦隊がいないか捜索した。


 が、発見できず、爆撃隊は攻撃を取り止め、帰投するしかなかった。

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