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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第四一四話、ジャンバール、砲撃開始


 ムンドゥス帝国ピスケース艦隊は、日本海軍第七艦隊の散布した魔力誘導式機雷によって、空母3隻を喪失し、駆逐艦も半数をやられた。


 残る空母1隻に、攻撃隊を収容しつつ、ピスケース中将は決断を強いられていた。

 セイロン島駐留艦隊は、ピスケース艦隊とほぼ互角の戦力である。


 しかし、その本格的衝突前に、航空戦力の半数以上を喪った。航空戦力に関しては、元から劣勢だったから、そこで航空機数の差はさらに大きくなった。

 だが、一度食らいついたら、第七艦隊は敵を逃すつもりはない。


「レーダーに反応! 敵艦隊、出現!」


 ピスケース艦隊旗艦『ジャンバール』は、日本艦隊接近の通報を受け取った。


「敵艦隊、戦艦3、空母3、巡洋艦1、駆逐艦8!」

「なんだと?」


 ピスケース中将は困惑した。


「戦艦3隻はわかる。巡洋艦が1隻だけとはどういうことだ?」


 確か、先の偵察機からの報告では、大型巡洋艦4隻、巡洋艦5隻だったはずだ。それがたった1隻のみとは、如何にも怪しい。


「空母の隻数が合わないのも気になりますな」


 カエシウス参謀長が唸った。


「駆逐艦が足りないのは、いない2隻の空母の護衛なんでしょうが、それならそもそも何故、3隻を戦艦の後ろに従えているのか」

「こちらの砲戦の考えがあるのなら、空母は全て後方に退避させるのがセオリーだ」

「どうします、提督?」

「残存空母より艦載機発進! 制空戦闘をさせつつ、攻撃機には隙ができるまで上空待機だ。……今突っ込ませても、敵機の数にすり潰されるだけだ」


 応戦用意――ピスケース艦隊は動き出す。


 戦艦『ジャンバール』『リシュリュー』『ダンケルク』『ストラスブール』の4戦艦と、『シュフラン』『ウォッシュ』『デュプレ』『ボルツァーノ』の仏伊4重巡洋艦がそれぞれ単縦陣を形成。その周りに軽巡洋艦3、駆逐艦5が付き従う。


『日本空母より、艦載機発艦中!』


 当然のように、日本艦隊は航空機を発艦させた。ただし、艦隊上空に置いて、こちらが仕掛けたら反撃するつもりのようだ。


「隻数で劣勢なのだから、仕掛けてくると思ったが……」

「一度砲戦が始まれば、安易に突撃ができなくなります」


 カエシウスが鼻をならした。


「航空隊を突っ込ませるなら、今でしょうに」

『敵空母、反転! 戦艦部隊、そのまま本艦隊に向かってきます!』


 見張り員の報告に、ピスケースは余裕の笑みを浮かべる。


「度胸はあるようだ。しかし油断は禁物だ。やはり数の合わない巡洋艦部隊が気がかりだ。戦闘中に転移を仕掛けてこないよう、巡洋艦戦隊は警戒! 敵戦艦には、こちらも戦艦であたる!」


 戦艦『ジャンバール』は、フランス戦艦リシュリュー級の二番艦である。


 基準排水量3万5000トン、常備排水量4万2130トン。全長248メートル、全幅35メートル。機関出力15万馬力、速力30ノット。


 フランスの誇る新戦艦であり、独ビスマルク級、伊リットリオ級のライバルとも言える戦艦だ。

 その主砲は45口径38センチ砲――世にも珍しい四連装砲として、艦首に二基八門を集中配備している。なお艦尾側には、軽巡級主砲の55口径15.2センチ三連装砲を装備する。


 この特異な配置は、この世界ではフランス海軍独特のもので、リシュリュー級に後続するダンケルク級戦艦2隻もまた、艦首に主砲、艦尾に副砲という配置をしている。


 そのダンケルク級戦艦は、基準排水量2万6500トン、常備排水量3万264トン。全長215.14メートル、全幅31.1メートル。機関出力13万馬力で31ノットの速力を誇る。


 主砲は52口径33センチ砲。戦艦としての火力については残念ながら低いと言わざるを得ないが、元々ドイツが開発した戦艦未満、巡洋艦以上のポケット戦艦に対抗する高速戦艦という意味合いがあって、これで充分であった。


 特に日本海軍の金剛型や扶桑型ならば、充分に相手どる戦闘力を持っていた。重量級33センチ砲弾の威力も馬鹿にならない。

 なにより、リシュリュー級、ダンケルク級共に、その主砲の最大射程は4万メートルを超える長射程であった。


『敵戦艦を捕捉!』

「長射程を活かし、先制せよ! 射撃開始!」


 戦艦『ジャンバール』の38センチ主砲が火を噴いた。


 ピスケースはほくそ笑む。このフランスという国の戦艦が何より素晴らしいのは、全砲門を艦首方向に向けられるということだ。


 前進しながら全力で敵を攻撃できるのは、ムンドゥス帝国の攻撃精神と合致する。

 4隻の戦艦は、単縦陣から斜め陣形へと移行する。4隻32門――38センチ砲弾16発、33センチ砲弾16発が、日本戦艦戦隊へと飛んだ。


 敵戦艦の周りに水柱が上がる。さすがに距離があり過ぎて、初弾からの命中はない。そこまではピスケースはもちろん期待していない。


 リシュリュー、ダンケルク共に4万メートルの長射程を誇るとはいえ、戦艦の主砲などそうそう当たるものではないのだ。


 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる――上手な鉄砲も数撃たなければ当たらない。それが戦艦同士の遠距離砲撃戦というものである。


 45口径38センチ四連装砲が噴煙を上げる。ムンドゥス帝国以外では、フランス戦艦とイギリスの一部でしか採用されていない四連装砲。そしてこのフランス砲は、砲身が四本あるが、実は連装砲を横に繋げたものであり、間に装甲隔壁があって万が一の損傷があっても四門中二門は継続射撃が可能なようにできていた。


 ピスケース艦隊の戦艦4隻は、当たらずとも砲戦を継続しつつ前進する。彼我の距離は縮まりつつあるが、日本戦艦は、いまだ反撃してこない。


 敵戦艦は遠距離を捨て、近・中距離砲戦を狙っているのか、とピスケースは思う。しかし、このフランス戦艦、防御性能も高い。


 敵は改ナガト級と、トサ級――砲塔5基から、扶桑型とは思わなかった――2隻。こちらのリシュリュー級は40センチ砲搭載戦艦とも殴り合えるだろうが、ダンケルク級2隻には荷が重い。敵が反撃してこないうちに、脱落ないし戦闘不能に追い込みたい。

 カエシウスが腕時計を見やった。


「そろそろ、距離が3万に縮まりますが、敵はまだ撃ってきませんな」

「こちらも当たっておらんがな。日本軍は2万5000まで踏み込まないと撃ってこないかもしれんな」


 欧州戦艦の場合、最新型こそ射程が長いが、古い型の戦艦だと2万5000メートル辺りが限界というものさえあった。日本軍の40センチ砲は3万5000メートルは射程内と思われるが、命中率は別である。

 だがそこで事態が動く。


『敵機、直上! 急降下!』

「何!?」


 まったく想像していなかった時に響いた見張り員の報告だった。

 艦隊上空には、空母から発進した航空隊がいる。日本機が向かってきたら交戦になるだろうが、真上を取られるまで報告がないなどあり得ない。


 だがピスケースが考えている時間はなかった。


 肉薄してきた敵機が、翼下のロケット弾を立て続けに発射。それは旗艦『ジャンバール』の城塞のような司令塔を真上から叩き、爆発した。

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