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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第四一〇話、転移弾の開発と51センチ砲


 神明の『一発で障壁を破れる弾頭を作っている』発言に、山本長官と渡辺戦務参謀は目を剥いた。

 樋端航空参謀の目が光る。


「あるんですか。そういう兵器が」

「ある」


 魔技研出の少将は、きっぱりと告げた。


「転移弾というもので、こちらはまだ試作なのだがな。敵の防御障壁を抜けて直接ダメージを与える武器だ」

「おおっ! それは凄い!」


 渡辺が手を叩いた。

 転移弾自体、物はできているが、現在試験を繰り返している最中である。試作からテストまでが、恐ろしく短いの魔法技術を用いた魔技研の長所だ。


「ただ、本格量産するとしたら、近接信管を作れる技術と設備が欲しいところではある」

「近接……信管? どこかの部署が研究していたような」


 渡辺が思い出そうとすれば、樋端が淡々と言った。


「確か、航空機迎撃用の高角砲に使おうとか研究されていたと思う。でも日本の技術ではその部品すら作れないとか。……神明さん。魔技研で研究はしていないのですか?」

「残念ながら、性能は今一つだ。ただ米軍が最近採用して、ハワイで使っていたと聞いた」

「アメリカと交渉して、近接信管周りの技術――あるいは製品そのものを輸入するとか……?」

「いやいや、アメリカが実戦投入したばかりのモノをくれるかねぇ」


 渡辺が眉をひそめた。樋端は言い返した。


「こちらから彼らが欲しがる技術と交換すればいい」

「たとえば?」

「防御障壁」

「おい、樋端!」


 渡辺がギョッとし、山本も目を見開いた。しかし樋端は平然と告げた。


「こちらは、その防御障壁を破る技術を作ろうとしている。どうせ破れるようになるなら、その防御障壁技術をアメリカに提供しても問題はない」


 米国と万が一戦うようなことになって、防御障壁を使われても、突破できるのならないも同然である。


「それに現状、異世界帝国が防御障壁をどこでも使うようになってきた。アメリカにも同様の防御装備がないと劣勢は免れない。異世界の脅威に対抗するためにも、彼らにも強くなってもらわないと困る」


 樋端は、技術秘匿を続ければ、いずれ異世界帝国に対抗するのが日本だけになってしまうと予想した。日本の孤立。敵の底の見えない戦力を考えれば、一国で何とかできる敵ではないのだ。


「今は、何とかなってしまっているが、それができるうちに手を打っておかないと、一度傾いたら、もう取り返しがつかなくなる」


 樋端は、彼が抱える危機感を伝えた。東洋艦隊、太平洋艦隊、大西洋艦隊を日本海軍は撃破してきて、アメリカやイギリス残存戦力は、戦力回復を図る時間がある。


 しかし、現状のままでは、やがて敵が反撃が始めた時、アメリカ以下、その他諸国の戦力は、まったく役に立たずに潰されてしまうだろう。

 今の彼らが戦力を回復させている時に、技術をいくつか提供してでも強くなってもらわないと、世界は終わる。


「……軍令部と海軍省に、声をかけておこう」


 山本は静かに、しかしはっきりと言った。


「僕も、日本単独で世界が守れるとか、そんな大それた、いや希望的観測はない。アメリカの工業力、そして石油資源に、我々は支えられているし、そんな国が脱落してしまえば、我が国の未来は危うい」

「はい!」


 樋端、渡辺が背筋を伸ばした。頷く山本は、神明に向き直った。


「話が逸れたな。それで、転移弾が正式に量産できるようになれば、より弾薬消費を抑えられるということだな?」

「ただ弾頭を変えればいいエネルギー弾頭と違い、構造が複雑かつ部品点数も増えますので、費用がお高くなります。使いどころ次第ではありますが、上手く使えれば、費用対効果は何とかできるかと」

「あのぅ、神明少将。魔技研のほうで、コピーとかできないですか?」


 渡辺が横着するような顔になった。


「良品をベースに魔力生産すればよくないですか?」

「現在、魔力生産系の設備は、多種多様なものを作っている。いわばフル稼働中だ。今、生産中の何かが代わりに作れなくなるがよろしいか?」


 海軍が、そんな便利な設備を遊ばせているわけがないのだ。


「あー……」

「まあ、優先順位があるから、おそらく何かと入れ替わるだろうがな。だが、魔力コピーで作れるものだって、一日で量産できる数に限度がある。そればっかりに頼るわけにもいかんのさ」


 だから、自前で作れるものは、日本の手持ちの技術で何とかするしかないのだ。


「それに、せっかく絞った戦艦の砲弾がまた増えるという話だ。魔力生産が使われるかもしれないものの候補が多すぎる」


 神明が眉をひそめれば、渡辺は口を閉じた。樋端思い当たる。


「51センチ砲ですか?」



  ・  ・  ・



 日本海軍は、大和型戦艦の存在は、やがて仮想敵国もまた46センチ砲を搭載した戦艦を作るのではないか、という懸念を抱かせた。


 異世界帝国が登場前は対米戦を、現れてからは異世界人に対抗するため、海軍は試製甲砲――51センチ砲を開発した。


 そして実際、第一次トラック沖海戦で、異世界帝国の旗艦級戦艦に『大和』が大破させられた事態を受けて、51センチ砲の研究開発は進められていた。


 そして1944年、ついに新型51センチ砲が、戦艦に搭載されることとなった。

 皮肉にも、かつて大和型を退けた異世界帝国の旗艦級戦艦こと、メギストス級超弩級戦艦改装の播磨型に。


 第三次ハワイ沖海戦に参加した『播磨』と姉妹艦『遠江』だったが、『播磨』は撃沈、『遠江』は大破させられた。


 沈んだ『播磨』もサルベージし修理が加えられることになったが、それを機に、51センチ連装砲を搭載することになったのだ。


 元々、大和型を上回る艦体を持ち、46センチ三連装砲を装備できたことから、重量、サイズをほぼ同等に収めた51センチ連装砲を使用できるスペックをもっていた。


 大和型の後継として計画された51センチ砲搭載戦艦の試案に近い巨艦であったことも決め手となった。


 ただ、肝心の『播磨』が受けたダメージは大きく、魔核にも損傷を受けたため、当初、再生は困難だった。しかし姉妹艦の魔核データのコピーにより修復され、戦列に復帰の見込みとなった。


 余談となるが、二番艦の『遠江』も、最初に日本海軍に回収された際、魔核がダメージを受けており、『播磨』からの魔核データを受けて再生されていたりする。


 改造播磨型は、51センチ搭載戦艦として連合艦隊に復帰するが、これが海軍の弾薬リストに51センチ砲弾の製造を加える結果となった。


 なお、51センチ連装砲は、46センチ三連装砲と同等という話をしたが、軍令部では、大和型の『大和』『武蔵』、そして三番艦の『信濃』の主砲を51センチ連装砲に換装しようという話が出ていたりする。

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