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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第三八九話、湾内突入


 ムンドゥス帝国第82戦闘部隊は、窮地に立たされていた。

 日本軍第八艦隊と交戦し、3隻あったヴラフォス級戦艦は死に体である。


「こうも一方的か……」


 ウメルス中将は、旗艦『ギュプソス』の艦橋で呻いた。


 敵戦艦の主砲は、ヴラフォス級より格上の40センチクラス――日本軍の標準砲である41センチ砲だろう。


 夜戦だからと距離を詰めたが、それはこちらの攻撃力を上げるためであり、別に防御力が上がるわけではない。むしろ上がった敵の攻撃力に、現実を見せつけられる格好だ。


 二番艦は爆沈し、『ギュプソス』もまた、敵砲弾に滅多打ちにされて、戦闘能力を喪失しつつある。


 五基ある主砲も、艦首と右舷砲のみが稼働し、残る三基は被弾によるダメージで動いていない。弾薬庫の誘爆が避けられているのが奇跡のような状況だが、いずれ最期を迎えるであろう。


 こちらも相応のダメージを敵に与えていれば、まだ救いがあった。だが現実は、踏み込んだにもかかわらず、敵戦艦の防御障壁によって阻まれた。


「新型シールド……!」


 防御しながら砲撃できるという新型防御障壁。ムンドゥス帝国でも普及しつつある技術を、地球人も使っている。


 いや、すでに旧型であるヴラフォス級に装備されていないことを思えば、その格差はあまりに大きかった。


「無念だ。……通信! 輸送船団にゼーアドラー湾からの退避を勧告。我々は――」


 ウメルス中将が最後まで告げることはできなかった。女神の加護が離れたように、日本戦艦の放った41センチ砲弾が艦橋を直撃し、中将以下司令部要員を爆殺したのだ。


『ギュプソス』が急激に力を失い、洋上に停止する頃、大型巡洋艦『戸隠』『五竜』と砲撃を繰り返していた三番艦もまた、戦闘力を喪失し沈みつつあった。



  ・  ・  ・



 日本海軍第八艦隊、旗艦『摂津』。遠藤喜一中将は、敵戦艦が沈没しつつありと聞き、短く息をついた。


「参謀長、他の艦はどうなっているか?」

「詳細はわかりませんが、こちらも戦闘は収まりつつあるようです」


 緒方 真記少将は答えた。


「敵巡洋艦の撃破報告が入っています。集合をかけてもよろしいかと」

「じゃあ、そうしてくれ」


 脅威度の高い敵戦艦を排除したものの、夜間において巡洋艦、駆逐艦も馬鹿にできない。

 艦隊集まれ、と第八艦隊夜戦部隊は、ひとまず部隊の集合を図る。


「長官、ゼーアドラー湾の敵空母ですが……」


 緒方が言いかけ、遠藤は僅かに首を傾けた。


「我々だけなら、突撃か退避か迷うところだが」


 すでに有力な防衛部隊を片付けたとはいえ、湾の空母や輸送船は退避しているだろうし、護衛の駆逐艦もまだついているだろう。


 下手に手を出して、雷撃を食らうなんてことがあれば、ただでさえ海軍のドック施設を圧迫しているのに、面倒なことを増やしかねない。


 とはいえ、正直迷うでもない、と遠藤は思っている。


『こちら右舷見張り。湾内にて、複数の爆発を確認』

「来たか」


 内地からの増援。第二機動艦隊。その精鋭たる水上打撃部隊。


「彼らが来たなら、我々はここまでだ。四、六航戦と合流する。……下手に突っ込んで味方に誤射されたくないからね」


 遠藤は飄々と言った。集結した第八艦隊は、ゼーアドラー湾手前で反転した。



  ・  ・  ・



 第八艦隊に所属する転移巡洋艦『鳴門』の転移中継装置を辿り、内地から第二機動艦隊がゼーアドラー湾に現れた。



 ●第二機動艦隊:水上打撃部隊


 第二戦隊(戦艦):「大和」「武蔵」「美濃」「和泉」

 第八戦隊(戦艦):「近江」「駿河」「常陸」「磐城」


 第三十二戦隊(巡洋艦):「早池峰」「古鷹」「加古」


 第七水雷戦隊:(軽巡洋艦)「水無瀬」

 ・第七十一駆逐隊:「氷雨」「早雨」「白雨」「霧雨」

 ・第七十二駆逐隊:「海霧」「山霧」「大霧」

 ・第七十三駆逐隊:「黒潮」「早潮」「漣」「朧」

 ・第七十四駆逐隊:「山雲」「巻雲」「霰」



 角田 覚治中将は第八戦隊旗艦『近江』から、号令を発した。


「全艦突撃せよ!」


 湾内に異世界帝国艦隊に向けて、第二機動艦隊水上打撃部隊は波を蹴って突き進んだ。


 この時、湾内には、軽空母10、駆逐艦16、輸送船34が残っていた。角田艦隊は、この異世界帝国艦隊に戦端を開く。


 第七水雷戦隊旗艦『水無瀨』と、四個駆逐隊が先陣を切る。アラビア海夜戦での戦いで、2隻欠、他軽微ながら損傷したままの艦もあるが、戦意は旺盛。その戦闘能力に不足はない。


 その水雷戦隊の突撃を、今回配備された潜水機能持ちの巡洋艦戦隊である第三十二戦隊を援護する。


 大型巡洋艦『早池峰』は艦首の30.5センチ三連装砲を発砲。重巡洋艦『古鷹』『加古』は、20.3センチ光弾砲を撃つ。


 異世界帝国艦隊は、混乱した。

 護衛である第82戦闘部隊が日本海軍と交戦していたところに、別の日本艦隊――それも戦艦を8隻も有するそれに襲撃されたのだ。


 軽空母は夜戦では役に立たず、駆逐艦も16隻しかないとあれば、ろくな抵抗もできない。

 そしてそれはすぐに証明される。


 日本海軍の8隻の戦艦が、軽空母へ砲撃を開始したのだ。

『大和』『武蔵』の46センチ砲、「美濃」「和泉」「近江」「駿河」「常陸」「磐城」の41センチ砲が、軽装甲のグラウクス級軽空母に襲いかかる。


 戦艦砲弾が一発でも命中すれば、グラウクス級の艦体は、ズタズタに引き裂かれて、内部をさらす。


 圧倒的な砲弾火力が、航空燃料や爆弾を誘爆させ、ゼーアドラー湾を昼間のように赤々と照らし出す空母の爆発大会が展開される。


 砲撃開始からおよそ7分で、10隻の軽空母は全滅した。七水戦も巡洋艦の支援を受けて、敵駆逐艦を各個撃破。

 のろのろと逃げる輸送船と、その護衛に張り付く残存駆逐艦も、第二機動艦隊は容赦なく撃沈していく。


 ゼーアドラー湾内の夜戦は、あっという間に終わりを告げた。


 しかしそれで終わりではなかった。角田艦隊8隻の戦艦は、異世界帝国が島に建築していた基地と飛行場に、必殺の砲弾を叩き、異世界人のこれまでの苦労を無にしたのであった。

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