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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第三八三話、ラバウル攻略に暗雲立ち込める?


 異世界帝国軍、ロスネグロス島に新拠点の設営に掛かる。


 トラックより南西、ニューギニア島の間にあるこの島は、アドミラルティ諸島の最大の島、マヌス島にほぼ隣接している。


 このマヌス島には、以前より異世界帝国軍が前哨基地を作ろうと画策し、飛行場も出来たのだが、日本海軍の航空攻撃で損壊し、以後、行動は不活発だった。


 だが、ニューギニア方面への進撃を予測した敵は、再び拠点設営に力を入れてきた。


 ロスネグロス島への人員、物資の揚陸を始めた、その上空護衛を小型空母の戦闘機部隊が担う。


 連合艦隊としては、攻略作戦発動前に、先手を取られたというところだ。


「第二機動艦隊の準備が整い次第、ラバウル攻略作戦を開始。ニューギニア、ソロモン方面攻略の橋頭堡にすると共に、南東方面艦隊によるニューギニア島敵拠点無力化作戦『む』作戦を実施――」


 草鹿 龍之介参謀長は、例の如く表情を変えず告げる。


「しかし、段取りは狂いました。ラバウルのあるニューブリテン島を攻略する前に、よりトラック方面に近いアドミラルティ諸島に敵が基地を作ろうとしています」


 ここを押さえるということは、そこより南東にあるニューブリテン島ラバウルへ侵攻する際、避けては通れない。ここに敵が艦隊を置けば、激突不可避であり、それを破らねばラバウル攻略など夢のまた夢である。


「何より厄介なのは、『日高見』擁する南東方面艦隊の東ニューギニア攻略にとっても、妨害できる位置にあることです。ロスネグロス島の敵を排除しなければ、おちおちむ号作戦も実施できません」


 日高見の位置をロスネグロス島から離して配置すれば、肝心のニューギニア島各地の敵拠点への攻撃範囲にも影響する。


「さらに続報があります」


 中島情報参謀が報告した。


「敵の輸送艦隊、第二陣がマヌス島ないしロスネグロス島に向けて航行中であるのを、偵察機が捕捉しました。4、50隻の輸送艦に、中型空母を含む小型空母中心の18隻、戦艦6隻、巡洋艦、駆逐艦合わせて100隻の大艦隊とのことです」


 連合艦隊司令部参謀らはざわめく。太平洋艦隊を撃破し、インド洋で大西洋艦隊を撃滅したが、異世界軍は、恐るべき物量で押し出してくる。

 渡辺戦務参謀が肩をすくめる。


「まー、空母といっても護衛空母が大半というのは、まだマシというべきですかね」


 中型以上の主力空母は、さすがに損耗している。これまでの戦いを振り返っても、そうであってほしいというのが司令部要員たちの、正直な感想だった。

 山本五十六連合艦隊司令長官は口を開いた。


「小型中心とはいえ、これでアドミラルティ諸島に30隻もの空母が集まるわけか」

「1隻あたり30から40機」


 樋端航空参謀は言った。


「大体1000機前後が、我が軍のラバウル攻略を妨害し、む号作戦を延期させようとしてします」

「これでも、敵大西洋艦隊に比べたらマシと思えるのは、感覚が麻痺しているんですかね」


 渡辺が苦笑する。航空戦力に勝る大西洋艦隊は、最大3000機近い艦載機を有していたと思われる。


 それと比較すると、空母の数は多くとも搭載数が少ない小型空母が中心なので、より少なく感じるのだ。

 山本は首を横に振った。


「いや、敵はアドミラルティ諸島ばかりではない。その敵を叩こうとすれば、ニューギニア島の各飛行場から、双発ないし重爆撃機が殺到してくるだろう。一歩間違えれば、袋叩きにあうのはこちらかもしれない」


 トラックよりも遥かに現地に近いニューギニア島、そしてソロモン諸島である。敵が前線と定め、その守りを強固にしているとなれば、油断できない。

 草鹿は視線を転じた。


「南東方面艦隊は、第八艦隊を使い、ロスネグロス島の敵艦隊の襲撃を計画しているそうです」


 敵の拠点化を阻むため、今後の作戦の邪魔となるロスネグロス島の敵を先制して叩く。本格的に基地として活動する前に潰してしまえ、ということである。

 樋端は眉をひそめた。


「しかしそれは、最初の空母12隻、戦艦3隻の時点の計画でしょう?」


 その後に追加で向かっている大輸送艦隊は、含まれていないはずだ。如何に第八艦隊に、戦艦、大型巡洋艦があろうとも、さすがに多勢に無勢である。


「合流される前に、最初の戦力だけでも叩こうとしているのだろう」


 草鹿は、南東方面艦隊は敵の各個撃破を狙っているのだ、と推測した。樋端が危惧する通り、最初の艦隊と、後発艦隊が合流した場合、第八艦隊単独で対抗は難しい。

 草鹿は、山本に向き直った。


「早急に増援部隊を派遣し、ロスネグロス島の敵を排除すべきと思います。ここで難儀しては、む号作戦の実施にも遅れが出ます」

「第二機動艦隊は、動かせるのか?」

「全艦は無理ですが、兵力の大部分は投入可能です」


 アラビア海海戦での夜戦での、突撃の際に被弾、損傷した艦艇が修理を受けている。比較的軽微なダメージだった艦も多く、魔技研の工作艦による修理で、前線復帰可能になっている艦も少なくない。


「では、予定を早めて、第二機動艦隊には、敵艦隊の撃滅を命じる。……この分では、第八艦隊の後詰めということになるかな?」


 すでに現地に近い第八艦隊が、アドミラルティ諸島に向かっているという。連合艦隊司令部としては、追認か、あるいは進撃中止のどちらかの選択肢しかないが、今回は前者という決断となった。



  ・  ・  ・



 第八艦隊司令長官、遠藤喜一中将は、ロスネグロス島の敵攻撃に行けと言われ驚いた。


「あー、本当」


 飄々としつつ、しかし彼の中では、第八艦隊は、『日高見』以下、南東方面艦隊を護衛するのが任務という認識だった。

 だから鉄砲玉よろしく突撃は、少し想定外ではあった。


「まあ、僕は鉄砲屋ではあるけれどね」


 命令とあればやるしかない。幸いなことに、第八艦隊には、41センチ砲搭載戦艦の『摂津』『河内』がある。


 偵察情報では目的地に、敵戦艦が3隻いるが、いずれも34センチ砲装備の格下である。

 参謀長の緒方 真記(まさき)少将が口を開いた。


「南東方面艦隊の見立てでは、敵空母はいずれも小型。その搭載機の大半は、防空用の戦闘機と思われるとのことです」

「本当かねぇ。実際に見たわけでないだろうに」

「偵察機の報告では、甲板には戦闘機ばかりだったそうです」


 ふぅん、と遠藤は頷いた。基地設営、飛行場が使用できるようになるまで、艦隊が制空権をカバーしなければならないから、戦闘機中心の編成というのもわかる。


 軽空母12、戦艦3、巡洋艦6、駆逐艦36、輸送船41――それがロスネグロス島にいる敵艦隊である。


「これで真正面から挑んだら……どうなるかなぁ?」

「敵艦隊は戦闘機中心と言っても、少数の攻撃機はあるでしょう。しかしこちらも空母を引き連れていくならば、制空権の問題はないかと」


 敵攻撃機が少ないなら、四航戦、六航戦の5隻の空母の戦闘機で充分と予想される。


「むしろ問題は、ニューギニア島の敵飛行場からの攻撃のほうだと思われます」

「なるほどねぇ」


 遠藤は口元を引き結ぶ。


 ――できれば、敵基地航空隊が来る前に、稲妻師団が敵を無力化してくれていると、助かるんだけどね。

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