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第三七二話、圧倒的航空攻撃


 時間は少し遡る。


 角田水上艦隊による夜戦の後、山口機動部隊は、敵大西洋艦隊に追い打ちの夜間航空攻撃を仕掛けた。


 しかし結果は、防御障壁によって阻まれ、想定よりダメージを与えることができなかった。


 遮蔽装置を看破された可能性もあり慎重になったものの、夜が明けてからの敵主力と第一機動艦隊との戦いに参戦すべく、準備に取りかかった。


 ここで、第二機動艦隊は、武本中将指揮の第七艦隊と合流した。

 第七艦隊は、敵大西洋艦隊への補給支援を図る部隊に対する襲撃を掛けた後、転移中継装置を用いて、第二機動艦隊のもとに到着した。


 二機艦で航空部隊を指揮する山口多聞中将から、遮蔽を見破られる可能性はあるものの、それを込みで攻撃計画が第七艦隊側に提案され、武本中将はそれを了承。


 かくて、二機艦側8隻の空母と、第七艦隊側5隻の空母から、九九式戦闘爆撃機18、二式艦上攻撃機18、計36機を13セット――468機という奇襲攻撃隊としては最大規模の攻撃隊が編成された。


 朝となり、敵大西洋艦隊が、第一機動艦隊に対して攻撃隊を差し向けた頃、二機艦、第七艦隊から攻撃隊が発艦し、遮蔽しつつ、艦隊に迫った。


 それが、第一機動艦隊攻撃隊に先んじて、テロス大将の大西洋艦隊を奇襲したわけだが、遮蔽装置が察知されている可能性を考えた山口多聞は、一計を案じた。


 それは、艦攻隊より先んじて、戦爆隊各一個中隊、126機を先行させたことだ。仮に敵が、遮蔽を察知できるなら、戦闘機隊で迎撃してくるだろう。その時は先行の戦爆隊が敵と交戦。

 護衛戦闘機と艦攻隊主力は後方で待機し、第一機動艦隊の攻撃隊が戦場に到達する頃にタイミングを合わせて仕掛ける。


 もし、敵が遮蔽を見破れないのなら、先行の戦爆隊はそのまま敵空母を急襲し、敵戦闘機の発進を妨害、後続を断つ。


 結果は、後者だった。


 異世界帝国大西洋艦隊は、奇襲攻撃隊の接近を気づけなかった。


 そもそも、昨夜の奇襲看破や偵察機撃墜騒動は、異世界側の個人のパイロットの能力であり、彼女が攻撃隊に参加し不在の結果、襲撃に対応できなかったのだ。


 先行の戦爆隊、九九式戦闘爆撃機三三型は猛然と敵艦隊の中に飛び込み、これまでのように空母を最優先攻撃対象として爆撃した。


 異世界空母もまた、第一機動艦隊攻撃隊の接近を察知し、直掩機を増強しようと発艦させようとしていたタイミングだったから、防御障壁を展開していなかった。


 飛行甲板上のヴォンヴィクス、エントマ戦闘機が、叩き込まれたロケット弾や機銃の雨によって貫かれ、爆砕された。


 その混乱の中、奇襲攻撃隊の後続部隊が到着。378機中、252機の二式艦攻が、対艦誘導弾を投下し、異世界帝国艦を襲撃した。


 この攻撃は、大西洋艦隊の空母に壊滅的被害をもたらした。飛行甲板が炎上し、艦橋を吹き飛ばされたリトス級大型空母は、防御障壁を展開することなく、対艦誘導弾の攻撃を集中され爆沈。


 リトス級大型空母、1隻に対して二個中隊18機がかかり、残る空母は1隻あたり一個中隊9機が仕掛けた。残りは戦艦や旗艦である航空戦艦『ディアドコス』に襲いかかる。


 さらに先行隊を除く、攻撃隊を護衛していた九九式戦爆126機も中隊ごとに突撃を開始して、巡洋艦、駆逐艦を爆撃した。


 本命の第一機動艦隊攻撃隊が来る前に、異世界帝国大西洋艦隊は、大型空母4隻、中型空母4、小型空母3が対艦誘導弾の猛攻により爆発、沈没。


 大型空母1、中型空母1が防御障壁の展開で沈没こそ免れたものの、初手の奇襲で飛行甲板を叩かれ、空母としての能力を喪失した。


 戦艦や巡洋艦にも被害は出たが、対空射撃により踏み込んできた九九式戦爆を十数機、返り討ちにした。


 だが、反撃を行った艦ほど、対艦誘導弾やロケット弾に被弾する羽目となった。逆に障壁を展開して自艦防御に徹した艦は、被害を免れている。


 第二機動艦隊と第七艦隊による奇襲攻撃隊により、少なくないダメージを受けた大西洋艦隊。しかし、これで終わりではない。


 本命である第一機動艦隊、攻撃隊705機が押し寄せたのである。



  ・  ・  ・



 もちろん、一機艦攻撃隊も無傷でやってきたわけではない。

 大西洋艦隊の上空を警戒していた空中直掩隊は、日本機の接近の報告を受けて、迎撃に向かっていた。――それ故、二機艦攻撃隊が戦闘機の攻撃を受けることなく、襲撃ができたわけだが。


 直掩のエントマ、ヴォンヴィクス戦闘機が、日本攻撃隊の阻止に向かう。その数およそ80機ほど。


 そんな迎撃隊だが、一機艦航空隊705機中、342機が戦闘機ないし戦闘攻撃機だった。


 つまり圧倒的多数の烈風、零戦五三型が、異世界帝国戦闘機をお出迎えし、逆に叩き伏せてしまった。


 多数の空対空誘導弾、もしくは正面からでも直進、かつ機銃より射程の長い光弾砲の雨は、異世界帝国戦闘機にまったく仕事をさせなかったのである。


 迎撃機を突破した攻撃隊。流星艦上攻撃機は、各中隊ごとに攻撃目標を定めて、1000キロ大型対艦誘導弾を次々に発射した。


 しかし、本命の攻撃は、異世界帝国艦の防御障壁展開行動により、思ったほどの成果は上がらなかった。


 対空砲の射程外からの誘導弾攻撃は、素直に障壁で阻止したほうがよい――異世界帝国大西洋艦隊では、ヴォルク・テシス大将の太平洋艦隊からの報告を受けて、そのように判断し、艦を守った艦長が多かったのだ。


 結果的に、一機艦攻撃隊も、障壁を使っている敵艦に対して、広く攻撃を分散しては効果が薄れるので、攻撃しやすくかつ重要対象に集中攻撃を仕掛ける方法に切り替えた。それにより、異世界帝国側は、外周に近い配置の戦艦3隻が、障壁を突破され、大破もしくは撃沈されたのである。


 本当は旗艦である航空戦艦を狙いたかったのだが、敵艦の光弾砲系列の対空砲を極端に回避する日本攻撃隊は、踏み込むことができず、外周近い戦艦――つまり盾となっているこれらを排除するに留まったのである。


 敵対空砲に対する拒否反応は、日本海軍航空隊には根強いものがある。

 開戦の第一次トラック沖海戦では、当時世界最強練度を誇っていた南雲機動部隊の攻撃隊が全滅した。


 以後も、散々煮え湯を飲まされた結果、日本海軍航空隊の攻撃機は、アウトレンジからの対艦誘導弾攻撃が、基本となり、必要以上の接近を嫌うようになった。


 艦爆による急降下爆撃は絶滅危惧種となり、いまだ近接爆撃を仕掛けるのは、奇襲攻撃隊の九九式戦闘爆撃機など、遮蔽装置付きの機種に限られている始末である。


 ともあれ、第一、第二機動艦隊、第七艦隊の攻撃隊による多数の攻撃隊は、航空戦を得意とする異世界帝国大西洋艦隊を、一方的に叩き、かなりの打撃を与えることに成功した。


 だが、防御障壁を用いた対応により、艦隊を全滅させるところまではいかなかったのである。

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