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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第三七一話、攻撃隊は肉薄する


 ムンドゥス帝国大西洋艦隊から飛び立った攻撃隊は、日本艦隊が航行している海域へ大挙押し寄せた。


 途中までは、偵察機が位置を通報していたものの、ある時からパッタリとそれも止んだ。おそらく日本艦隊の直掩機によって撃墜されたのだろう。


 しかし、攻撃隊はそれで進むのをやめるようなことはない。目的海域にいなければ、その付近を捜索すれば見つかる。


 それ以前に、敵もレーダーなどで、こちらの接近を探知するだろうから、迎撃機が出てくるに違いない。それが飛んでくれば、敵は近い。


 帝国攻撃隊パイロットたちは、日本戦闘機の襲撃を警戒し、同時に海上に敵艦隊がいないか目を凝らす。


 だが、目標海域に日本艦隊の姿はなかった。


 偵察機がやられた時点で変針し、位置を攪乱させようとしたのだろう。ムンドゥス帝国攻撃隊は、周辺に索敵の手を伸ばしたが、やはりどこにでも日本艦隊の姿はなかった。



  ・  ・  ・



『攻撃隊、敵艦隊を発見できず』


 ムンドゥス帝国大西洋艦隊旗艦、『ディアドコス』。攻撃隊からもたらされた報告は、大西洋艦隊司令部を困惑させた。


「日本艦隊がいない?」


 リーリース・テロス大将は訝る。


「偵察機からの位置報告が間違っていたのかしら?」


 広い海である。高くを飛ぶ航空機からは、海上の戦艦や空母などがマッチ箱程度にしか見えない。


 しかし、大艦隊ともなれば、船が航行する時に海に刻むウェーキなどを見逃す率は下がる。単艦しかいないとなれば、もしかしたら、ということもあるが、目視はともかく、レーダーまで無反応ということもあり得ない。特に数百機もの航空隊ともなれば。


「偵察機は?」

「敵艦隊発見以後しばらくして音信不通になっております。おそらく撃墜されたものと」

「このまま、日本艦隊が見つからないと、せっかく放った攻撃隊が無駄になる……」


 テロスは長官用の椅子に腰掛け、腕を組む。大変よろしくなかった。


「いったい日本艦隊はどこへ……?」

「長官」


 メルクリン参謀長が口を開いた。


「よもや、敵は転移で、こちらの攻撃隊を回避するつもりでは……?」

「!」


 その時テロスは、謎だったピースがはまったような感覚になった。


 そうだ。敵は転移が使えるのだ。明け方と同時に攻撃だって出来たのに日本艦隊がしなかった理由。こちらに先手を取らせて攻撃隊を引き出した後、転移で別の場所へ逃げて、攻撃隊にはずれを引かせる。


 そうなったなら、次は――


「全艦に対空警戒! 待機している全戦闘機の準備を。敵の攻撃隊が私たちに向かってきているわ」


 テロスは、日本軍の狙いにすぐに気づいた。今頃、転移を終えた日本艦隊から攻撃隊が放たれ、向かってきている頃だろう。


 直掩機以外に、空母に残っている戦闘機が飛行甲板に並べられ、発艦準備に掛かる。


 敵が迫っている予感はあるものの、実際に規模や位置を掴んだわけでもない。もし、今ではなく、数時間後の到来となれば、慌てて出した戦闘機が燃料切れになってしまう可能性もあったのだ。


 一方で各方向へ偵察機を出させた。転移した敵艦隊の位置を確認するのと、敵航空隊が迫っていれば、早めに察知するためだ。


「攻撃隊には、すぐに引き返すように命令。燃料を少しでも残した状態で、戻すのよ」


 テロスは通信参謀に命じた。攻撃を外された航空隊を早く戻す。うまくすれば、その護衛戦闘機隊が、こちらの防空戦闘に間に合う可能性もある。放った攻撃隊が大挙して戻ってくる光景を見れば、日本軍の攻撃隊も状況によっては撤退するかもしれない。


 そして、報告は入った。


「北方より、敵と思われる大編隊、接近中! 数百機の大編隊!」

「来たわね。忌々しい」


 テロスは唸る。すでに飛行している直掩隊はもちろん、空母甲板上に待機している戦闘機にも発進命令が下る。

 ……まさに、その時だった。



  ・  ・  ・



 それは突然姿を現した。

 九九式戦闘爆撃機の編隊。それらが最高時速650キロ超えの猛スピードで、異世界帝国大西洋艦隊の周りに出現すると、肉薄してリトス級大型空母に襲いかかった。


「こいつは贈り物だ! 受け取れよ!」


 海龍戦闘機隊長、宮内 桜大尉は、翼下のロケット弾を敵空母の艦橋に叩き込む。全長320メートルの巨大空母、その右舷側にある空母艦橋にロケット弾が吸い込まれ、爆発。艦橋要員を吹き飛ばした。


 高速で、一気に飛行甲板の上を駆け抜ける九九式戦爆。宮内機に後続する僚機は、今まさに発艦しようとする敵戦闘機にロケット弾と機銃弾を撃ち込んで、飛び立つ前にまとめて吹き飛ばしていく。


「ざまあ! 内田の姉貴たちの分にゃ足りないが、確かに届けたぜ!」


 一本棒のように列を形成して突っ込んだ海龍戦闘機第一中隊9機は、1隻のリトス級空母の艦上を叩いた。


 敵大西洋艦隊の大型空母、そして中型空母に対して、第二機動艦隊8隻の空母と、第七艦隊の6隻の空母から飛来した、奇襲攻撃隊の九九式戦爆各一個中隊が肉薄攻撃を仕掛けた。


 昨夜の航空攻撃の不首尾。それで引き下がる第二機動艦隊の、角田と山口両提督ではなかった。


 内田少佐ら攻撃隊と、偵察機搭乗員の報告から、遮蔽装置が一部見破られているフシがあるものの、まだ全体に普及しているか怪しいと結論づけた山口は、第七艦隊と合流し、第一機動艦隊の攻撃隊と連動して、攻撃隊を放った。


 遮蔽装置が見破られていたとしても、第一機動艦隊の攻撃隊より先に仕掛けることで陽動になる。また戦爆隊が先陣切って突っ込むことで、迎撃機に妨害されても、そのまま戦闘ができる。


 ……結果から言えば、敵は急接近する奇襲攻撃隊の遮蔽を見破ることができなかった。


 いつものように敵に肉薄した九九式戦爆隊は、敵空母の飛行甲板と、そこに展開していた戦闘機を叩き潰して、制空権奪取の働きを見せた。

 異世界帝国各空母は、九機ずつの戦爆のロケット弾攻撃を受け、たちまち炎上した。


 想定より早い、しかも不意をついた襲撃に、異世界帝国艦隊に動揺が走る。戦闘機を飛ばすはずだった空母は、大半が艦載機を焼かれ、粉砕されたが、それで終わりではなかった。


 昨夜は運悪く届かなかった大型対艦誘導弾を抱えた二式艦上攻撃機隊が、どさくさに紛れて接近していたのだ。

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