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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第三四四話、防御障壁の破り方


 エネルギーの壁である防御障壁。この防御膜は内外の攻撃を阻む、光の壁である。

 これを突破するには大威力の攻撃を集中し、障壁を維持できなくするまでエネルギーを削るのが定石となりつつある。

 この強固な壁を、実は徒歩で通過できると聞いて、富岡が驚いても無理もないことだった。


 陸軍魔法研究所のトップである杉山少将は告げる。


「少し考えればわかることなんですが、障壁を展開する時、装置から一定範囲に広がっていくわけですよ。で、その時、その範囲内にあるものはどうなるか……」

「吹き飛ばされる?」

「一定速度以上だと、そうなります。緊急展開する時、ある範囲から高速で展開され、そこにあるものは、障壁に押される形で弾き飛ばされます」


 杉山の説明に、神明も思い当たるところがある。九頭島に襲来した敵航空戦艦『プロトボロス』に接近した戦艦『扶桑』が障壁を緊急展開して、敵艦に衝撃を与えた。また、フィリピン、マニラのキャビデ軍港を日本機動部隊が空襲を仕掛けた時、港内で旗艦級戦艦が障壁を使用し、味方戦艦を吹き飛ばしていた。


「ただ、それだと使い難いじゃないですか。防御したいだけなのに、味方まで弾き飛ばすって。海軍さんは、フネとフネの間に間隔があるんで、普通はそういう事故は起こらないでしょうけど、陸軍だと割と味方が近いことも少なくないですから、これが意外と危ない」

「確かに」


 富岡は頷いた。杉山は続ける。


「で、よくよく確認したら、一定速度以下のものは弾き飛ばさず、通過することがわかったんですよ。その見極めは難しいのですが、少なくとも人間が走る程度なら大丈夫、と。……ああ、展開している時に、全力疾走して正面からぶつかると抵抗があるみたいなんで、注意が必要ですが」


 杉山は指を二本立てた。


「それで、防御障壁を抜けて敵にダメージを与える方法を考えました」


 1、人間が障壁の内側に入って爆発物を仕掛け、障壁から脱出して爆破。

 2、航空機より、パラシュートで減速した誘導爆弾を投下する。


「これが、特に能力に頼らない、普通の兵隊でやれる戦法だと思います」


 一般兵と少し改造した普通の兵器で、防御障壁を抜けて装置を破壊する方法である。

 神明が口を開く。


「少なくとも、41センチ砲数や大型誘導弾を数十発も撃ち込んで破壊するよりは楽だろうな」

「そりゃあ、1発の爆弾でやれるなら、余った爆弾で他の敵をやれるから、攻撃にも余裕ができるだろうね」


 杉山が皮肉げに言うと、富岡が真面目な顔になる。


「兵站においても、効率は雲泥の差だ。ハワイ作戦で、一航艦の一式陸攻が消費した爆弾の量は、海軍の弾薬在庫に直撃した。補充が追いつかないと、南東方面艦隊にも聞こえている」


 アヴラタワーの障壁1つを抜くのに89発も使ったという。これには報告を受けた第一航空艦隊の福留中将も驚いていた。


 現状、あまりに効率が悪すぎる。故に、これを1発で破壊できる可能性があるなら、そちらを選ぶのは当たり前と言えた。


「富岡閣下、自分は陸軍なので不勉強なのですが、南東方面艦隊とは、陸上基地の部隊という解釈でよろしかったですか?」

「いや、一応、方面艦隊なので、フネも含みます。第八艦隊が配備されるという話ですが、編成がどうなるかはまだ……」

「そうでしたか。陸上攻撃機の話をされたので、てっきりそうかと……」

「杉山が勘違いしたのは、海軍には航空艦隊という基地航空部隊をまとめた部隊があるせいだろう」


 神明の指摘に、富岡は、なるほどと頷いた。


 航空隊をまとめて、それを「艦隊」と表記する日本海軍である。艦艇はなくとも艦隊なので、素人には紛らわしいのである。


「それはそれとして、海軍は新造艦を削ってでも、誘導弾をはじめ、武器弾薬の大増産をかけている」

「弾がなけりゃ、鉄砲も大砲も撃てないからねぇ」


 海軍では、沈没艦のサルベージによる回収を多用してきたことで、艦艇数が戦前より増えている。開戦から弾薬備蓄の増産に注力が向けられていていたが、日本海軍は貧乏海軍で平時から弾薬備蓄は少なめ、不足にあった。


「それで、杉山さん」


 富岡は改まった。


「先ほど、敵の防御障壁を破る方法を説明した時、能力に頼らない普通の兵隊が、と言われた。これは能力者だとまた別ということですか?」

「まさしく」


 陸軍魔法研究所の所長である杉山にとって、その質問は専門分野である。


「といっても、能力者の能力は、ある程度被るところはあっても多種多様なのが難点でありまして、中々都合よくいきません」


 そう前置きし、杉山はニッコリした。


「まあ、一番簡単な方法があるとすれば、敵の障壁の内側に爆弾なり誘導弾なりを転移させられる能力でしょうなぁ」


 厄介なのは障壁。しかしその懐に転移で爆弾を飛ばせれば、わざわざ障壁を抜けるために肉薄したり、パラシュートで速度調整などしないで済む。


 そもそも、障壁を抜けると言っても陸上ならば歩くなり走るなりで入れるが、海の上では無理。かといって陸上だって、周りに敵がいれば、肉薄するのも簡単ではないだろう。


「秋田に爆弾持たせるか」


 神明がポツリと言えば、富岡は首を横に振る。


「いや、さすがに秋田大尉の転移は、海軍にとって貴重過ぎる。そんな危ないことに使えない」

「転移能力者は貴重ですからなぁ」


 杉山は、うんうんと頷いた。富岡は聞いた。


「やはり、難しいのですか。転移とか瞬間移動というのは」

「海軍さんは、装備に落とし込むことで、バンバン転移してますけどね」


 日本海軍の艦艇や航空機は、転移連絡網や転移移動装置を装備することで、限られたルート間ではあるが、転移移動を可能にしている。


「能力者として見るなら、転移魔法というのがそもそも難しい。使える使えないで言えば、いるにはいるんですけど、実戦で使えるレベルかと言われたら、途端にほとんどいなくなりますよ。……あ、一杯どうぞ」

「恐縮です」

「――で、装備に話を戻しますが、普通の兵隊が、地上の構造体Xを破壊する場合は、肉薄して障壁の中に入るしかありません。戦車などなら、最近アメリカさんから入ってくるようになったバズーカとかいうロケットランチャーを使うわけですが、施設など大きなものになると、特殊な爆弾を使います」

「特殊な爆弾、とは……?」

「海軍さんが対空砲弾に使っている一式障壁弾がありますよね? あれに細工して、障壁を展開して際に、そこにある対象物を分断、破壊します」


 一式障壁弾――本来は、航空機の目の前に壁を発生させて、それにぶつけて撃墜する兵器だ。


 ただこれは水上艦艇にも有効で、装甲の脆い輸送船や駆逐艦を、当たり方によっては両断してしまうこともあった。その切断力を利用して、陸上でも使おうというのだろう。


「障壁の中で、障壁をぶつけるというのもありだな」


 神明が言えば、杉山は片方の眉を吊り上げた。


「まあ、障壁の中じゃ、何でもできちゃうわけだからね。盾に盾をぶつけてもいいわけだ。理想を言えば、遠くから防御障壁の根源を破壊できることなんだけど。わざわざ接近しなくてもいい方法の開発、これが課題だね」

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