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第三二五話、反撃の日米艦隊


 第一機動艦隊から飛来した流星艦上攻撃機隊は、まず第一陣が敵主力戦艦列へ、その矛先を向けた。


 異世界帝国太平洋艦隊の主力戦艦群は11隻。前7隻が、日本軍第一艦隊と砲撃戦を演じる中、後ろの4隻が最強兵器の充填を行っていた。


 流星艦攻隊の第一陣は、まずその4隻に狙いを定めた。


 大鶴隊、紅鶴隊、翠鷹隊、蒼鷹隊は、目標となる戦艦――ウラヴォス級に一隊一隻掛かりで襲いかかった。


 誉エンジンを響かせ、艦上攻撃機としては高速で距離10キロほどに近づくと、次々に1000キロ対艦誘導弾を切り離した。


 魔力誘導により、命を与えられたように目標へと向かう誘導弾。狙われたウラヴォス級戦艦は、対空砲を用いて誘導弾の迎撃を行う。


 光弾が真っ直ぐに飛び、高角砲弾が目標近くで破裂。機銃弾が雨の如く放たれる。それらに掠め取られ、爆散する誘導弾。しかし、1隻あたり18発も振り向けられた攻撃、そのすべてを撃墜することはとても叶わない。


 ヴラフォス級戦艦は、基準排水量3万5000トン。

 全長230メートル、全幅36メートルの戦艦は、主砲が45口径34.3センチ連装砲六基と、火力面ですでに一線級とは言えない性能だ。


 40インチ前後の砲が主流となっている現在からすると、旧式と格下扱いもされるウラヴォス級。だが、異世界帝国の誇る熱線砲を追加装備した結果、運用に工夫はいるが、格上戦艦とて、一撃で葬る戦艦に早変わりした。


 事実、アメリカ戦艦を開幕早々に3隻撃沈。日本軍第一艦隊の旗艦『播磨』を葬ったのは、この旧式戦艦の熱線砲であった。


 それに味を占めたか、それとも40センチ砲級戦艦との砲撃戦にまともに参加しても役に立てないと判断されたのか。


 とかく後ろにいたヴラフォス級だが、艦攻隊に狙われる格好となった。

 熱線砲の次弾エネルギーをチャージしており、それ以外への供給が最低限となっているウラヴォス級戦艦4隻に、対空砲をすり抜けた誘導弾を防ぐ手段は存在しなかった。


 比較的、堅牢な戦艦といえど、40センチ砲弾に匹敵する貫通力を持った対艦誘導弾の前では、ウラヴォス級の装甲は不足していた。


 次々に着弾、艦上構造物を破壊、あるいは水平装甲を貫通して内部で爆発。熱線砲のエネルギーが誘爆した例もあり、2隻がたまらず轟沈。やや遅れて残る2隻もまた誘爆によって粉々に吹き飛んだ。


 攻撃隊指揮官の垂井少佐は、待機していた翔鶴隊、瑞鶴隊、飛隼隊に攻撃を指示を出した。


「戦艦部隊を援護。敵主力戦艦へ攻撃を開始せよ。目標は、各攻撃隊長に一任する!」


 敵戦艦群には、護衛艦がついていない。第一艦隊の巡洋艦、水雷戦隊との戦いにすべてを振り向けたのだろう。


 日本軍の航空隊が、基地飛行場攻撃に集中し、こちらに来ないと考えていたのだろうがそうはいかなかったということだ。


 五航戦の3空母の攻撃隊が、それぞれ突入を開始した。味方が、敵戦艦を砲撃しているが、それより遥かに離れた場所から対艦誘導弾を放つので、艦砲に巻き込まれることはない。


 敵は主力戦艦のオリクト級。ウラヴォス級に比べて強固な戦艦だが、対艦誘導弾を集中されれば大きなダメージを与えられる。あわよくば撃沈も可能だろう。戦艦の砲術屋たちから恨みを買うかもしれない――皮肉な思いをよそに、それぞれ対艦誘導弾を発射した。


 これで、形勢は日本側に傾く――攻撃隊搭乗員らは思った。


 しかし、ここでオリクト級戦艦は、一時砲撃を中止し、防御障壁を展開。対艦誘導弾の集中を防いだ。


「何だと!?」


 撃破、ないし撃沈を想像した五航戦の搭乗員たちの期待は見事に裏切られた。先のウラヴォス級戦艦の場合、熱線砲にエネルギーをチャージしていたため、防御障壁を展開することができなかった。だから攻撃がスムーズに通ったのだが、オリクト級戦艦部隊は、必要であればいつでも障壁を展開できるようにしていた。


 五航戦の流星艦攻が突撃を始めたので、敵戦艦部隊は、一度砲撃をやめて防御に専念し、やり過ごしたのである。


 テシス大将の太平洋艦隊では、日米軍の決戦前の航空攻撃を想定していたから、守りへの移行も迅速だった。


 対艦誘導弾をすべて凌いだ異世界帝国戦艦群だったが、それに安堵している余裕はなかった。


 対艦誘導弾の集中弾によって、障壁エネルギーが消耗し、第一艦隊戦艦からの砲撃が、防御を貫通してきたのである。


 僚艦を失った『遠江』の46センチ砲が、一隻のオリクト級戦艦をハンマーで叩き潰すが如く、その装甲を貫き、爆発させた。


『紀伊』『長門』、そして『薩摩』の41センチ砲弾が、立て続けにそれぞれが目標としていた戦艦の障壁を破壊し、それぞれ損傷を与える。


 結果として、五航戦航空隊は、戦艦部隊を難儀させていた敵防御を消耗させるというアシストを果たすことになった。


 さらにここで、第二機動艦隊後衛より前進した航空戦艦『敷島』以下、第二艦隊と合流した水上打撃部隊が、その砲戦可能距離に到達する。

 距離3万8000にて、『敷島』が艦首の46センチ三連装砲二基六門を発砲。第五戦隊の『肥前』『周防』も41センチ連装砲を、異世界帝国戦艦群に撃ち込んだ。


 大型巡洋艦『雲仙』以下、第十戦隊、そして第七戦隊の金剛型戦艦も荒波を蹴って突撃を開始し、距離を詰めて射撃に加わる腹づもりだ。


 ここにきて、戦艦同士の戦闘は、日本海軍側が有利に傾きつつあるように見えた。

 だが、この時、第一艦隊の護衛部隊である巡洋艦部隊、第一、第三水雷戦隊は、敵巡洋艦、駆逐艦部隊との交戦で、大きなダメージを受けていた。


 乱戦となり、激しく攻撃しあった結果、彼我共に同等の被害を受けたのだが、それはつまり、数の勝る異世界側が、迎撃を抜けたことを意味する。


 異世界帝国駆逐艦7隻が、第一艦隊護衛部隊の迎撃を突破し、戦艦『遠江』、第三戦隊の戦艦群へ、雷撃を行った。


 ようやく戻ってきた弾着観測機からの通報で、第一艦隊戦艦群は、高角砲に装填された一式障壁弾による防御を選択。敵戦艦群への砲撃を継続しながら、高角砲弾による障壁防御を行い、雷撃を切り抜けた。もっとも、障壁を抜けてきた一本が、『遠江』に命中し、わずかながらの浸水被害をもたらしたが。


 そしてここにきて、異世界帝国主力艦隊に動きが見られた。

 戦艦部隊が舵を切り、退避し始めたのだ。



  ・  ・  ・



 その頃、アメリカ第三艦隊は、異世界帝国主力艦隊の別動艦隊と交戦していた。


 開幕で、敵戦艦の熱線砲を受けて、『サウスダコタ』『ワシントン』『ノースダコタ』を撃沈された第四群だったが、復讐に燃える『ニュージャージー』『インディアナ』『バーモント』は、味方戦艦3隻を沈めた敵ウラヴォス級を集中。瞬く間にその戦闘力を奪い去った。


 戦艦数3対6。しかしすべて34.3センチ砲搭載の格下であるウラヴォス級。アイオワ級、サウスダコタ級戦艦の強固な防御性能を前にその装甲を穿つことはできず、逆に強力な40.6センチ三連装砲の猛烈なカウンターを受けて、大破、沈没していった。


 そして、巡洋艦と駆逐艦部隊同士も激しさを増す。


 米軍重巡洋艦7、軽巡洋艦6に対して、異世界側は重巡洋艦5、軽巡洋艦6と、さほど差はないように見えた。

 しかし、軽巡洋艦の火力は米側が圧倒していた。ブルックリン級、セントルイス級、クリーブランド級の47口径15.2センチ三連装砲は、異世界帝国軽巡洋艦の火力を威力、砲門数共に勝り、これを制圧していった。

 砲撃型軽巡の強みで、敵を圧倒し、続いて数で劣勢な駆逐艦部隊を支援。重巡同士の戦いは拮抗したものの、軽巡以下では米艦隊が戦いを有利に進めていた。


 そして唐突に事態は動く。


『敵艦隊、反転しつつあり!』


 旗艦『ニュージャージー』のウィリス・リー中将のもとに、その知らせは届くのだった。

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