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第三〇五話、青電改、高高度迎撃す


 日米艦隊が、異世界帝国航空隊による連続攻撃を受けていた頃、ジョンストン島近海にパライナ重爆撃機が1機迫っていた。


 テシス大将から、音信不通となったジョンストン島の様子を偵察するように言われた機体だ。

 しかし、その重爆撃機に対して、ジョンストン島を制圧した日本海軍第一航空艦隊は、障壁搭載機を迎撃するため、青電高高度迎撃機改を送った。


 鳶田(とびた)辰郎中尉は、九頭島試験航空隊から、今回の第一航空艦隊、ジョンストン島防空任務を与えられ、派遣された。


「地上管制、ありがとさん! おかげで、敵重爆を捕捉っ!」


 鳶田中尉率いる青電は9機。いずれも、障壁搭載爆撃機対策のための改良型青電を使用し、テストをしてきた搭乗員が乗っている。……といっても、搭乗員は鳶田を合わせ3人のみ。残りはコア制御の無人機である。


「敵はまだこちらに気づいていない! このまま仕掛けるぞ!」

『了解!』


 気づかれていないのも、遮蔽装置の効果あってのことだ。この青電改は、とある事情から、敵から発見されず、こっそり攻撃位置につけるように遮蔽装置を積んでいるのだ。


「マ式誘導、照準固定、空対空誘導弾、投下ァー!」


 鳶田は無線に怒鳴った。青電の機体下部、箱形の底が開き、積んできた中型誘導弾が落下した。一つ、二つ、三つ――


 それらは機外に放り出された途端、ロケットエンジンを噴射して飛んだ。母機である青電の魔力照準波を辿り、それめがけてぶつかるために。


 9機の青電から、本来の搭載数をオーバーしてなお中型誘導弾が、吐き出され続ける。それらは照準波に乗って、異世界帝国重爆撃機へと吸い込まれ、爆発した。


「!? やめぇー! 攻撃中止! 攻撃中止だっ!」


 慌てて鳶田は叫んだ。


 投下され続けていた箱形の底が閉じて、これ以上の誘導弾の使用はストップした。しかし、すでに放たれた十数発は、爆発墜落する敵重爆撃機になお殺到し、粉々にしてなお吹き飛んでいた。


「あーあーあー……。くそ、防御障壁を展開していなかったのかよ!」


 鳶田は吐き捨てる。


 青電改は、偵察攻撃機である彩雲改が搭載した特マ式収納庫を装備していた。

 収納魔法を用いた爆弾倉に、機体搭載量を遥かに超過した重量物である誘導弾を積む。本来、機体にかかる重量除外はもちろん、懸架や収納スペースを最小限に留めることができる代物だ。


 では何故、迎撃機である青電に特マ式収納庫を装備させたかだが、ずばり防御障壁搭載爆撃機撃墜用である。


 一見、無敵に見える防御障壁だが、それを維持するためにはエネルギーを必要とする。外部からの衝撃を受け止め、無効化する障壁も、エネルギーがなくなれば展開できなくなる。


 であるならば、ひたすら威力の高い攻撃をぶつければいい。かつて、マニラ沖で、異世界帝国の旗艦級超弩級戦艦を、第一艦隊の戦艦部隊が総がかりで砲撃を浴びせた結果、障壁を破り、撃沈せしめた。

 それを空でやっただけである。


「障壁付きの新型だというから、誘導弾をしこたま撃ち込んだのに……」


 まさか障壁を展開していなかったとは。射撃時の隙をつくらないために、遮蔽装置で身を隠して接近したのが、裏目に出た。


 もしレーダーや目視で確認できる状態だったなら、敵重爆撃機も障壁を展開していただろう。敵機が周りにいないからと、重爆型は防御障壁をしていなかったのだ。


「障壁を展開している状態で、撃墜しなきゃ意味がないのに」


 攻撃を当て続ければ、いつか墜とせるのはわかっていた。だから、どれくらいの誘導弾をぶつければ、敵重爆の障壁を破砕できるか、その実戦での数値が欲しかった。


「誘導弾だけ浪費して……こりゃあ怒られるな」


 鳶田は天を仰ぐ。どこまでも真っ青な空が広がっていた。


「くそっ。……電光一番より、各機。状況終了、帰投する」



  ・  ・  ・



 転移巡洋艦『釣島』のもとに、第一機動艦隊は転移移動していた。


 先に転移し、異世界帝国主力艦隊の後衛空母群を叩いた山口中将の潜水遊撃部隊も、第一機動艦隊が転移すると聞いて、合流した。


 山口は、小沢長官が敵巨大海氷空母を攻撃すると聞いて、自分たちの奇襲航空隊も参加するつもりだった。


『我々は、どこを叩けばいいですか、小沢さん』

「……うむ、山口の部隊には、オアフ島の北にあるヤツを叩いてもらいたい」

『遠いですな。理由を伺っても?』

「我が一機艦は敵中にいるが、一部の潜水型水上艦はともかく、主力の空母はおそらく長居できん」


 艦載機を発艦させたのち、第一機動艦隊は、第二機動艦隊や米艦隊の後方へ転移離脱する可能性が高い。だがら潜水しながら敵中を横断できる山口の機動部隊には、やや遠い敵海氷空母を割り当てたのだ。


「それでなくても、搭乗員を今日はフルで二度も使っているだろう? 少し休ませてやれ」


 小沢の脳裏には、フィリピン沖海戦で、艦載機がすり減るまで攻撃隊を繰り返したことが残っていた。一応の勝利の後の、搭乗員の大量消耗には、血の気が引いたものである。


「あと、神明が言うには、オアフ島の東にある海氷空母群から、第二次攻撃隊が出てくることがあった場合、北の海氷空母を中継する可能性がある。そうなると米艦隊が危ないかもしれない。特に兵を載せた上陸船団がやられたら、作戦中止に追いやられる」

『それはいけませんな。了解です。我が遊撃部隊は、北にいる海氷空母を叩きます!』


 山口の遊撃部隊は北上を開始した。

 小沢は、第一機動艦隊に指令を出した。


「一、三、五航戦から、攻撃隊を編成。A群、B群を放ったと思われる海氷合体空母を攻撃する!」


 第一航空戦隊『大鶴』『紅鶴』『祥鳳』、第三航空戦隊『翠鷹』『蒼鷹』『白鷹』、第五航空戦隊『翔鶴』『瑞鶴』『飛隼』9隻のうち、直掩空母である『祥鳳』『白鷹』以外の7隻から攻撃隊が飛び立つ。


『大鶴』『紅鶴』からは、零戦五三型36機、暴風戦闘機=F4Uコルセアの日本海軍仕様36機、流星艦上攻撃機71機、彩雲偵察機5機の148機。


『翠鷹』『蒼鷹』『翔鶴』『瑞鶴』『飛隼』の5隻からは零戦五三型88機、流星艦攻135機、彩雲偵察機10機、合計233機が出た。 


 さらに小沢は、C群を放った巨大海氷空母に、第二艦隊から潜水可能な『大和』『武蔵』ら第二戦隊を中心にした潜水水上打撃部隊を抽出し、これを当てた。


 第一機動艦隊は、山口の遊撃部隊の分を合わせて、確認された巨大海氷空母6隻のうち4隻に対し、攻撃戦力を送り出したのだ。


 その頃、異世界帝国航空隊の連続攻撃を受けている第二機動艦隊、ならびに米第三艦隊は正念場を迎えつつあった。

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