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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第三〇一話、氷山空母、現る


 哨戒空母『大間』偵察機の通信は、第一機動艦隊にも届いた。

 そして第一報に相次ぎ、哨戒空母偵察機や偵察潜水艦から、通報が相次いだ。


 海氷群が一カ所に集まって、巨大な構造体になっていく。それはさながら海に浮かぶ滑走路、否、空母のようだ、と。それらは、現状6つ、確認された。


「敵は、超巨大海氷空母を用意していたか」


 司令長官、小沢治三郎中将は、皮肉げに口元を歪めた。


 I素材を解析し、日本海軍でも今回のハワイ作戦で、それを応用したジョンストン島巨大飛行場、丙型海氷空母集合の即席海氷飛行場、その他に利用した。

 似たようものが日本にあるのだから、本家本元の異世界帝国に、同様の兵器がないわけがなかった。


「貴様の言った通りだったな、神明」

「何か仕掛けてくるとは思っていましたが――」


 神明参謀長は、やや顔をしかめた。


「こうも早く集合合体して空母乃至飛行場にしてしまうとは、まだまだこちらもI素材に関する解析が足りなかった」

「短期間でよくやったと思う。あちらさんは、こちらより前にそれを作ったわけで、当然積み重ねてきたものが違う」


 小沢は苦笑すると、ボソリと呟く。


「氷山空母、か」

「アメリカの参謀が言っていましたね。海氷航空隊の話をした時に」


 作戦前の合同会議の際、飛行場や空母以外から、異世界人は航空機を飛ばしてくるから注意しろ、と忠告した時の話だ。


 はじめは、冗談と思ったような素振りの米海軍参謀たちだったが、そのうちの一人が言った。


 まるで『氷山空母』のようだ、と。それは何だと日本側が確認すれば、どうやら英国人が、適当な氷山を利用して洋上飛行場、もしくは巨大空母として使おうと考えたらしい。


 実際、本国を捨て、カナダへ撤退した英軍は、空母不足から本気で氷山空母を作ろうと実験をした。しかしコスト面などの理由で中止されたという。


「I素材のことがなければ、我々も一笑に付していたかもしれん」


 小沢は表情を引き締めた。


「さて、予想はしていたが、これで敵には小規模空母群が6つ現れたことになる。こいつを潰さねばならないが……」

「問題は、すでに敵航空隊が発艦していることです」


 神明は言った。


「多数の敵航空機が、第二機動艦隊、米艦隊に殺到します」

「やはり、こちらからも戦闘機を出して、艦隊防空の支援が必要だろうな」


 小沢は海図台を見下ろした。偵察機の情報で、敵の海氷空母のおおよその位置は判明している。


「そして可能ならば、敵の海氷空母を一つか二つを潰しておきたいところだ」

「狙うならば、日米合同艦隊と敵主力艦隊にほど近い二つがよいかと」

「理由は?」

「敵艦載機の航続距離の問題です」


 特にオアフ島より東の海氷群から飛び立った部隊は、目標としているだろう日米合同艦隊から600から700キロほどの長距離飛行を強いられる。


 これらは攻撃隊としては最後尾となる部隊だが、戦闘で燃料を消費した後、オアフ島東まで戻るだけの燃料はない。そうなると、近くの飛行場か空母に下りねばならなくなる。


「前衛の二つが、その補給基地に打ってつけです。艦隊から近い分、反復攻撃をしやすい位置にありますから、この二つ……理想を言えば、敵艦隊後方のもう一つも潰せれば、撃墜できなかった帰還困難機を海に沈めて減らすことができます」

「うむ。そのためにも、まずは日米艦隊に直掩の傘をかけねばな。――航空参謀!」


 小沢は、第一機動艦隊の各空母から、戦闘機隊の発艦を命じる。それを受けた青木航空参謀は直ちに、三つの航空戦隊に指示を出す。


「さて神明、敵海氷空母の始末だが――」

「水上打撃部隊を前進させ、敵海氷空母を強襲します。……ここに――」


 地図を指し示す神明。敵主力艦隊の後方――南東方向。


「山口機動部隊の転移出口である浦賀型四番艦の『釣島(つるしま)』があります。ここに第一機動艦隊を転移させ、水上打撃部隊は前進、後方の一つを潰します。残りの前衛の二つについては、我が第一機動艦隊の艦載機による攻撃隊を用います」


 第二機動艦隊、米第三艦隊と違い、第一機動艦隊は、まだ攻撃隊を発進させていない。戦闘機隊を、合同艦隊援護に差し向けるが、攻撃機はほぼ全機使用可能だ。


「敵の後方――つまり、異世界側からしたら友軍の方向から飛んでくる航空隊なので、誤認して迎撃されずに近づける可能性もあります」


 敵にはレーダーはあるが、鹵獲した敵機には、敵味方を識別するような装置は積まれていなかった。目視距離まで、友軍と誤認させられる可能性はあった。


「しかし、その場合、艦隊は敵中ですよ」


 首席参謀の大前 敏一大佐が地図を睨んだ。第一機動艦隊の転移場所は、敵主力艦隊の斜め後ろの方向である。


「敵に見つかれば、第一機動艦隊は敵主力艦隊や残存航空機から袋叩きにされます。潜水型水上艦艇部隊は、潜って逃げられますが、主力の空母や巡洋艦は潜水できません」

「なに、その時は、ギリギリまで引きつけて転移離脱すればいい。奴らに無駄攻撃を誘える」


 神明が言えば、小沢はニヤリとした。


「我々は、ハワイ作戦では臨機応変に戦う。各部隊を補助、援護しつつ、敵に海氷空母が現れたならば、優先的にそれを始末する。どんどん敵を引っかき回してやろう」


 神明以下、参謀たちは頷いた。

 第二機動艦隊、米第三艦隊より、やや後方に待機していた第一機動艦隊は、行動を開始した。


 牽引してきた乙型海氷空母を切り離すと、残る9隻の航空母艦から戦闘機隊を発艦させた。なお乙型は業風無人戦闘機を搭載しているものの、空母といいつつ自力航行能力を持たない。故に、第一機動艦隊から切り離して、主力援護に放った戦闘機隊の、着艦用プラットフォームとなる予定だ。



  ・  ・  ・



 その頃、ジョンストン島の第一航空艦隊では、第二次攻撃隊の発進準備が進められていた。


 第一次攻撃隊は、現在オアフ島へ飛行中。第二次攻撃隊は、引き続き地上攻撃装備だが、敵海氷空母出現の報告を受けたため、そちらへの攻撃隊を振り向けるべきか、検討が行われていた。

 が、その前に一つの報告が飛び込む。


「長官、第一次攻撃隊より、偵察機と思われる敵重爆撃機1機とすれ違ったと通信が入りました!」

「なに?」


 第一航空艦隊司令長官、福留中将は、参謀長の三和大佐と顔を見合わせた。


「ここまで飛んでくる重爆で単機となると、例の光線兵器持ちか?」

「おそらくは。昨夜の占領で音信不通となったジョンストン島の様子を確認しにきたのでしょうが……」


 三和は顔をしかめる。


「今、ここは攻撃隊でいっぱいです。仮に光線兵器の一発でも撃たれた場合、思いの外、大きな被害が出る可能性があります」

「青電を出す」


 福留は即断した。高高度迎撃機である青電が一個中隊、すでに運び込まれ、防空任務に就けるようになっている。


「問題は、撃墜できるか、だな」


 敵の新型重爆撃機は、光線兵器と同時に防御障壁も搭載している。こちらの火力が足らなければ、撃墜できない恐れがあった。

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