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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第二九三話、前進航空拠点


 ジョンストン島に上陸した海軍設営隊は、I素材を使い、島の周りの海を異世界氷で凍らせて、島を拡張していった。


 その間に、第六十一戦隊を構成する転移巡洋艦『浦賀』『志発』が、転移ポイントを展開。すると別場所から整備兵や物資を積んだ輸送船が、順次転移してきて、ジョンストン島に揚陸活動を開始する。


 浦賀型転移巡洋艦は、異世界帝国の潜水型巡洋艦を改修、改造を施したものである。


 基準排水量8500トン、全長180メートルと、異世界帝国の主力軽巡洋艦メテオーラ級とほぼ同等の艦体を持つ潜水型巡洋艦だが、日本軍は、機関、艦橋ほか船体構造物、武装などを日本艦型に換装した。


 主砲は15.2センチ連装光弾砲三基六門。対空用に8センチ連装光弾砲四基八門、20ミリ連装対空機銃一〇基二〇門。他に61センチ四連装魚雷発射管一基四門、艦首魚雷発射管四門、そして転移マーカーこと、転移中継装置を搭載している。


 この転移中継装置が、浦賀型を転移巡洋艦たらしめる装備である。物凄く簡単に説明すれば、転移連絡網で用いられる転移点を装備する、移動する転移マーカーである。


 転移連絡網によって、転移マーカーの設置された場所へ比較的自由に艦艇移動ができるようになった日本海軍だが、あくまで決められた場所への移動しかできなかった。


 以前、敵機動部隊を捕捉するために、転移マーカーを載せた零式水上偵察機をモルッカ海に送るという荒技を行ったことがあった。だが敵機の妨害の危険性のほか、マーカーが流されるという問題が発生した。


 そこで考えられたのが、マーカーを移動させて、そこを転移出現点にしようという案である。これで転移マーカーのない海域に進出し、艦船の転移移動を可能とする。


 味方への補給や輸送の他に、敵が予想だにしない海域への奇襲行動と、戦略の幅を広げるものとして、開発が進められた。

 そして先の偵察機で行った際の敵機の迎撃などを見ればわかる通り、転移艦は敵地に飛び込む場合、単艦行動になるため、敵に発見されないことが望まれた。


 既存の潜水艦や潜水型艦の中で、候補が選ばれたが、比較的余裕のあった敵鹵獲潜水型巡洋艦が複数余っていたので、そちらを再武装、改修して専門の転移巡洋艦としたのである。


 浦賀型と名付けられた転移巡洋艦は、現在六隻が竣工。一番艦『浦賀』、二番艦『志発(しぼつ)』が、ジョンストン島の航空基地化資材を運ぶ輸送船を転移させる任務に就いた。


 そして三番艦から六番艦までの四隻も、今回のハワイ作戦のために、潜水行動でハワイ近海にすでに移動中である。


 一応、戦闘はできるが、こちらの転移巡洋艦の竣工はつい最近であり、特に五番艦『勇留(ゆり)』、六番艦『鳴門(なると)』などは、最低限の運用が可能とはされているものの、戦闘に巻き込まれた際、的確な反撃、運用ができるのか怪しいレベルだったりする。


 閑話休題。ジョンストン島に上陸した第一航空艦隊は、飛行場と設備を急ピッチで整え、ハワイ作戦の準備にかかった。


 第一航空艦隊司令長官の福留 繁中将は、仮設指揮所から設営されていく飛行場を眺める。その頭上には、輸送船と共にやってきた水上機母艦『日進』『瑞穂』の瑞雲水上攻撃機が夜間上空警戒に飛んでいる。

 福留は言った。


「おい、三和参謀長。あの水上機、降りる場所の準備はあるんだろうな?」

「隣接するサンド島に、水上機基地がありましたから、場所は確保されています」


 三和義勇大佐――かつて連合艦隊司令部の作戦参謀だった彼は、第一航空艦隊参謀長として、ここにいる。


「現在、応急ながら水上機収容設備を設置中。上空の機が燃料切れになる前には、降りられるようになります」

「うむ。警戒機と言えば、ここには飛行場防衛用に最低限の戦闘機しかない。ハワイへの攻撃隊には、戦闘機がつけられない」

「航続距離の問題ですからね。戦闘機は護衛のほか、空中戦の可能性もあれば、ただ届いたら、転移離脱できればいいというものではありません。空中戦分の燃料を考えれば、ジョンストン島は遠い」

「中間点には別の航空拠点がいる」


 福留は腕を組んだ。


「そっちの準備は大丈夫だろうか? もし用意できなければ、貴重な陸上攻撃機を丸腰で送ることになるが」


 開戦から第一次トラック沖海戦での敗北。消耗した母艦航空隊の補充と、艦上機より大型の陸攻では、敵艦隊攻撃は自殺行為ということも相まって、陸上攻撃機の生産は規模が縮小された。


 南方作戦以降、ぼちぼち配備が進んで基地攻撃などに参加しているものの、母艦航空隊優先のため、何かと陸上攻撃機は後回しにされてきた。


 消耗はそれなりにあって、運用のノウハウの蓄積はあったが、陸攻の改良については、一部装備を追加した程度で、あまり変わっていない。


 今回、第一航空艦隊が編成されるにあたっても、そんな陸攻隊を各地からかき集めた。もしここで壊滅しようものなら、再度同規模までに復旧するのにどれくらい時間がかかるか見当もつかない。


 かつては漸減邀撃作戦の一戦力として期待された陸上攻撃機であったが、そもそも保有できる空母戦力の劣勢を補うために拡張されたものだった。だから、空母がたくさんあるならば、陸攻が縮小されるのは当然のことではあった。


 が、今回は、その陸攻隊ですら、お呼びがかかった。今回のハワイ作戦は、是が非でも成功させねばならないのだ。


 ――マーシャル諸島で予想外に手間取ったのも影響しているのだろうな。


 福留は思う。楽勝と思われた第二機動艦隊が、敵の反撃で上陸船団護衛部隊も含めて、空母6隻沈没、3隻の離脱を強いられた。沈没艦はある程度回収はできたが、今回の作戦には当然間に合わない。


 日米合同で、最大規模の空母戦力がハワイ作戦に投入されるが、それでも一抹の不安を抱かせるに充分な影響はあったわけだ。


「さて、果たして、どうなるか」


 ジョンストン島よりもさらに踏み込んだ場所に用意される航空拠点の成否は。



  ・  ・  ・



「――魔力走査、完了です。この海氷群に、敵の潜水艦などは潜んでいません」


 特マ式潜水艦伊600――『海狼』。潜水艦長の海道中佐は、魔力索敵の結果に頷いた。


「まあ、こんな外縁の海氷は、我々が調べると思って、敵さんもただ囮として浮かべているだけだろう」


 伊600潜は、潜望鏡深度に浮上し、上空を確認する。


 ――敵機の姿なし。


 海道は、通信士の萩野に視線を投げた。


「潜巡『宮古』に連絡。周囲に敵影なし。任務を遂行されたし」


 伊600、伊601、伊602からなる第七十潜水隊が周囲を警戒する中、浦賀型転移巡洋艦の三番艦『宮古』が、海氷群の近くに浮上した。


 さっそく『宮古』は、転移中継装置を用いる。それに呼び寄せられるように、別の海域にいた艦艇が複数、出現する。


 第十七潜水戦隊の潜水母艦である『ばーじにあ丸』の他、特務艦『鰤谷(ぶりたに)丸』、軽空母『大鷹』『神鷹』が戦闘機を運ぶ。


 そして本命とも言うべき、巨大物体――全長300メートルに達する巨大氷塊が姿を現す。


 外観は空母のように見えるそれは、丙型海氷空母と呼称される。三隻の丙型海氷空母は、I素材に継ぎ足しによる合体により、巨大洋上飛行場へと姿を変えるのだった。


 異世界軍が散布した海氷群に混じり、作られた大型海氷空母に、軽空母で運ばれた戦闘機――F6F艦上戦闘機が移動する。

 ハワイとジョンストン島の間に展開する前衛航空拠点が、今ここに設置された。

・浦賀型転移巡洋艦:『浦賀』

基準排水量:8500トン

全長:180メートル

全幅:17メートル

出力:11万馬力

速力:34ノット(水中:17ノット)

兵装:15.2センチ連装光弾砲×3 8センチ連装光弾砲×4

   61センチ四連装魚雷発射管×1 53センチ艦首魚雷発射管×4

   20ミリ連装対空機銃×10 

航空兵装:――

姉妹艦:『志発』『宮古』『釣島』『勇留』『鳴門』

その他:撃沈sた異世界帝国の潜水型巡洋艦を日本海軍が回収。魔技研の技術を用いて改修したもの。最大の特徴は、転移中継装置を搭載すること。移動する転移マーカーとして、艦隊より先行し、戦場海域に単独潜入。遊撃部隊などを、敵の想定範囲外に転移させ、襲撃させるために建造された。

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