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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第二七二話、裏で動いているモノ


 ハワイ、オアフ島。ムンドゥス帝国太平洋艦隊司令部。司令長官ヴォルク・テシス大将はレポートを読んでいた。


「……クェゼリンは日本軍が占領。今はウォッゼに針路を向けているか」

「日本艦隊に痛打を与えましたが、まだ攻略を続けています」


 テルモン参謀長は何とも言えない顔になった。


「敵は一時、空母戦力の3分の2を失いました。しかし、速やかに3隻の補充を得て、作戦を続行……。補充前に、撤退してもおかしくない損害だったのですが」


 テシス大将は、フッ、と笑みを浮かべた。

 日本軍の残存空母が3、4隻になっている、と報告を受けた時、この参謀長は、太平洋艦隊が出撃し、マーシャル諸島の敵を撃滅すべきだと進言した。だが、テシス大将はそれを認めなかった。

 彼らは、もう一つ、別の存在に対して警戒しなければならなくなったからだ。


「日本軍としては、是が非でもマーシャル諸島を攻略したいということなのだろう。あるいは……アメリカと連携しているだろう」


 テシス大将は視線を世界地図へと向けた。


「アメリカの機動部隊が、うろついている」

「長官は、これを予見されていたのですね」


 マーシャル諸島に日本軍が襲撃した時も、情報を得るためと公言し、艦隊の派遣しようとしなかった。その実、米軍の行動を予想していたに違いない。


「八日前、米軍はミッドウェーを空襲しました」


 テルモンは眼鏡を指先で持ち上げる。


「そして四日前にも、再度空襲を仕掛けた」


 オレたちはまだいるぞ、と吠え立てるように、アメリカ海軍の空母機動部隊が、この東太平洋を遊弋している。獣が獲物の群れの周りをうろつき、弱いところを見定めるように。


「奴らは、我が太平洋艦隊の動きを牽制しているのだ。日本軍の、マーシャル諸島攻略の側面援護かもしれない。……もし我々がハワイを留守にするなら、わかっているだろうな、と」

「鬼の居ぬ間に攻撃ですか」


 参謀長は皮肉げに口元を緩めた。


「確かに、現状、ハワイの施設に損害を受けるのはよろしくありません。仮に燃料貯蔵施設が叩かれることになれば、我が太平洋艦隊の活動に支障が出ます」

「奴らが、ただうろついているだけなら、基地航空隊でも事足りた」


 テシス大将は視線を鋭くさせた。


「だがアメリカ太平洋艦隊の主力がサンディエゴを出ているという報告がある。大量の輸送船と共にな。……これを日本への輸送と決めつけるには、やけに物々しくはある」


 実は、アメリカ軍はハワイ奪回を諦めていないのではないか。日本向けの大規模輸送に見せかけて、実は米太平洋艦隊と合流、一路ハワイを目指すのではないか。


「その場合、日本軍のマーシャル諸島攻略が、我々を引きつける陽動となりますね」


 テルモンは眉間にしわを寄せた。

 ムンドゥス帝国太平洋艦隊が、マーシャル諸島に救援に向かわせたところを、米軍がハワイを攻撃する……。


 では、それに備えるならば、艦隊はハワイに留まらざるを得ない。その間に日本軍はマーシャル諸島を攻め落とすだろう。


「二兎を追う者は一兎をも得ず、とは、この世界の言葉だったか」


 理想を言えば、マーシャル諸島に艦隊を送り、ハワイにも艦隊を留めることだが、戦力を二分した結果、中途半端になり、かえって各個撃破されてしまうリスクもあった。


「今回は、マーシャル諸島は諦める。欲は出すべきではない。彼らとの決戦に備えて、情報を獲得することでよしとしよう」


 テシス大将は相好を崩した。


「事実、色々わかってきたしな」

「日本軍の主要艦艇は、防御障壁を装備している……」


 テルモンは顔をしかめた。


「連日、パライナ重爆撃機による高高度からの光線照射攻撃をかけていますが、空母や戦艦はおろか、駆逐艦にすら障壁があって手傷を負わせることすらできない……」


 ジョンストン島飛行場から飛び立った重爆の数は多くない。航続距離の問題で、攻撃も1機につき、1回か2回あたりが限界。迎撃機がきても、敵の攻撃は通らないため、今のところ損害はないが、こちらの攻撃もダメージを与えられずにいる。


 毎回、標的を変えて撃っているが、末端の駆逐艦すら障壁が積まれていることがわかっただけで終わった。


「最初は奇襲となって空母3隻を撃沈しましたが、もはや効果がありません。連中も、こちらの重爆撃機がくれば、障壁で身を守りますから」

「では、次あたり、標的を1隻に絞り込んで、集中攻撃を試してみよう。防御障壁といえど、連続して強い攻撃を受ければ破れるものだ」

「なるほど。分散させずに、障壁がどの程度もつのか確認するのですね」


 テルモンの言葉に、テシスは頷いた。攻撃は効かずとも、情報は得ることはできる。


 また、情報だけでなく、ムンドゥス帝国は撃沈した日本軍の艦艇を数隻、すでに回収することに成功している。もっとも、配置の都合上、全てを回収とはいかなかった。日本軍も有力な潜水艦部隊を送り込んでいて、情報収集艦も含めて、こちらの行動を妨害している。


「とはいえ、わからないことも少なくないがね」


 テシスは、マーシャル諸島の地図を睨む。


「テルモン。貴様は、今、あそこにいる日本の空母は何隻だと思う?」

「はい……。ええと、増援の3隻を含めて6隻……いえ、船団に小型空母が1隻ついているので7隻です」

「違うな。もう後、2、3隻、敵の空母はいる」

「そんなまさか……。偵察情報でも、重爆撃機隊も、マーシャル諸島に展開する日本機動部隊の空母数は、6隻程度と確認されていますが」

「だとすると、辻褄が合わないのだよ。思い出してみたまえ。日本軍が襲撃した時、どこが叩かれた?」

「……クェゼリン、ウォッゼ、マロエラップ」

「そしてミレの飛行場だ」

「! 確かに! ……ですが」

「近くに敵上陸部隊を乗せた輸送船などは確認されていない。実に不思議だ。数が合わない」


 三つの機動部隊に三つの上陸部隊。しかし襲撃されたのは四カ所。


「ミレを叩いた空母は、果たしてどこにいるのだろうな? 何故、我々の目で捉えられていないのか。実に……興味深いね」



  ・  ・  ・



 奇襲は秘匿性を保ち、慎重に行動するものだ。

 それで日にちを余分に消費し、ジョンストン島から飛び立った敵重爆撃機が、例の光線兵器で第二機動艦隊に連日ちょっかいを出しても、だ。


 敵のもっとも警戒が緩そうななミッドウェーへ向かうような大回りをしたのち、ジョンストン島を通り越して、その裏に回るように移動したところで、挺進部隊はU部隊、Y部隊に分かれた。


 U部隊はジョンストン島、Y部隊は、ハワイ・オアフ島へ。

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