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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第二六五話、過ぎ去った敵機


 ウォッゼ環礁から反転した第二機動艦隊乙部隊は、環礁の多数の小島から飛び立った異世界帝国軍航空機の連続攻撃を受けた。


 緊急発艦した少数の零戦、そして対空砲火で、敵機を撃墜しつつも、その全てを防ぐことはできない。


 だが善戦はした。環礁に対して近い位置に戦艦部隊である第三戦隊があって、空母群である二航戦への防空援護がしやすかったこと、そして新鋭の鶴見型防空巡洋艦が、空母の守りについていたことだ。



●乙部隊(第二群)


・戦艦:第三戦隊:「土佐」「天城」「紀伊」「尾張」

・空母:第二航空戦隊:「大鳳」「大龍」「蒼龍」「飛龍」

・重巡洋艦:第十三戦隊:「阿蘇」「葛城」「笠置」「身延」

・防空巡洋艦:第二十一戦隊:「鶴見」「馬淵」「石狩」「十勝」


第三水雷戦隊:「揖斐」

 第十一駆逐隊 :「朝霜」「秋霜」「早霜」「清霜」

 第十五駆逐隊 :「初夏」「初秋」「早春」

 第十九駆逐隊 :「沖津風」「霜風」「朝東風」

 第四十四駆逐隊:「樅」「樫」「榧」「楢」



 防空巡洋艦『鶴見』『馬淵』『石狩』『十勝』は、異世界帝国の主力軽巡洋艦であるメテオーラ級を鹵獲、改修した防空艦である。


 基準排水量8000トン、全長180メートルの艦体に、長10センチ連装高角砲六基十二門に、8センチ単装光弾高角砲八基を装備する。高角砲で一式障壁弾の弾幕を展開し、弾速が速く、ほぼ直進する光弾砲で叩き落とす。


 従来の旧式巡洋艦改装の防空艦に比べて、砲が多く投弾力が増した結果、敵機の阻止率も向上。さらに今回、異世界帝国軍機は、ほぼ海面近くの低空に集まったので、特に撃破率は高かった。


 しかし、それでも弾幕を抜けてくる敵機はいて、空母は『大鳳』と『蒼龍』に敵の投弾を許すこととなった。


『大鳳』は自慢の装甲甲板が敵ロケット爆弾の直撃を跳ね返したが、『蒼龍』は艦後部に一発の直撃弾を受けて、艦首からの発艦は可能だが、着艦に支障がある状態となっていた。


「――幸い、防火対策が上手くいき、火災は鎮火の見込みです」


 旗艦『大鳳』の艦橋で、僚艦の状態を聞き、乙部隊司令部は安堵に包まれた。それもこれも開戦からこっち、叩かれるたびに防火対策工事が図られた結果だ。もし開戦の頃だったなら、魔法防弾板を抜けてきた攻撃で『蒼龍』は大破炎上、あるいは爆沈していたかもしれない。


 しかし、角田中将の表情は険しいままだった。

 敵の攻撃は一波のみだったが、戦艦『尾張』が小破以上、中破寸前のダメージを受け、重巡洋艦『葛城』『身延』被弾、『笠置』が後部炎上。駆逐艦『初夏』『樅』『楢』が沈没した。無事な艦艇も、航空機搭載の光弾砲を受けて、修理が必要なものも少なくない。

 そんな明らかに機嫌の悪そうな角田に、古村参謀長は顎を引いた。


「長官、これからの行動ですが、如何いたしますか?」


 敵機は去った。通信によれば、甲部隊、丙部隊もまた環礁に潜んでいた敵機の複数同時攻撃を受けて被害を出したという。


「それだ。問題は、我々は振り上げた拳をどこへ落とせばいいか、だ」


 見敵必戦。敵と見れば果敢に突撃するのが信条の角田だが、今回はその突っ込む敵が不明だった。

 敵飛行場はすでに叩き、しかし敵は飛行場以外から飛んできた。それも一回限りの待ち伏せのようであり、飛来した敵機もほぼ撃墜した。そしてさらに言えば、近くに敵空母部隊がいるわけでもない。


「後続の上陸船団は壊滅的な被害を受けたようです」


 古村は言った。甲、乙、丙部隊に続いていた陸軍歩兵を載せた輸送船とその護衛部隊もまた敵の奇襲を受けて、大打撃を受けた。特に第二、第三上陸船団の輸送船は全滅してしまったと報告を受けている。


「ウォッゼに上陸するはずだった部隊もなく、我々がここにいる理由もなくなってしまいました」


 叩くべき目標もなく、上陸船団もない今、援護のしようがない。そもそも、マーシャル諸島攻略作戦自体、中止になってもおかしくない状況である。


「……」


 角田は答えない。明確な攻撃目標のない戦場。仮にウォッゼ環礁に潜む敵守備隊をさらに攻撃したとして何になるというのか? 占領部隊がいない以上、その攻撃に意味があるのか否か。



  ・  ・  ・



 その頃、警戒行動中の丁部隊は、敵からの攻撃を受けることなく、ミレ環礁から、メジュロ環礁方面へと北上しつつあった。



●丁部隊:第四群

・空母:第八航空戦隊:「応龍」「蛟竜」「神龍」


第八水雷戦隊:「川内」「神通」

 第七十六駆逐隊:「吹雪」「白雪」「初雪」「磯波」

 第七十七駆逐隊:「浦波」「敷波」「綾波」

 第七十八駆逐隊:「天霧」「朝霧」「夕霧」「狭霧」

 第七十九駆逐隊:「初春」「子日」「春雨」「涼風」



 上陸船団を伴わない丁部隊は、ミレ飛行場を無力化したのち、敵艦隊が現れた時に備えての警戒、奇襲攻撃を担当しており、攻略戦では援護の役回りだった。


 甲、乙、丙部隊を襲った敵が、どこか健在な飛行場だったり、敵艦隊だったならば、今頃攻撃隊を飛ばして仇討ちを仕掛けたのだが……。


 丁部隊指揮官、山口多聞中将は、哨戒で確認された敵潜水艦を撃沈して回るくらいしか、現状、やることがなかった。


「艦長、対空用電探が敵影とおぼしき反応を捉えました!」


 電測室からの報告は、『応龍』の市井 島次郎艦長と共に、山口の耳にも届いた。


「高度およそ1万。ハワイ方向から。数は少数……2、3機と思われます!」

「高度1万……」


 市井大佐が呟けば、山口は言った。


「高度からして重爆撃機だろうが……。たった数機か」

「偵察でしょうか?」

「おそらくな。通信長、艦隊に伝達。全艦を潜行させて、やり過ごせ」


 山口の命令はただちに実行される。丁部隊は、戦艦や重巡洋艦がいないが、空母と第八水雷戦隊全艦が、潜水行動が可能である。


「もう敵の電探に、発見されているのではありませんか?」


 市井は言ったが、山口は首を横に振る。


「かもしれん。だが、我が部隊は、隠密を以て第一とする。その所在を敵に掴まれて、狙われるわけにもいかんのだ」


 マーシャル諸島に向かっているかもしれない敵艦隊、あるいはこの海域をうろついている敵潜水艦など。


「大丈夫だ。海上には至る所に流氷もどきが漂っておる。直接見られない限りは、奴らもまだこちらを判別できておらんだろう」


 たかが偵察、されど偵察。油断なく、丁部隊の存在を隠そうと、山口は言った。

・鶴見型防空巡洋艦:『鶴見』

基準排水量:8035トン

全長:180メートル

全幅:18メートル

出力:12万馬力

速力:34.2ノット

兵装:65口径10センチ連装高角砲×6 8センチ単装光弾高角砲×8

   53センチ三連装魚雷発射管×2  対潜短魚雷投下機×1

   25ミリ三連装機銃×10 25ミリ単装機銃×8

航空兵装:――

姉妹艦:『馬淵』『石狩』『十勝』

その他:日本海軍の防空巡洋艦。回収した異世界帝国のメテオーラ級軽巡洋艦を、防空艦仕様に改装したものであり、その防空能力は、旧式巡洋艦改装の防空艦艇より格段に向上している。

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