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第二五六話、第七艦隊と回収艦艇


 1943年10月に入り、第一機動艦隊はセイロン島を離れ、内地へと戻る。


 異世界帝国の地中海艦隊の後続部隊が送られているとの情報があるものの、進撃には今少し余裕があるだろう。


 小沢機動部隊の撤収と平行して、現地駐留艦隊の編成も行われた。

 艦隊名は、第七艦隊。司令長官はそのまま、武本権三郎中将が率いる。つまり、第一機動艦隊から第七艦隊が外されることになった。


 そして第七艦隊の編成もまた、第一機動艦隊の引き抜きが少しと、新たな補充艦から構成される。


○第七艦隊:指揮官:武本権三郎中将


 第五十一戦隊:(戦艦2) :「扶桑」「山城」

 第十一航空戦隊:(空母3):「白龍」「赤龍」「翠龍」

 第九戦隊:(大型巡洋艦3):「黒姫」「荒海」「八海」

 第三十戦隊(特殊巡洋艦2):「初瀬」「八島」

 第七十五戦隊:(敷設艦2):「津軽」「沖島」

 第九水雷戦隊:特殊巡洋艦:「九頭竜」

 ・第八十一駆逐隊:「初桜」「椎」「榎」「雄竹」

 ・第八十二駆逐隊:「初梅」「八重桜」「矢竹」「葛」

 ・第八十三駆逐隊:「桂」「若桜」「梓」「栃」

 ・第八十四駆逐隊:「菱」「榊」「早梅」「飛梅」

 ・第八十五駆逐隊:「藤」「山桜」「葦」「篠竹」

 ・第八十六駆逐隊:「蓬」「葵」「白梅」「菊」


 戦艦は、九頭島で改装の終わって日が浅い『扶桑』と『山城』の2隻。しかし、後日、コアによる自動化を進めた再生艦が他にも加わる予定である。


 空母は、敵中型高速空母アルクトス級の改装、再生した潜水可能空母の瑞龍型が3隻。

 しかしその航空隊については、第七航空戦隊の所属航空隊の半分を貰い受け、不足はコア制御航空機部隊という、半ば急造であった。


 第九戦隊の大型巡洋艦、三十戦隊の特殊巡洋艦、さらに七十五戦隊の『津軽』『沖島』は第七艦隊からの引き抜きである。


 そして新設された第九水雷戦隊であるが、第三十戦隊から配置転換となった特殊巡洋艦『九頭竜』を旗艦とし、撃沈した異世界帝国の潜水型駆逐艦を再生、改装した初桜型駆逐艦から構成される。


 初桜型は、異世界帝国軍の潜水艦駆逐艦の回収、再生艦だ。


 基準排水量は1800トンと一等駆逐艦クラスであり、本来なら1000トン以下の二等駆逐艦の名はつけられない。だが、折からの艦名不足と、ベースが鹵獲艦なので、二等駆逐艦につけられる植物名とされたのだった。


 全長105メートル、全幅10.2メートルと、朝潮型より続く甲型駆逐艦より小ぶりではある。武装も自動砲ではあるが、12.7センチ単装砲3門と、門数だけなら二等駆逐艦並に見える。61センチ四連装魚雷発射管1基に加え、潜水艦同様、艦首に魚雷発射管4門を装備する。どちらかといえば、雷装重視で、潜水艦運用が主軸となるのが初桜型だ。


 正直、ここまで来ると、日本海軍内でも、従来の潜水艦は必要なのか、という見直し案が出てきていたりする。


 水上艦型でも潜水機能があり、夢物語だった空母と潜水艦の機能を併せ持つ艦すら存在している。これまでの潜水艦も、潜水型駆逐艦、潜水型巡洋艦のほうがより武装も強い――と、攻撃に傾倒しがちな日本海軍では言われ始める始末である。


 ともあれ、潜水水雷戦隊構想の一翼として、鹵獲された敵潜水型駆逐艦を再生させた日本海軍だが、その潜水できる機能を活かして第七艦隊の主力駆逐艦として初桜型は投入されるのだった。


 第七艦隊は、セイロン島を拠点とし、インド洋、特にベンガル湾を中心に制海権を守る。しかしその戦力は、敵の有力艦隊に対しては奇襲、遊撃戦であたり、普段は通商保護、敵通商破壊などをこなす。そのために全艦が潜水機能を有し、その主力駆逐艦も、潜水艦としての働きが期待された。



  ・  ・  ・



 さて、現地駐留艦隊である第七艦隊であるが、内地からの西の防衛線、その最前線であるから、順次戦力は増やされる。


 その補充戦力の中心は、敵東洋艦隊の撃沈艦艇の再生型となる。魔技研の研究・開発したコア運用による人員の最小化、自動化が大幅に取り入られたこれらが、すでにセイロン島やシンガポールの海軍工廠にて、改修工事中である。


「――まあ、さすがに全部がうちに来るわけではない、か」


 第七艦隊司令長官、武本中将が言えば、出張で来ている神明大佐は頷いた。


「艦によっては、内地が欲しがるものもありましたからね。……特に空母に関して」


 東洋艦隊には、『イラストリアス』『フォーミダブル』『グローリアス』『イーグル』『ハーミーズ』の5隻のイギリス製空母があった。


「『ハーミーズ』は論外として、『イーグル』についても空母としての質がよくないので、使うなら大改装が必要。なので優先度は低いですがね。『イラストリアス』と『フォーミダブル』については、すでに『黒竜』という改装例があるので、格納庫を拡張して配備したいそうです」


 神明は書類から顔を上げた。


「例の装甲空母群として」


 空母というのは飛行甲板が弱点とされる。そこをやられば発着艦能力を失い、艦載機の運用に支障が出る。艦載機の運用できない空母など、戦場では無用の長物と化す。

 これに対して日本海軍と英国海軍は、空母の飛行甲板を装甲化することで克服しようと考えた。


「内地では装甲空母『大鳳』が就役しました。それもあって、機動部隊の前衛を務める装甲空母を集めようという構想が現実味を帯びてきたわけです」


『黒竜』となった『インドミタブル』に加え、今回の『イラストリアス』『フォーミダブル』も飛行甲板に装甲が施された空母である。


「日英空母戦隊か」


 武本がニヤリとするが、すぐに真顔になった。


「すると『グローリアス』か? うちにくれるのは」

「艦首側の容積を増やして、格納庫を増強。潜水機能を持たせる予定です。艦載機数は50から60の間でしょうね」

「まあ、奇襲航空隊の母艦として見れば、そんなものか」

「あと、巡洋戦艦の『フッド』を空母に改装して、機動艦隊に使いたいという話があって、そちらに持っていかれるでしょう」

「空母になるのか『フッド』は」

「戦艦として使うにしても脆すぎて危ない。それなら空母に……ということでしょう。ちなみに、『レパルス』も空母にしようという案がありますが、これは微妙です」

「というと?」

「シャルンホルスト級戦艦をどう運用するかによって変わるというところでしょうか。大型巡洋艦として使うなら、『レパルス』も……ということになりますし、いっそ『レパルス』『シャルンホルスト』『グナイゼナウ』を空母に、という案も出ています」


 巡洋戦艦だったり、火力で中途半端だったりと、純粋な戦艦として見ると扱いに困る。しかし速度は30ノット前後の高速艦ではある。


「そんなに空母を増やしても、パイロットがおらんだろう?」

「そこはあれです。コア制御航空機で補うという寸法でしょう」


 無人航空機――異世界帝国の技術だが、日本海軍でも運用が始まっている。


「戦艦はどうだ?」

「『ビスマルク』なんてどうです、武本さん?」


 第七艦隊の旗艦にでも。

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