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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一一九話、空クジラを貫く電撃


『青電一番、こちら翔竜管制。横須賀航空隊に緊急出動が発令された』


 無線からの声に、須賀は注意を払う。


 横須賀航空隊こと横空といえば、青電のベースとなった二式局地戦闘機『白電(びゃくでん)』を装備した防空飛行隊が配備されている。


 魔技研と武本工業の合作である白電は、マリアナ諸島を敵に奪われてから、本土爆撃に備えて準備されてきた。

 現状、生産配備が進められているというが、まだまだ実戦レベルの部隊となると、テストもやった横空しかない。

 彼らが帝都防空の切り札である。


『青電一番、九頭島からのオーダーだ。敵重爆へ攻撃は可能か?』


 は?――須賀は一瞬耳を疑った。


 ――攻撃って、青電であのクジラを墜とせってことか? そりゃあ……。


 実際の作戦環境で、空母の発着艦をやる試験でもあるので、重量もそれに合わせてある。つまり機関銃弾、誘導弾も込みという想定で飛んでいる。


「機関銃は実弾装填」


 射撃テストもやる予定だったから、そちらは問題ない。だが――


「誘導弾はデコイだから使えないよ」


 妙子は言った。こちらは完全に重りで、武器としては使用不能。


「あとは、光弾砲か」


 異世界帝国機でも装備されている光弾を発射する武器、光弾砲を一門、青電は装備している。対戦闘機はもちろん、重爆撃機相手にもその威力は使える……はずだ。


「翔竜管制、機銃と光弾砲は使用可能。戦闘は可能」

『了解、青電一番。牽制で構わないので、外側の敵機を狙って攻撃。可能ならば撃墜せよ』

『青電一、了解』


 つまり、攻撃しろ、だが、敵中のド真ん中を突っ切るような無茶はするな、ということだ。一応、この青電はテスト機である。


「妙子、聞こえたな? 誘導弾は使えないが、警戒はよろしく」

「了解。あと、防御壁を操作するから、多少強引に突っ込んでも大丈夫だよ」


 防御壁――確か、対象の周りに見えない壁を形成して盾代わりに使える防弾装置だ。自分の機体の周りと限られた範囲だが、障壁弾のような防御膜を張れる。この青電には、その防御壁が標準装備されている。


「了解。といっても、あんまり気持ちのいいものじゃないけどな」

「魔力を使うから被弾し過ぎると効果がなくなちゃうけどね。当たらなければいいんだよ」

「そのつもりだ」


 フルスロットルで、敵爆撃機編隊へと突っ込む。誘導弾があれば、先にぶっ放して敵の数を減らすところだが。

 高度は1万で、多少編隊に誤差はあるが、上中下段に分かれている印象。


「……でけぇ」


 近づくほどにその大きさがわかってくる。クジラのヒレが翼になっている感じとはよくいったものだが、全長30メートルくらいあるのではないか? 実機を間近で見るのは初めてだ。


 ――敵さんはどこで気づく?


 まだ気づいた様子はない。しかしいつ対空銃座がこちらを向いて、撃ってくるかわからない。緊張の瞬間。だがまだひりつくような感覚は来ない。生唾を飲み込み、武器切り替え。まずは光弾砲でご挨拶。


 グングンと視界の中で大きくなっていく敵重爆撃機。いや、もうこの大きさは超重爆撃機だろう。


 あの図体だ。敵の機首辺りを狙えば、まあ胴体には当たるだろう。弾速が速く、ほぼ真っ直ぐ飛ぶ光弾砲である。機銃よりも遠目で撃っても当たるはず。


 ――さっきから『だろう』とか『はず』ばかりだ。


 照準に敵を捉えて、引き金を引く。光が駆けた。狙った敵機の機首――操縦席があるだろう窓の辺りが吹っ飛んだ。


「ほっ……!」


 変な声が出た。想定よりも前に当たった。この弾速は須賀の想像以上だった。


 ――しかもこの威力!


 追加で機首の20ミリ機銃を撃ち込もうと思ったが、その気は失せた。あっという間に一撃離脱。後座で振り返った妙子が報告する。


「敵重爆、機首が下がって降下中! たぶん、操縦不能! 撃墜確実!」

「よし……!」


 当たり所もよかっただろうが、光弾砲の高威力には惚れ惚れする。敵超重爆相手でも、対抗できる!


 須賀は操縦桿を捻る。背中に弱いながらもひりつきを感じたのだ。敵編隊が、襲撃に気づいたのだ。


 味方が1機撃墜されるまで気づかなかったとは、どれだけ油断していたのだろうか。世界的に見ても、この高度でまともに戦える迎撃機がないと、高をくくっているのではないか?


 ――しかし、こいつはいい。


 青電の挙動は低高度飛行時と変わらない。高度5000に上がるまでに、ひいこらやっていたのが嘘のような機動。マ式エンジンはご機嫌な代物だ。

 そして忘れてはならないのは、敵機もまたそのマ式エンジンを搭載しているということだ。


 だがスピードは、この青電の方が速い。手近な1機に追いすがる。敵が対空銃座を動かして迎撃してきた。曳光弾の光が向かってくるが、狙いをつけている余裕など与えない。


 光弾砲を発射。尾翼辺りと、後部下部周りを吹き飛ばす。狙ったところにほぼ真っ直ぐ飛ぶというのは気持ちがいい。


 そしてこの威力だ。魔法防弾付きの日本機が、バタバタと落とされるわけだ。


 敵の防御火線をかいくぐり、そのまま反対側へ突き抜ける。旋回しつつ、先にダメージを与えた敵機に再度襲いかかり、光弾砲を右翼、左翼には青電の機首内蔵の20ミリ機銃4丁を連続して撃ち込む。


 この20ミリは、零戦が使っている九九式20ミリ機銃ではなく、魔技研試作の長銃身型である。それを4丁も機首に装備するのは、機首にプロペラなのない型ゆえに可能な業だ。


 さずが対重爆用の20ミリ弾。連続して浴びせれば、敵の主翼に穴を開けて、そのエンジンをも吹き飛ばした。光弾砲が強すぎて、ちょっと地味ではあるが。


「撃墜2機目!」


 翼をもがれて、錐揉みしながら墜落していく敵重爆撃機。


 須賀は青電に好感触を得る。高高度で息継ぎしないエンジンによる高機動性。敵の防弾を上回る火力。青電でこれなのだから、元となった局地戦闘機の白電も、充分に敵高高度爆撃機に対抗できるだろう。

 無茶をやらなければ、あと何機食えるだろうか?



  ・  ・  ・



 結果的に、青電は20ミリをほぼ使い切るまでに5機の重爆撃機を撃墜した。


 光弾砲に安全装置が働いたので打ち止め。攻撃手段を失ったため、須賀機は戦線を離脱し、母艦へと帰投した。


 敵重爆を追い回して、かなり母艦から離れてしまっていた。あれで敵もかなり速度を出していた。感覚的には零戦と同じくらいか、やや速かったと思う。


 そう考えると、ますます主力のレシプロ機による迎撃は難しい相手だった。高高度でそのスピードなら、その高さでエンジンがフルに稼働できないレシプロ機では追いつけないからだ。


 青電は余裕で追撃、そして反復攻撃はできたが、それには防御壁のおかげもあると、須賀は感じていた。魔法防弾もあるとはいえ、突っ込みの段階で、結構敵の弾幕が襲ってきた。従来の日本機だったら被弾、損傷していただろう。そうなれば、5機も撃墜する余裕もなく、下手すればこちらが撃墜されていた。


 爆撃機相手は、戦闘機とは勝手が違うものだと改めて実感した。


 無事、実験空母『翔竜』に帰還した青電。須賀が後で聞いたところによれば、横須賀航空隊の白電迎撃隊は、異世界帝国重爆撃機隊と交戦し、帝都侵入前に全機撃墜に成功したとのことだった。


 青電、そして白電にとっても初戦闘は、大勝利と言ってよいだろう。


 だが喜んでばかりもいられない。この敵重爆撃機がどこから飛んできたのか、その謎は大きな問題であった。

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