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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一一二七話、狙いはマーシャル諸島


 九頭島司令部にて、第五遊撃部隊司令官、佐々山 久雄中将と第一遊撃部隊司令官の神明 龍造少将は以後の作戦行動のために打ち合わせを行った。


「T艦隊?」


 佐々山が首をひねれば、神明は答えた。


「先輩がいない間に、大西洋方面で敵の拠点を襲撃してまわった遊撃部隊の名前です。今回二代目ということになるのですが、私がその司令官に」


 なお初代T艦隊は、栗田 健男中将を司令官に、神明が参謀長を務めていた。


「なんのTなんだ?」

「トルネードか、あるいはタイフーンか。まあそんな意味合いだったと思います」

「なんだ、おぼえていないのか?」

「細部の突っ込みはなかったと記憶しています」


 神明は事務的に告げた。


「それで、佐々山先輩の艦隊は、以後S艦隊と呼称されるそうです」

「S……? 何のSだ?」

「佐々山のSじゃないですか」


 適当な調子の神明である。正直どうでもいい。


「一応、上位は先輩の艦隊ですから、アルファベット順から見てもSにTが続くのは収まりがいい」

「海軍って変なところで合わせてくるんだよな」


 佐々山は再度首をひねった。


「アルファベット順で言うなら、もう一個艦隊が追加されたらU艦隊となるのか。誰かいるか?」

「宇垣軍令部次長じゃないですか」


 やはり適当丸出しの神明である。


「何で宇垣さんなんだ、神明?」

「以前、即席編成でハワイを叩いた時に、宇垣さんの部隊をU、山口 多聞中将の部隊をYとしていたので」


 それですぐに思い出した、というだけである。やはりどうでもいい話である。


「こちら、以前のT艦隊がやった作戦の概要となります」

「うむ、なるほど」


 神明から受け取った資料を見やり、佐々山はニヤリとする。


「おれたちがいない間に、やることをしっかりやっていたわけだ。感心感心」


 要するに、佐々山がやろうとしている攻勢とは、T艦隊がやったような遊撃奇襲攻撃を、異世界帝国軍の拠点に仕掛けて、その戦力増強を妨害し、あわよくば敵戦力の消耗を図るというものである。


「あと、お前の第一、いや第四遊撃部隊がやっていたマーシャル諸島の敵戦力漸減だがな――」


 佐々山はリストから顔を上げた。


「おれはここを今回、奪回しようと考えている。奴らが中部太平洋決戦とやらで沈んだ艦艇の回収にご執心で、その拠点として手放そうとしないからな」

「第四遊撃部隊は、現地の守備隊や艦隊を叩いてはいました」


 先のフィリピン防衛のために第四遊撃部隊は、第一遊撃部隊に合流したたため、今その行動は小規模なものになっている。その間に敵が戦力を増強している可能性はあった。


「再度の基地化を進めていたとしても、まだ途中でしょうから攻勢をかけやすいですが……。奪回ともなれば、敵は大規模な増援を送ってくるのではありませんか?」

「それが狙いだ。異世界人も沈没艦回収を諦める様子がないとなれば、上陸部隊まで送られたら、大挙してやってくるだろう。そこを逆に叩く」


 今の異世界帝国軍は、この地球世界にある戦力しか使えない。その戦力を増やすための拠点であるマーシャル諸島の防衛に大挙増援を送ってくる可能性は高い。

 だがそれでもこの世界にいる全軍を送ってくることはない。ならば各個撃破の機会にもなり得る。


「まあ、どうしても手に負えないなら撤収するのもありだ。要は敵を忙しくさせて、戦力を消耗させることだ。敵がフィリピンやウルシーで仕掛けてきた手を今度はこっちが返してやる。それだけのことだ」


 佐々山の作戦の意図は理解した。

 さっそくマーシャル諸島の地図を引っ張り出して、S艦隊とT艦隊の戦力と、攻略手順を研究する。


「――奇襲攻撃隊を使えば、クェゼリンの飛行場を制圧できるだろうな。小沢長官の第三艦隊が、対レーダー塗装の攻撃隊で奇襲に成功している」

「そうなると、障害は諸島を守る敵艦隊の排除ですね」

「そうだ。こいつらを排除しないと上陸作戦はおぼつかない。神明、お前のところで使える戦力は――」


 佐々山が確認すれば、神明はわずかに首をかしげる。


「前回の北米救援作戦で使った艦と、数隻が復帰した程度ですね。第四遊撃部隊で鹵獲した艦艇の大半はフィリピンで沈みましたから、マーシャル諸島の敵艦隊と比べると数で不足しています」

「おれの艦隊からも、ある程度回そう。言い出したのはおれだしな。ただ俺としてはマーシャル諸島以外にも攻撃を仕掛けて、敵の目を他方に引きつけたい」


 攻撃した場所が一カ所であれば、マーシャル諸島の重要度からして敵は多数の増援を送り込んでくるかもしれない。

 それを待ち受けるわけだが、対処できる範囲であるのが理想だ。マーシャル諸島以外にも攻撃をかけて、警戒、増援を他方にも送らねばならない状況に追いやることで、ある程度、敵の動きに制限を与えるのだ。


「前回、前々回で活用した規模の艦隊を二、三グループを投じて、ヒットエンドランを仕掛ける。予備戦力として今回使わないものを残しておくとして、それ以外を神明、お前のT艦隊と共闘させる」


 佐々山は、マーシャル諸島の各島から、クェゼリンを見やる。


「現在の情報では、敵はクェゼリンに基地と艦隊を集めている。そうだな?」

「エニウェトクほか、拠点になっていた場所は叩きました。もしかいたら復旧を進めている可能性もありますが」

「そこは最新の偵察待ちだな。ただおれとしては、異世界人がクェゼリン以外を放棄しているなら、それ以外の環礁の島に兵を上陸させて占領。クェゼリン攻略の支援と、敵増援に対する防衛網を構築したい」


 佐々山の語るマーシャル諸島航空要塞案。それを聞いた神明は頷いた。


「各島にI素材を用いて海氷飛行場を環礁内に配置すれば滑走路の準備はできます。実際、かつて日米合同のハワイ攻略作戦では、ジョンストン島に海氷飛行場を即席で作り、基地航空隊の拠点として活用しました」

「さすが、持つべきものは後輩だ。すでにノウハウ習得をしているとは助かる」


 前例があるなら現実味も帯びる。言い出した佐々山も、異世界氷を利用した兵器については戻ってから知った。そして巨大海氷空母という敵を退治して回ったが、それもすでにこちらの魔技研が解氷装置を作り、レキシントン戦隊という実行部隊を用意していたから行えたのである。


「やはり、おれとお前が組めば最強だな!」


 佐々山は豪快に笑うのだった。

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