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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一一二二話、反撃戦力、壊滅


『敵艦隊、本艦隊へ向けて進撃中!』


 第五遊撃部隊、旗艦『かが』。司令官である佐々山 久雄中将は口元を緩めた、


「ほう、海氷空母を放り出して、こちらに全力か」

「陽動の意味がなかったですかね」


 先任参謀を務める平林 孝三大佐が皮肉げに言った。痩身でのほほんとした雰囲気の男だが、彼もまた佐々山らと同じ異世界帰りである。


「いいや、こちらに食いついたということは陽動は成功だ」


 佐々山もまた皮肉っぽく返した。


「相手さんは、海氷空母を失ってでもこちらの戦力を叩き潰すことを選んだ。中々果断な指揮官のようだ」


 たとえ西海岸に展開する海氷空母群が全滅しても、まだ東海岸にも海氷空母群がある。

 むしろ、日本の遊撃部隊やアメリカ艦隊をここで叩いておかねば、東海岸の空母群もまた危機にさらされるかもしれない。であれば無理してでもやらなくてはならない行動は、防衛ではなく攻撃と考えたのだろう。


「ですが、そうなると我々も引く素振りを見せませんと。普通にぶっかれば、倍の戦力差でこちらがやられてしまいます。……引き返しますよね?」


 平林が確認するように言えば、佐々山は首を横に振った。


「いいや。突撃だ。江戸っ子は売られた喧嘩は買うものなんだ」


 足は失えど、闘志はいまだ健在。それが佐々山 久雄という男である。


「まあ、おれは正々堂々とは無縁な男だがね。奴らの想定外の距離でぶん殴ってやろう。空母以外は短距離転移用意! こちらも全艦でカチコミだ!」


 空母を除く第五遊撃部隊の艦艇に突撃の命令が下る。短距離転移、各艦の艦首が横陣で接近しつつある異世界帝国艦隊に向く。


『全艦、短距離転移、準備完了。目標、敵艦隊!』

『敵戦艦列、発砲!』

「ダッシュ!」


 第五遊撃部隊の戦闘艦艇が、正面に向かって転移した。

 第12艦隊主力のオリクトⅢ級が40.6センチ主砲を発砲したタイミングであった。砲弾が落ちる頃には、そこに第五遊撃部隊はいない。

 すでにその懐に入り込んでいる!


「主砲! 一番近い敵艦にぶっ放せ!」


 佐々山が声を張り上げる。戦艦『かが』の40.6センチ三連装砲が滑らかに旋回。水平に倒された砲口は、1000メートルも離れていない敵オリクトⅢ級戦艦に合わされると発砲した。


 至近距離の砲撃は、敵艦に突き刺さり垂直装甲を貫通すると爆発した。



   ・  ・  ・



『敵艦隊、我が艦隊内に転移!』

「んだと!?」


 リスィ・メハル第12艦隊司令長官は、司令塔から至近に現れた敵戦艦を睨んだ。

 日本艦によく似たシルエットの戦艦や巡洋艦が、第12艦隊の艦列に突っ込んでいる。瞬きの間に突然現れた。明らかに転移だが、ムンドゥス帝国が使用する転移ゲートとはまったく異なっていた。


「これが日本艦隊の転移か……!」


 参謀長が唸ると、メハルは声を荒らげる。


「あたしの艦隊に殴り込みをかけてくるとか、いい度胸だ。ふざけやがって! 返り討ちだ! 撃ちまくれ!」

「長官、シールドは!?」

「撃ちまくれッ!」


 メハルは怒鳴った。

 艦隊に入り込まれ、隊列の維持は無理。すでに先手を取られて大破した艦もある中、統制を保つのは困難だった。

 であるならば、下手にまとめようとするのではなく個々の判断に任せた方がいい――メハルはそう判断した。


 第12艦隊も反撃命令が出たが、第五遊撃部隊の方が常に先手を取った。第五遊撃部隊の艦艇は、見た目はこれといって特徴がないが、その戦術は直線型転移を用いた超至近距離での砲戦を想定して組み上げられている。


 特に重視されたのは砲塔の旋回、俯仰速度の向上。近接戦ではとにかく先制することが重要だ。艦艇の装甲が役に立たない距離での戦いは、先に重要カ所に攻撃を当てたほうが圧倒的に有利になるのだ。


 だがこれは諸刃の剣でもある。攻撃が防御を上回る距離というのは、何も敵だけではない。味方側もまた危険ということだ。

 それをメハルは瞬時に理解した。故に有無を言わさず反撃を命じた。余計なことをせず、反撃せよ。おそらくそれで艦隊は大打撃を受ける。だがそれと引き換えに敵も沈められる。最悪なのは、一方的に被害を受けて敵を倒せないことだ。


 海軍軍人なら、誰もがすぐに砲戦距離におけるメリット、デメリットに思い至る。だが躊躇なく、肉を切らせて骨を断つ策に打って出られる指揮官がどれほどいただろうか?


 メハルはその点、非常に攻撃的な指揮官であり、損害上等な戦い方を好む。だから躊躇いなく最善手を打てた。

 が、彼女の即断をも上回るほど、第五遊撃部隊――佐々山艦隊は超近距離戦術に熟達していた。


 人間の考えが早かろうと、大口径主砲の旋回速度が上がることはない。帝国第12艦隊の砲術担当者たちが、砲の照準をつけるまでの時間に強い焦りの感情に苛まれている間、佐々山艦隊の戦艦、巡洋艦、駆逐艦は素早く砲を旋回させ、狙いをつけて撃ち込んだ。


 砲撃だけではない。『ふぶき』以下駆逐艦は誘導魚雷を発射。まったく出し惜しむことなく、第12艦隊艦艇に打撃を与えた。


「くそっ、このあたしが手も足も出ないとはね……!」


 メハルの旗艦であるオリクトⅢ級戦艦も、『ひえい』『さつま』の砲撃を至近で食らい、大破させられた。


「狂犬だ突撃野郎だなんだ言われ続けたあたしだが……認めてやるよ。お前たちは最高に狂ってやがる」


 短い戦いだった。だが反省点は浮かぶ。

 たとえば第12艦隊は常道の横陣での進撃。しかし敵はその隊列に割り込んで入ったことで、こちらは外側にいた艦ほど、味方艦が邪魔で撃てなかった。それが敵戦艦の3倍もありながら数の有利を潰された。


 戦艦は戦艦を、などと混沌とした状況で巡洋艦や駆逐艦を無視したのも裏目に出た。出し惜しみをしない日本艦隊がさっさと魚雷をばらまいたことで被雷し、大破。艦の傾斜で砲撃不能になった艦が、反対舷に注水して復旧にもたもたしている間に、第五遊撃部隊の戦艦にトドメを刺されて……。


「手際良すぎるだろうがよ――」


 メハルの座乗する旗艦がとうとう横倒しになって転覆した。第12艦隊は、第五遊撃部隊と、義勇軍艦隊の航空隊の攻撃を受けて壊滅するのであった。

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